【万博】2002.05.28-06.10の動き
●日本をはじめ世界各国の子供たちが環境問題を話し合う「国連環境計画(UNEP)国際こども環境会議」の第6回会議が、愛知万博の開催中、愛知県で開かれることになった。万博開催を記念するもので、アジアでの会議開催は初めて。カナダのビクトリア市で開かれた第4回会議で、愛知県での開催が決まり、5月26日、愛知県庁と博覧会協会に連絡があった。
2005年の夏ごろ、3−5日間の日程で開かれ、日本からは500人、海外から250人の小学5、6年生が参加して、地球環境について自分たちが勉強していることや環境保護のアイデアを発表したり、交流を深めたりする。経済産業省、愛知県、博覧会協会は、「次世代を担う子供たちが環境問題を話し合う」という会議の狙いが、環境をテーマにした愛知万博の狙いとも重なるため、数年前から、万博に合わせた開催をUNEPに要望していた。
開催決定を受けて、神田真秋知事は「自然の大切さを世界に訴える会議が、万博期間中に愛知県で開かれることは大変意義深い」と談話を発表した。博覧会協会の坂本春生事務総長も「子供たちが世界の文化や、万博のテーマである『自然の叡智(えいち)』を学び合う絶好の機会になる」とコメントしている。
●愛知万博の会場計画について、博覧会協会は5月27日、主会場の愛知青少年公園に設ける外国・国際機関向けの6つの出展区域(グローバル・コモン)を、アジアや南北アメリカなど地域ごとにまとめる方針を明らかにした。
協会によると、北東側の2つがアジアと南北アメリカ、南の1つがヨーロッパ、西側の3つがそれぞれヨーロッパ、国連機関、オセアニアになる。これら6つの区域を高架式回廊で結び、入場者は世界の各地域の文化を順に見て回ることができる。また、当初は青少年公園会場の南東にある「森林体感ゾーン」の中に設定する予定だった「地球市民村」を、会場北西の「遊びと文化のゾーン(プレイゾーン)」に移すことも検討。ループ内の「地球大交流広場(愛・地球博広場)」に、500インチ(12・5メートル)の液晶スクリーンを置き、会場内の催し物の案内情報を流す。7月ごろには、パビリオンやコモンの外観、構造などの設計を始める。
●愛知万博で博覧会協会が作成した環境影響評価(アセスメント)に対し、大木環境相は5月28日、青少年公園会場と海上会場を結ぶゴンドラ建設の環境への影響などをアセスメントの最終的な評価書(修正評価書)へ盛り込むよう求める意見書を平沼経済産業相に提出した。
意見書では、「計画の具体化に応じた予測・評価が必要」として、支柱や駅の位置などが未定のゴンドラについて、早く具体的な計画を詰め、環境への影響を予測、評価するよう求めた。会期中の催事や会場周辺に造る駐車場についても具体的な中身をまとめて、環境への影響を予測するよう求めた。会場周辺に生息する絶滅危惧(きぐ)種のオオタカやハチクマの生息状況の調査も続け、影響があれば公表することも要求している。提出を受けた経産相は六月中旬にも意見をまとめ、協会に示す。これを基に協会は修正評価書を完成させ、その公表後、7月には青少年公園会場での施設解体など会場建設を始める。ゴンドラの影響などは「計画が未確定」として評価書には盛り込まれない予定だった。協会や環境省の担当者は「盛り込む作業をしても、会場建設の日程は遅れない」とみている。一方、学者でつくる経産省のアセスについての検討会も同日、ゴンドラ建設の影響に配慮を求める報告書案にほぼ合意した。来月にも正式な報告書を平沼経産相に提出する。
●愛知万博の開催前後を通じ、海上の森の保全を考える「里山学びと交流の森検討会」が5月29日、名古屋市内で開かれた。この中で、愛知県は万博を契機に、海上の森(約540ヘクタール)のほぼ全域を「生態系保護」「野鳥・古窯の森」「施設」「ふれあいの里」「循環の森」「恵みの森」の6ゾーンに分割し、森の保全や活用を行う計画を初めて明らかにした。 計画では、万博開催前の来年度から2004年度の間に、県と市民が一緒に森林の間伐などを実施し、森を6ゾーンに分け、万博開催に備える。
開催中は例えば「野鳥・古窯の森」では、野鳥観察や古い窯の跡地を保存する施設を設け、森の自然や人と森のかかわりを学ぶことに活用する。また、「ふれあいの里」では、農作業を体験したり休耕田の除草をしたりして、自然や農業の大切さを知ってもらう。さらに万博後は、県民参加の「海上の森運営協議会」(仮称)をつくり、森の保全と活用を続ける。この日の検討会では、参加者はおおむね了承し、「今後も随時、計画を明らかにして欲しい」と要望した。
●県国際博推進局は5月30日、ロシアとスリランカが愛知万博に参加表明したことを明らかにした。外交ルートを通じて愛知万博への参加を正式表明したのは、これで40か国となった。
