75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度は、障害者にもつらい制度です。制度上は、65―74歳の障害者の加入は任意ですが、愛知県の場合、高齢障害者の医療費無料化を後期高齢者医療制度の被保険者に限定しているため、他の健康保険や国民健康保険に加入していると無料化の支援を受けることができません。
福祉予算の増額を嫌う
新聞各紙の報道によると、1都2府30県はどの医療保険制度に加入しても従来通り障害者に医療費を助成するとしています。しかし、愛知など1道9県は障害者医療費助成を後期高齢者医療制度加入に限定しています。
愛知県の担当者は「従来の老人保健制度も、今度の後期高齢者医療制度も本人の医療費負担は1割。この1割負担を公費助成で無料にする考えは変わらない」と言います。
しかし、老人保健制度と後期高齢者制度の仕組みは違います。老人保健制度は、健保や国保に加入したまま、1割負担で医療給付を受ける制度でした。65―74歳の障害者が老人保健制度に加入しても保険料や医療内容は変わりません。
一方、後期高齢者医療制度は健保や国保と切り離した別立ての保険のため、1割負担は同じでも新たな保険料負担や「差別医療」の問題がおきます。「国の医療費削減をねらった高齢者差別」(日本共産党)という問題が障害者にも及びます。
なぜ、愛知の神田県政が障害者の後期高齢者医療制度加入を事実上強制するのか。県の障害者医療費無料制度の予算が増えるからです。県当局は、65―74歳の障害者全員が本人負担3割の健保や国保を選択すると、無料化には県の支出が14億円増えると見ています。
大企業の工場誘致には1工場当たり10億円の補助金を投入するが、弱者支援には出し惜しむ――。
後期高齢者医療制度廃止の声と運動が広がるなか、国の誤った制度に追随する神田県政に批判が高まっています。