愛知民報

【09.02.15】行き倒れ 07年度 県内で48人 雇用破壊で増えるおそれ

行き倒れ

 ゆきだおれ【行倒】病気や飢えや疲れなどのために路上に倒れ、あるいは死ぬこと。広辞苑にこう書いてあります。

 過去の話ではありません。2007年度、つまり07年4月から08年3月末までに、愛知県内で48人が行き倒れの末に死亡しています。

 本紙が愛知県や名古屋市などに問い合せしてわかりました。48人といえば、ほぼ毎週1人の割合で発見されています。

 行き倒れ件数を集計していない行政もありました。職も住いも社会保険もなく、路傍で命を失う…。そんな悲惨があとを絶ちません。

行旅死亡者数
(2007年4月~08年3月)

 名古屋市  30人
 豊橋市  3人
 岡崎市  3人
 その他県内  12人
 県合計  48人

行旅死亡人

 行き倒れは「行旅死亡人(こうりょしぼうにん)」と呼ばれます。今を去ること110年前、1899年(明治32年)にできた「行旅病人及行旅死亡人取扱法」という、おそろしく古い法律が根拠になっています。

 同法は「住所、居所若ハ氏名知レス且引取者ナキ死亡人ハ行旅死亡人ト看做ス」(法文のママ)とあります。

 死亡者は市町村が火葬・埋葬することになっています。死亡推定日時や発見された場所、所持品、外見などは、官報に掲載することになっています。一般国民が官報を眼にすることはまれですから、掲載されても、引取人が名乗り出ることはほとんどありません。

所持金7円

 昨年11月10日に岡崎市であった行旅死亡人のケースを追跡してみました。

 同日の午後3時頃、市内の日名公園の水飲み場付近に倒れている男性が発見されました。

 推定年齢50歳から70歳の男性。発見当時まだ意識があったようで、救急車で岡崎市民病院に運ばれました。消化管出血の疑いで、3日後に死亡しました。

 所持金はわずか7円。身元を明らかにするものは何もなかったといいます。

 この男性は「行旅死亡人」とされ、岡崎市が火葬しました。火葬費用は生活保護の葬祭費が基準。10万円程度でした。やはり引取人は現われず、市営墓地の無縁慰霊塔に納骨されました。

コンビニ弁当

 昨年秋、名古屋市内の都市高速道路の高架下でも行き倒れがありました。

 遺体は秋風に吹き寄せられたかのように高架下のフェンスの下に横たわっていました。

 その場には、しばらくの間、わずかな花やコンビニ弁当が供えてありました。

増大が心配

 昨年秋以降の金融危機・景気悪化による雇用破壊で、職と住まいを失った離住者が急増しています。行き倒れの増大が心配されています。