【万博】2002.08.13-08.19の動き
●県監査委員は13日、市民グループ「愛知万博中止の会」が、県に愛知青少年公園の管理棟などの取り壊し費用の支出差し止めを求めていた住民監査請求を棄却した。
決定によると、管理棟などの解体は愛知万博の会場運営に必要で、仮にそのまま使うとしても耐震、バリアフリー対策のための改修工事で多額の費用がかかると認定。さらに同施設の利用者は減少傾向で、新規の建物をつくることで新たな需要に対応した公園計画が検討できるとして取り壊しに違法性はない、とした。
●2004年5月にパリ郊外で開催予定だった博覧会国際事務局(BIE)の認定博である映像博覧会が、参加国の伸び悩みなどから中止に追い込まれていたことが分かった。
経済産業省博覧会推進室などによると、パリ映像博は想定入場者数800万人と愛知万博のおよそ半分の規模。「イマージュ」(映像)をテーマにして、最新の映像技術を披露する計画だった。中止は、フランスのジャンピエール・ラファラン首相が表明。理由には、開催までの日数が迫りながらも参加国が数カ国にとどまって準備が進まないことや財政負担の懸念を挙げた。日本はまだ参加を表明していなかったが、同推進室は「会場では愛・地球博のPRも考えていたので中止は残念」としている。
●県は愛知万博に出展する県パビリオンの内容などを盛り込んだ「展示基本計画」と「催事基本計画」をまとめ、15日に公表した。先月23日に県出展参加懇談会で案として披露した内容と同じ。愛知青少年公園会場のパビリオンはからくり人形を使った「未来エコ工場」、海上の森会場では「生命の環(わ)」などとした。総事業費を建築費約20億円と展示にかかる費用約20億円の計約40億円と明記した。県は本年度中に実施計画を策定し、来年度から展示内容の製作に移る予定。
●博覧会協会が、愛知万博の海上会場の1日の入場可能者を最大3万人と想定していることが15日、分かった。海上会場は15ヘクタールと手狭なため、3万人の入場と森の自然保護の両立が今後の重要な課題になる。
名古屋市内で開かれた海上地区会場計画モニタリング委員会で協会側が報告した。それによると、会場の瞬間最大入場者数を9700人と見込んでいることを明らかにした。この日、協会側は、海上の森会場の計画の進み具合を説明し、傾斜地の造成方法や、物販やレストランなど営業施設の総面積を1000平方メートルから800平方メートルに縮小したことなどを示した。さらに、海上の森会場に一度に入る最大入場者数を敷地面積から割り出し、市民交流プラザ、県と国の各パビリオンをそれぞれ1200人とするなど、全体で9700人と算出した。海上会場に直接入場できるのが1万5000人、青少年公園会場からゴンドラやシャトルで再入場できるのが1万5000人と説明している。協会は地元説明会などでも3万人という数字を報告している。この日の会議でも「入場制限や管理を徹底させ、混乱を避けたい」としている。万博アセスを検討している市民団体世話人の宇佐見大司・愛知学院大教授は「海上地区の再入場者数は、ゴンドラやシャトルの本数の増減で管理できるとしても、直接入場者数まで十分管理できるのか疑問だ」と話している。
委員会終了後、同協会は、着工が11月ごろになる見通しを明らかにした。
●愛知万博で同協会は、会場の一つとなる愛知県瀬戸市の「海上の森」で、バイオトイレの設置を検討している。バクテリアの働きでし尿をたい肥化する。同型のトイレを富士山頂でも今夏から使い始めた。
●「あいち山車・からくり文化保存振興協議会」の設立総会が16日、犬山市内で開かれ、愛知万博で「山車・からくりパビリオン」を出展するよう、県に要望していくことを決めた。
同振興協議会は、祭りを彩る山車、からくり人形を持つ県内19市町の首長らで構成。各市町の祭り保存会が6月に「愛知山車祭り保存協議会」を設立しており、今回の自治体による協議会設立は「官民がタッグを組んで万博参加の機運を盛り上げていこう」との狙いから。この日は犬山、半田、津島、名古屋、豊田各市など歴史ある祭りを持つ市町の幹部がこぞって集まった。協議会の会長に就任した石田芳弘・犬山市長は「からくりは国内でも愛知県に最も集中している。世界に発信すべき文化」とあいさつ。県内には約300の山車があるといわれ、「万博会場で愛知の魅力をPRしよう」(加藤梅雄・長久手町長)「共同の祭りパンフレットを作製しては」(石黒靖明・岩倉市長)と積極的な発言が相次いだ。会場では、からくり人形師の9代目玉屋庄兵衛さんがゲストで参加。茶運び人形や弓引き人形を披露し、からくり文化の奥深さを説明した。
●愛知万博の米国への参加招請をめぐり、博覧会協会の坂本春生事務総長は16日、非営利組織(NPO)の形で、企業や各州から出展してもらうよう要請する方針を明らかにした。
米国は、大阪万博では公式出展しているが、現在は、海外催事に国費を投入しないことを法律で決めているため、国として万博には参加できない。しかし、民間や州政府での参加は妨げていない。フロリダ、カリフォルニア、ウエストバージニア州などは万博参加に前向きな姿勢を示している。こうしたことから、協会側は「民間企業の資金でNPOを組織して出展してもらえれば、"準公式参加国"として会場に米国旗を立てることもできる」としている。この日、愛知県議会の万博特別委員会で答弁した坂本事務総長は「米国の参加は万博成功のカギ。民間資金を基にしたNPOでの参加をぜひ実現させたい」と話した。 また、坂本事務総長は、愛知青少年公園会場と海上会場を結ぶゴンドラの料金を数百円、シャトルバスの運賃と場外駐車場7か所の料金は、合わせて1日2000−3000円で検討していることも明らかにした。
●愛知万博の会場予定地がある海上の森で、絶滅の恐れがあるタカの一種ハチクマが新たに営巣していることが16日までにわかった。博覧会協会は、別のハチクマの巣を観察していた今月初め、営巣を確認していたが、会場予定地外という理由で公表はしていなかった。
営巣場所は、会場予定地から数百メートル離れているが、正確な場所については「一部のマニアが近づく恐れがある」として協会は明らかにしていない。成鳥がえさを運んでいることから、幼鳥がいるとみられる。協会は今後も観察を続けて、幼鳥の数などある程度のデータが集まったところで公表するとしている。森での会場建設工事は予定通り、今秋に始める。ハチクマは、環境省が「準絶滅危惧種」、愛知県が「絶滅危惧II
類」に指定している。