【万博】2002.2.19-2.25の動き
●愛知県瀬戸市の「海上の森」の愛知万博会場予定地の近くで、準絶滅危ぐ種のハチクマの営巣が確認されていたことが分かった。ハチクマは、タカの一種で、同森での飛来は確認されていたが、営巣が見つかったのは初めて。
博覧会協会によると、営巣は昨年7月、環境アセス調査で確認された。約1か月後には2羽の幼鳥が巣立ったといい、協会側は昨年10月の「海上地区会場計画モニタリング委員会」で報告した。協会では、造成工事による影響も否定できないとして、今月4日、万博の環境影響評価について意見を述べる経済産業省の意見検討会にも報告した。
ハチクマは、体調60センチほどで、オオタカとほぼ同じ大きさ。日本と東南アジアを移動する渡り鳥で、巣が発見されるのは珍しいという。
一方、「グループ海上の森探鳥会」など同県内の自然保護4団体は19日までに、造成工事に伴うハチクマへの影響が、モニタリング委員会でどのように検討されたかをただす緊急質問状を協会と県に出した。
●県国際博推進局は19日、ガーナ、インド、ラオスが愛知万博に参加表明したことを明らかにした。外交ルートを通じての正式表明は、これで計24か国になった。
●トヨタ自動車は19日、愛知万博に、トヨタグループとして単独でパビリオンを出展する方針を明らかにした。愛知万博に単独館の出展を決めた企業グループはトヨタが初めて。
トヨタは、具体的な出展内容を検討するためのチームを社内に設置したほか、新たにグループ各社の役員を集めた連絡協議会「出展企画委員会」を発足させた。万博の主要なテーマが「環境」ということもあり、今秋をめどに環境問題や情報通信などの分野を中心に、出展の詳細を詰める。トヨタは当初、業界団体の日本自動車工業会との共同出展を軸に検討してきたが、地元で開催されることもあり、トヨタグループ独自の着想に基づいて単独で出展することにした。ただ、トヨタグループの単独館とは別に自工会が出展を決めた場合には別途、協力していく。
万博への出展申し込み期間中の3月25日から4月24日までの間に正式に出展を表明する。パビリオンの出展形態は1企業(グループ)が単独で出展する単独館、複数の企業が出展する共同館、万博協会がパビリオンを整備して企業・団体用に多数のブースを設ける集合館の3種類ある。トヨタは、グループとして単独館で出展し、会場内の交通輸送などでも技術協力していく方針。
●名古屋市は20日の市議会都市活性化特別委員会で、愛知万博のサテライト会場となる名古屋駅南の笹島地区について、民間活力を活用し、万博の盛り上げにつながるような事業を展開していく方針を明らかにした。万博のインフォメーション機能に加え、公有地を中心に土地を賃貸、アミューズメント施設などの誘致を進める考え。
区画整理事業が進行中の同地区については、昨年9月、博覧会協会が「笹島地区検討委員会」を設け活用策の検討をスタートし、年末に公表された博覧会の基本計画でサテライト事業として位置付けられた。しかし、博覧会の資金計画の中に、同地区整備の事業費を盛り込むことは難しく、名古屋市は委員会の中で、同地区の事業について「できるだけ、市費の投入を抑えるためにも、民間の英知と資金を活用していきたい」との考えを示した。
同市は、今後、同地区内で市土地開発公社が先行取得している約2・5ヘクタールの公有地を中心に、周辺の土地を保有している企業などに働きかけ、賃貸用の土地を確保する。年内には、具体的な賃貸方式などを詰め、広く民間企業に進出を公募する予定。施設については、定期借地方式を検討、万博開催期間だけでなく、中期的なものとして、同地区の活性化につなげたいとしている。
●県国際博推進局は20日、アフリカのタンザニアが愛知万博に参加を表明したことを明らかにした。外交ルートを通じての正式な参加表明は、これで25か国になった。
●愛知万博をPRするため、博覧会協会は21日、「愛知万博・市民シンポジウム」を名古屋市内で開いた。作家の荒俣宏さんらによるパネルディスカッションなどがあり、約270人が参加した。
シンポジウムでは、博覧会協会の坂本春生事務総長のあいさつや、昨年12月に公表された基本計画を福井昌平チーフプロデューサーが説明し、パネルディスカッションに移った。パネリストは荒俣さんのほか、作家で慶応大文学部助教授の荻野アンナさん、愛知万博政府代表の渡辺泰造さん、福井チーフプロデューサーの四人で、坂本事務総長が司会を務めた。
●今井敬・経団連会長は22日、名古屋市内で行った中部財界代表との懇談会の後、記者会見し、「愛知万博は国家プロジェクトであり、経団連も最大限協力する。現在、要請されている寄付金(中央分115億円)の50%強が集まっており、開催までの3年間で、目標額は達成できると思っている」と話した。懇談会には中部経済連合会の太田宏次会長や東海商工会議所連合会の磯村巌会長ら約150人が出席。
●尾張旭市は22日、愛知万博を支援するために「庁内支援本部」を設置し、初会合を開いた。本部長は谷口幸治市長が務め、三役と全部長がメンバーの全庁組織。初会合には、博覧会協会から安井俊夫・事務総長代理や県の石川延幸・国際博推進局計画課長らが出席し、今秋の会場建設着工までの主な日程を説明した。
●愛知万博の環境影響評価の手法について、専門家が助言する意見検討会の分科会が22日、経済産業省で開かれた。海上の森の会場予定地周辺で昨夏、初めて営巣が確認された準絶滅危惧種の猛きん類のハチクマについては、データがほとんどなく、会場建設による影響の予測が困難として、どのように評価するかという結論は持ち越した。
●瀬戸市の諮問で、愛知万博と瀬戸の焼き物文化のかかわり方を考えてきた「やきもの活用検討会」は、製品や技術を生かした会場整備を実現して、街全体の活性化につなげるよう提言した。また、その一つとして、国内、海外の産地から陶磁器を集め、海上会場に直径50メートルの巨大な皿状のオブジェを設けるよう、県と国際博覧会協会に働きかけることを要望している。
検討会は、地元の陶芸家や企業の代表人ら十人がメンバーとなり、同協会が進める会場づくりの基本設計に生かせるよう、話し合ってきた。提言では、「せと・ルネッサンスへの挑戦」をテーマに、焼き物の活用プランとして、(1)陶磁器国際シンポジウムなど交流企画の開催(2)瀬戸での開催を象徴する構造物の実現(3)会場を多数の陶板や風鈴などで埋めるイベント(4)環境保全に役立つ焼き物技術の公開を掲げている。
メンバーが、とくに力点を置いたのが、大阪万博の「太陽の塔」に匹敵する、愛知万博を象徴するような恒久的なオブジェ。「宇宙からのいずみの皿」(仮称)と名付け、国内、海外の有名産地、計14か所から独特の色彩の陶磁器を集めて製作し、海上会場の傾斜地をそのまま生かしてはうようにすると同時に、中心のへこみ部分には池を作り、陶磁器をぬらして、美しさを強調する仕掛けにするとしている。提言を受けた瀬戸市では、「巨大な皿のオブジェの実現を含め、県や協会に提言内容を活用するよう強く求めていく」と話している。