「最強」から「最悪」 問われる政策 借金重圧、浪費型開発見直さず
急激な景気悪化のなかで、2009年度愛知県予算案が2月17日発表されました。一般会計は、企業の業績悪化を反映して法人税収が大幅に落ち込み、前年度比で実質3・3%減の2兆1801億円となりました。神田県政が「危機の克服と将来の発展に向けて」とうたう予算案をどう見るか、日本共産党愛知県委員会の林信敏自治体部長に聞きました。
「もろさ」極端
新年度の個人県民税はほぼ前年度並みですが、法人事業税・法人県民税は3分の1程度に減ると見込まれています。全国最悪です。
愛知県が「トヨタ一本足打法」言われるほど、極端なトヨタ依存体質になったのは実は最近のことです。
神田県政と県議会オール与党は、万博開催・中部国際空港開港を起爆剤に、トヨタ応援・輸出拡大の経済政策をすすめてきました。
この政策が米国初の経済危機でゆきづまり、愛知の産業と財政のトヨタ依存・外需頼みの「もろさ」が浮き彫りになりました。
「政治災害」
トヨタの急速な生産増大を支えたのは、期間工と派遣労働者です。神田県政は全国から非正規雇用労働者を愛知にかき集めました。
トヨタは空前の利益を上げ、愛知県は「日本一元気」「全国最強」と宣伝されましたが、低賃金で使い捨てのワーキンブプアが広がり、下請けは猛烈なコストダウンを押し付けられ、「世界一のしわ寄せ」に悲鳴をあげてきました。
今回の経済危機は米国発だと「外因」が強調されますが、「内因」があります。たしかに、大企業中心の産業・雇用政策がつくりだした「政治災害」という面があります。
神田県政は「危機の克服」と言いますが、危機を増幅させた自らの政策に反省がない。反省がないから克服の方向が見出せません。
いま愛知に求められるのは、雇用確保と中小企業支援の緊急対策をおこないながら、外需頼みから内需拡大へ、大企業応援から家計応援へ経済政策の軸足を移すという日本共産党の提案の方向での改革です。
緊急課題は
09年度愛知県予算が取り組むべき緊急課題は、失業と倒産の危険から県民の雇用と中小企業を守ることです。しかし、神田県政の予算案には思い切った手立てが見えません。
県は新年度の新規事業を前年度の80から40に減らしました。健康福祉の7つの新規事業のうち県の独自事業は2つだけ。他は国の施策です。
雇用安定対策予算は前年度の5017万円から47億7952万円に大増額ですが、そのうち47億3328万円は国の雇用対策基金です。これを除くと、前年度を下回ります。
解雇で生活困窮者が急増しているのに、県の生活保護費は減らされています。名古屋市などが県に求めている三河地方の緊急宿泊所の設置はありません。
中小企業向けの金融対策予算はほぼ前年度並みにとどまり、経営改善対策費は前年度の半分、地場産業振興予算は前年の7割に削減されています。農林水産費は前年度を割りました。
雇用確保、中小企業・農林漁業の振興は社会保障と並んで内需拡大の柱ですが、神田県政はないがしろにしています。
県にたいし予算と施策の拡充を求める運動が求められています。
借金4兆円超
愛知県は今回の税収減少で、4年ぶりに地方交付税の交付団体になりました。4900億円の収支不足を、地方交付税交付金、積立基金の取り崩し、県債の増発、職員給与の削減などで補っています。
新年度の県債発行額は3830億円。県債残高は過去最高の4兆2239億円。県民1人当たり58万7815円の借金になります。
県財政の重荷になっているのは大型開発事業です。いまも万博・空港関連道路の用地代200億円は未払いです。経営不振のリニモ(東部丘陵線)の借金を肩代わりするため約40億円の県費を投じます。
「将来の発展」といって、利用減少なのに中部国際空港の第2滑走路建設に走り、水需要が増えないのに設楽ダムや徳山ダム導水路の建設に巨額の予算をつけています。
大規模なトヨタテストコース用地造成、大企業ビルの建設費補助など大企業サービスも目白押しです。
経済危機と財政難のいまこそ、浪費と環境破壊の大型開発路線を抜本的に見直し、公共事業は生活密着型重視に転換するときです。
県政を動かす
県の新年度予算では、こどもや障害者などの医療費無料制度は維持されました。国の新規事業を受け、14回までの妊婦健診無料化が実現します。
これも国の施策ですが、救急勤務医等支援事業費補助金約4億円が盛り込まれました。
教育では、小学校1年、2年で実施されている少人数学級(35人編制)が中学1年生に広がります。
こうした前進は福祉・教育の拡充を求める県民の運動の反映です。
再生の力
愛知の製造品出荷額全国1位、1人当たりの県民所得全国2位、卸売・小売業年間商品販売額全国3位、農業産出額全国5位…。
愛知には実力があります。経済政策を変えれば、愛知を再生させ、県財政を安定化させることはできます。