東三河地方の豊川上流に国土交通省が建設を計画している設楽ダムの建設理由があやしくなっています。
同省など建設推進側が強調する理由は「水不足の解消のため」。小雨化と水の需要増のはさみ打ちで不足する水道用水や農業用水を設楽ダムの貯水で確保するという話です。
東三河地方はカラカラの宇連ダムが紹介され、「渇水に弱い」が“定説”でした。ところが、2002年に完成した豊川総合用水事業でこの地域の貯水量は飛躍的に増え、最近では「水余り」が指摘されるほど様変りしています。
豊川総合用水事業で、新たに大島ダムや寒狭川から宇連川への導水路、大原、万場の両調整池ができました。
東三河の地元紙は「需要ピークも余力十分 苦労は昔話 3年連続『節水なき夏』」(8月8日付「東日新聞」)と書いています。
豊川市の6月定例会で、日本共産党市議は「豊川総合用水事業の完成で、観測史上最小の降水量であった2005年も水道、工業用水、農業用水の被害は出なかった」と指摘し、設楽ダム建設の目的を質問しました。
市側は水が足りている現状を否定できず、「地球温暖化による水不足の心配」をあげました。
日本共産党は「水は足りているのに、2070億円もの血税をつかい、広大な森林をダム湖に沈め、高さ129メートルの巨大なコンクリートダムを建設することこそ地球温暖化を加速させる」と批判しています。
東三河地方の水需要は横ばいです。農業用水は農地面積の減少が続いています。水道用水節水努力や人口減少で、将来の需要増は見込めません。
設楽ダムの建設中止を求める会代表の市野和夫・元愛知大学教授は「いいかげんな水需要予測をもとにダム建設を住民に押し付けるのは許せません。設楽ダム建設は中止すべきです」と訴えます。
住民に是非問え 直接請求書提出
設楽町民でつくる「設楽ダムの是非を問う住民投票を求める会」(伊藤幸義会長)は20日、住民投票条例の制定を求める直接請求書を加藤和年町長に提出しました(写真)。
伊藤会長は「計画の中身をオープンにさせ住民投票で意見を聞き、その結果を尊重すべきだ」と語っています。