中部国際空港の関連開発事業として愛知県企業庁が常滑市の同空港対岸部に埋め立てた通称「前島」にイオンの大型商業施設を誘致する計画について、愛知県とイオンが2007年3月に結んだ基本協定書の内容が明らかになりました。採算見通しのない空港関連開発への公金支出は不当だと批判する市民グループが県に文書開示を求めて入手したものです。
県は前島約123ヘクタール、空港島内の造成用地約107ヘクタールの計230ヘクタールに「中部臨空都市」の建設を構想しています。
しかし、一部に航空貨物会社や航空機乗務員のホテルが進出した程度で、広大な空地状態。前島にできた名鉄空港線の「りんくう常滑」駅は開港3年目を迎えた今日も駅員が常駐していない無人駅です。
これまで前島の目玉として、テーマパーク、アウトレット、カジノなど時々の流行に乗った大型商業娯楽施設の誘致が話題になりました。どれもシャボン玉のように消え、結局、県内各地にショッピングセンター(SC)をもつイオンに落ち着きました。
イオンSCの総面積は16万平方メートル。イオンが企業庁から20年契約で借地します。賃料は1平方メートル当り月額140円。企業庁の収支計画上の予定賃料の2分の1から3分の1という安さ。しかも、営業収入のない開店前の期間は半額の70円です。
おまけに、イオンが常滑市に納める固定資産税・都市計画税は5年間は全額、あとの5年間は半額が事実上のタダ。納税分が立地促進奨励金として戻ってくるからです。その額は10年間で計23億円。
県はイオンSC建設にあわせて駅前北広場、シンボル道路など公共施設をつくります。
協定書は、イオンの協定解除権を設けています。大店立地法による出店届や建築基準法による建築確認申請をめぐる監督官庁の意見・指導・勧告や反対運動によって、イオンが「開発計画の遂行が不可能」と判断したときは協定を解除できるとしています。
この条項で、市民の反対運動が抑えられ、行政機関がイオンに対しものが言えなくなることを心配する声が出ています。
前島を埋立て造成する際、企業庁が計画した大型商業施設立地の前提は、常滑市の人口が空港開港時の05年で6万6千人に増えていることでした。しかし、現実は開港後3年の今日でも5万4千人にとどまっています。イオン進出で過当競争がさらに激化し、地元商業の衰退に拍車がかかるという不安も出ています。
県が「中部臨空都市」の成否をかけるイオン進出ですが、問題だらけです。