●トヨタ自動車は5月30日、燃料電池を動力源とする大型バスを愛知万博に出展し、商業化の実証試験を行う計画を明らかにした。同博覧会協会は主会場である愛知青少年公園会場内の観客輸送手段として同バスを活用する意向。
トヨタ自動車が愛知万博で走行試験する燃料電池バスは、技術面などから乗用車よりも「本格的な量産化」の時期は早いと見込まれている。隊列を組んだバスが無人で走行するIMTS(次世代交通システム)とともに、トヨタは万博を「事業化の起爆剤」と位置付けている。
●愛知万博の開催に合わせて東三河で開く「穂の国森林祭」の実行委員会6月2日に発足する。森林の保護や育成などをするNPO(民間非営利団体)法人「穂の国森づくりの会」を中心に、東三河の青年会議所や森林組合、企業など約60団体が委員に加わる予定。第1回委員会は鳳来町の愛知県民の森で行う。
●愛知万博で建設されるゴンドラ計画の環境への影響を修正評価書に盛り込むよう求めた環境相意見について、愛知県の神田真秋知事は6月3日の定例会見で、「こうしたことがクリアされて初めて、環境博にふさわしい会場づくりができる」と述べ、環境相意見を尊重する考えを示した。青少年公園会場と海上会場間を結ぶゴンドラについては、博覧会協会は当初、近くまとめる環境アセスの修正評価書では扱わない予定だった。
一方、博覧会協会が検討しているゴンドラのルート近くの愛知県瀬戸市・上之山町三丁目町内会(岡田実会長)の有志が同日、県庁を訪れ、「住民合意が得られないままにゴンドラ計画を一方的に進めないこと」などを求める要求書を提出した。
●愛知万博に出展される愛知県館の総合プロデューサーの山根一真氏は6月3日、県館のイベント計画づくりのため、近く県内全市町村の役場などをまわって関係者の意見や要望を集める方針を明らかにした。
山根氏はこの日、万博を推進するために県内の首長や議長らで組織する「愛知推進協議会」の総会に出席し、県館のあり方などについて講演した。この中で、計画づくりにあたっては「愛知県のパビリオンだから、県庁に尋ねるというのでは意味がない」と明言。「88市町村すべてを訪ね、若い人や市町村長、商工会関係者と討論する中で、県館のイベント計画に生かしていきたい」と抱負を述べた。山根氏は昨年10月に愛知県館の総合プロデューサーに就任。海上の森と愛知青少年公園の2会場に出展する計画を進めている。
●愛知万博会場の愛知青少年公園にある県有施設を取り壊す計画をめぐり、住民グループ「愛知万博中止の会」(影山健代表)のメンバーら70人が6月7日、神田真秋県知事に対して、取り壊し費用6億6000万円余りの支出差し止めを求める住民監査請求を同県監査委員に提出した。
●愛知万博の環境影響評価(アセスメント)の手法や結果を学者らが審議する検討会が6月7日、経済産業省で開かれ、青少年公園会場と海上会場を結ぶゴンドラ計画について、住民や専門家の意見を聞き、環境に悪影響を与えない計画にすることを求める報告書をまとめた。平沼経産相に提出する。報告書には、ゴンドラのほか、万博期間中の入場者の歓声やスピーカー、花火の音などが会場周辺の住民の迷惑にならない方法の検討、絶滅危ぐ種のオオタカ、ハチクマのデータを集め、保護策に反映させることなども盛り込まれた。
●「EXPO2005地球市民の会」と県、博覧会協会でつくる愛知万博のカウントダウンイベント実行委員会は、愛知万博への思いを表現した芸術作品を募集している。優秀作品は、6月29日に開催する開幕千日前イベントで展示される。募集するのは、万博メーンテーマ「自然の叡智(えいち)」や、サブテーマの「宇宙、生命と情報」「人生の"わざ"と智恵」「循環型社会」に沿った作品。用紙はB3で、彩色はクレヨンや水彩、コンピューター・グラフィックなど自由となっている。同実行委の千日前イベントは、名古屋・栄の松坂屋南館オルガン広場で開かれるが、優秀作品の展示は26日から29日までの4日間。
●名古屋商工会議所のアメリカ経済交流使節団(団長・磯村巌会頭=トヨタ自動車副会長)が7日までのワシントン訪問で、政府高官や経済界首脳から、愛知万博への米出展に向けて「好意的な姿勢」(会頭同行筋)を確認できた。
米国内法は「政府予算をパビリオンおよび出展にあてることはできない」と規定しており、「米国館」のような形で州政府や民間企業が参加するかどうかが焦点。米側からは「参加期間についての質問がほとんどの会談で出た」(会頭同行筋)といい、米側が部分参加の可否に高い関心を示したことが収穫となった。
これを受け博覧会協会では、7月に計画している豊田章一郎会長(トヨタ名誉会長)の訪米で、米国出展に向けた運動を本格化する。