地元住民 住民投票求める
国土交通省が東三河の設楽町内の豊川上流に予定している設楽ダム建設計画に反対する同町住民や下流域市民は、設楽町に対して建設の是非を問う住民投票の実施を求め、愛知県議会に対しては同ダムの基本計画案に同意しないよう求める請願署名運動をすすめています。
設楽ダムは総貯水量9800万立方メートル。洪水調節や農業用水、水道用水の確保をうたう多目的ダム。事業者は国交省。脱ダムの動向があるなか、「同省直轄の最後の大型ダム」といわれます。総事業費は2070億円。国1273億円、県797億円(国の補助金を除くと721億円)の負担が見込まれています。2020年度完成予定。
建設予定地の設楽町は過疎化が進んでいるうえ、ダム建設で百数十戸の移転が予定されています。独自の簡易水道をもつ同町はダムによる利水の恩恵はありません。
ダム建設予定地は天然記念物ネコギギなど希少生物の宝庫。生態系の破壊は避けられません。
同町の加藤和年町長は1月21日、国交省中部地方整備局と愛知県に対し着工受け入れの7条件を提示しました。
これにたいし、同町に住む元学校長の伊奈紘さんらは1月28日、「7条件では町の再生の展望が開けない」と加藤町長に抗議し、建設の是非を問う住民投票の実施を求めました。
下流域住民 反対請願すすめる
国交省は今月1日、愛知県の神田知事に設楽ダムの基本計画案について意見を求めました。同ダム建設を推進する知事は今月19日開会予定の県議会2月定例会に知事意見の承認を求める議案を出す予定です。
豊橋市など下流地域の市民でつくっている「設楽ダムの建設中止を求める会」(市野和夫代表)は、県議会にむけ、基本計画案を認めないよう求める請願署名運動をすすめています。
同会は、2001年度に完成した大島ダムを含む豊川総合用水事業で給水能力に余力ができ、渇水にも対応できるとして、設楽ダムは無用と訴えています。
同会が1月27日、新城市内で開いた総会では、元建設省長良川河口堰工事事務所長の宮本博司氏が講演し、設楽ダム建設に疑問を呈しました。
日本海洋学会は昨年9月、「設楽ダムによる三河湾への影響が強く懸念される」との見解を発表。愛知県漁業協同組合は11月29日、国交省設楽ダム工事事務所に対し三河湾への影響を公表するよう求めています。
日本共産党は国や県など関係自治体に建設中止を申し入れ、昨年11月には豊橋市内で設楽ダムシンポジウムを開くなど反対運動に取り組んでいます。
設楽町の田中邦利日本共産党町議は「設楽ダム建設に反対する運動が広がっていることを実感します。ダム受け入れ前提では町の将来はないと思います。無駄なダム事業の実態と当局の動きを町民に知らせ、議会内外でがんばっていきたい」と語っています。