愛知民報

【08.11.16】国民健康保険資格証明書 病院遠のく子ども 

保険証を交付せよ

 国民健康保険の資格証明書発行が子どもから医療を受ける権利を奪うという残酷な事態が起きています。

 市町村が国民健康保険料(税)滞納世帯から正規の保険証を取り上げ、これに代わって発行するのが被保険者資格証明書です。

 通常、国民健康保険で病院にかかる場合、患者負担は3割。7割は保険が負担します。しかし、資格証明書になると、患者は病院窓口でいったん全額を払わなければなりません。

 その後、役所に請求すれば保険負担分が払い戻されるといいますが、現実は、返金分は保険料滞納分に充当され手元に返ってこない場合も。

 子どもの医療費無料制度があっても資格証明書の場合、病院窓口で全額支払わなければ適用されません。資格証明書世帯の児童生徒が学校の保健室に駆け込むケースが増えています。親の経済的困難で、子どもの医療権まで奪われる――。社会保障の根幹をゆるがす問題です。

 きびしい批判をうけた厚生労働省がようやく子どものいる資格証明書世帯数を調査しました。その数は全国でおよそ3万。愛知県では10市1町に178世帯、中学生以下の子ども数は279人でした。

国民健康保険資格証明書の発行状況

市町村名 国保加入世帯数 保険料滞納世帯数 資格証明書交付世帯数 うち子どもがいる世帯
名古屋市 360,066
37,281 

1,381 
 100
豊橋市  
51,523

12,907 
  321   8
岡崎市  
49,485

8,988 
  226   7
一宮市  
58,436

18,005 
  91  
瀬戸市  
18,821

3,868 

24 
  2
半田市  
16,303

2,089 
148    3
春日井市  
45,377

28,534 

81 
 
豊川市  
22,152

4,267 
142    6
津島市    
9,986

1,783 
   
碧南市    
9,561

1,043 
   
刈谷市      16,820
2,150 
  1  
豊田市      50,783
6,096 

70 
 
安城市     22,357
3,063 

79 
  5
西尾市     14,467
1,297 
126   10
蒲郡市     12,348
2,901 
   
犬山市    10,873
2,704 
   
常滑市  
7,978
793     
江南市
14,865 

3,877 
  14   1
小牧市
21,930 

7,871 
   
稲沢市
19,588 

3,741 
   
新城市
7,325

1,119 
   
東海市
15,434 

4,319 
 
344
  29
大府市
11,172 

1,441 
   
知多市
12,637 

3,151 
  2  
知立市
8,608 
933    7  
尾張旭市
11,087 

1,197 
  6  
高浜市 5,504  571    3  
岩倉市
8,951 

1,481 
  62  
豊明市
9,894 

1,936 
   
東郷町
6,165

743 
   
日進市
9,627 

935 
   
田原市
9,894 

931 
   
愛西市
9,845 

982 
   
清須市
8,543 

2,921 
   
北名古屋市
13,012 

3,414 
   
弥富市
6,001 

596 
   
長久手町
5,368 

630 
   
豊山町
2,376 

340 
   
春日町
1,212 

378 
   
大口町
2,771 

280 
 9  
扶桑町
4,720 

649 
   
七宝町
3,924 

510 
   
美和町
3,820 

199 
  5   1
甚目寺町
6,135 
1,253     
大治町
4,587 
1,270     
蟹江町
5,724 

891 
   
飛島村
619 

18 
   
阿久比町
3,476 
282    1  
東浦町
6,694 

1,505 
  2  
南知多町
3,616 
184   121  6
美浜町
3,293 
262    2  
武豊町
5,934 
688    2  
一色町
4,277 
451    20  
吉良町
2,959 

1 
  10  
幡豆町
1,836 
151  5   
幸田町
4,496 
393     
三好町
5,896 
382     
設楽町
1,072 

56 
  1  
東栄町 744 
23 
   
豊根村
241 

13 
   
小坂井町 3,064 
542 
  4  
  合計
1,076,262 

191,279 
 3,310  178

(厚生労働省2008年9月15日調査報告より)
「子どもがいる世帯」とは、乳幼児、小・中学生
がいる世帯

 資格証明書発行世帯(カッコ内は中学生以下の子どものいる世帯数)の一番多いのが名古屋市の1381(100)、続いて東海市344(29)、豊橋市321(8)、岡崎市226(7)。

 名古屋市の医療・福祉関係者でつくる「市民犠牲を許すな連絡会」は10月27日、国保の改善を求めて名古屋市と交渉しました。参加者は「子どもが病気でも、区役所で保険証を発行してもらうまで病院に行けない。直ちに改善を」「高い国保料の引き下げと減免制度の拡充を」と訴えました。

 日本共産党名古屋市議団は10日、松原武久市長に対し子どものいる世帯には資格証明書を発行せず、正規の保険証を発行するよう申し入れました。

【資格証明書】
 国は保険料を1年以上滞納している世帯から保険証を取り上げ、代わりに資格証明書を発行することを自治体に義務づけた。資格証明書は医療機関の窓口でいったん医療費の全額(10割)を支払う。医療抑制や治療中断の問題が深刻化している。

資格証明書発行の改善を求める人たち

高すぎる保険料 日本共産党 各地で引き下げ実施

 国保料滞納の最大要因は、負担能力を超えた保険料の高さです。資格証明書の発行中止と国保料引き下げに努力しているのが日本共産党です。

 蒲郡市の同党市議団は国保収入の過少計上などの誤りを追及。「国保税引き下げ」の署名に取り組み、今年度から国保料1人当たり4400円の引き下げを実現しました。

 豊川市議団は議会で国保会計の繰越金2億5千万円を保険料引き下げに使うよう要求。今年度から平均2000円安くなりました。低所得者の負担を軽減する、市独自の8割減免制度が実現しました。

 小坂井町議団は、医療費の計上誤りで積み立てた基金1億5千万円を被保険者に還元するよう求め、1人平均2000円引き下げさせています。

 豊明市では、前山美恵子市議が市に国保税の減免基準拡大を求め、来年度から前年度所得の3分の2以下に減収した場合は減免することになりました。