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【02.06.16】万博環境アセス

経産省意見撤回を要求

“不十分な内容追認”と党県委・県議団が見解

2002年6月17日 「しんぶん赤旗」

 日本共産党愛知県委員会(岩中正巳委員長)と同県議団(きしの知子団長)は16日、愛知万博の環境影響評価書案にたいする経済産業省大臣意見が、評価書案の修正で最終的な評価書を作成することを認めたのは問題だとして、意見の撤回、環境影響評価(アセスメント)手続きのやり直し、それができない場合には万博の中止を、との見解を発表しました。

 評価書案が新たな環境の改変になるゴンドラ建設について修正評価書で対応するとしたため、きちんとした正規のアセスをするべきだとして自然保護団体などから強い批判が上がっていましたが、経産大臣意見はこれを認めず、修正評価書の作成を求め、博覧会協会の方針を追認するものになっています。

 東部丘陵線などの会場アクセスも含めた一体的なアセスを実施するべきという意見も強く出されていますが、同大臣意見はなんら言及しませんでした。

 見解では、経産大臣意見がオオタカ、ハチクマの保護について科学的知見が乏しいと認めながら、追跡調査で対応するとしていることにも批判。環境影響評価と保全策は、十分な調査、研究で確立するべきもので、科学的知見が不十分で保全策が確立していないなら、まず工事着手を中止をするべきとしています。


2005年日本国際博覧会に係る環境影響評価書(案)に対する経済産業大臣意見について

2002年6月16日

日本共産党愛知県委員会   委員長 岩中 正巳

日本共産党愛知県議会議員団 団長  きしの知子

 経済産業省は6月10日、「2005年日本国際博覧会に係る環境影響評価書(案)」に対する経済産業大臣意見を博覧会協会に通知しました。博覧会協会は、経済産業大臣意見を踏まえて、修正評価書(案)を補正し、修正評価書を完成させ、公告・縦覧することにより、愛知万博に係る環境影響評価の手続きは終了し、本格的な準備の工事に着手することになります。

  日本共産党は、修正評価書(案)について、3月13日に見解を明らかにして、「修正評価書案は、県民や市民団体、自然保護団体、専門家の意見を十分くみつくし、反映したものではなく、手続きの上からも内容の上からも、『環境影響評価法の趣旨を先取りする新しい環境影響評価のモデルを示す』(旧通産省要領)ものとはなっていません」と指摘し、環境影響評価の手続きのやり直しを求めました。5月28日に環境大臣意見が出された際にも、ゴンドラ計画の予測・評価を修正評価書に記述するというならば、実質的な環境影響評価の手続きのやり直しが必要であることを指摘しました。

  しかし、経済産業大臣意見は「ゴンドラの計画については、今後とも住民等の意見も聴きながら計画の熟度を上げていく必要があるが、現段階においてもその計画の熟度に応じて、予測・評価を行い、最終的な評価書に記載すること」「環境大臣意見において述べられた事項についても対策を適切に実施する必要がある」と述べながら、「今後、博覧会協会においては、経済産業大臣意見、環境大臣意見、愛知県知事意見、関係市町長意見、住民意見を踏まえて、評価書(案)を修正し、最終的な環境影響評価書を作成」と述べており、あくまで評価書の修正で対応し、環境影響評価の手続きのやり直しを拒否しています。

  また、万博の環境影響評価の旧通産省要領では「選定項目に係る予測の不確実性が大きい場合、効果に係る知見が不十分な環境保全措置を講ずる場合など」に追跡調査を行うとしているのに、経済産業大臣意見は、「催事計画の定まっていない現段階において、評価を行うことができないため、計画の熟度が高まった段階で必要な追跡調査を行うこと」など、十分な調査や計画が具体化していないことを理由に、予測・評価を行わず、修正評価書案を追認しています。旧通産省要領が、環境影響評価の長期的地域整備事業との連携を図ることを指摘していますが、経済産業大臣意見は、東部丘陵線(HSST)、会場間を結ぶ連絡道、南北道路など会場アクセスについて、一体的な環境影響評価が行われずに工事がすすめられ、大切な自然が破壊されていることにも、一言も触れていません。これらのことは、万博計画による環境影響の低減・回避をはかるという環境影響評価の趣旨を否定するものです。

  さらに、経済産業大臣意見は「環境影響評価を行ううえで、その根拠となる科学的なデータや手法に関する知見が必ずしも十分でないものがある」ことを認めた上で、「オオタカ、ハチクマについては、現状では生態が明らかでなく、科学的な知見の蓄積が乏しいことに鑑み、追跡調査において営巣環境等の生態に関する基礎データの蓄積を図ることにより、適切な保全策に反映させていく」と述べています。しかし、環境影響評価と保全策は、十分な調査と研究によって確立すべきであって、科学的な知見が不十分で、オオタカやハチクマの保全策が確立していないならば、まず工事の着手は中止すべきです。

  そのうえ、経済産業大臣意見は、住民等への説明、理解促進の努力について述べていますが、環境影響評価の手続きの核心は、情報公開の徹底と住民の参加にあります。手続きのやり直しを拒否して、環境影響評価への住民参加を拒んでおきながら、住民に理解だけを求めるのは、納得できません。

  このように、経済産業大臣意見は、今日の環境影響評価の到達点にたっても、大きな問題があり、この意見のもとで修正され作成される環境影響評価書が、「新しい環境影響評価のモデル」といえないことは明らかです。

 2000年10月に開かれたヨルダン・アンマン第2回世界自然保護会議の決議が、「1997年のBIE総会において、日本政府が『自然の叡智』をテーマとする環境万博とすることを表明して、2005年国際博覧会の開催国と認められた」と指摘しているように、「環境の時代」といわれている21世紀の初頭に開かれる環境万博が、不十分な環境影響評価のもとで強行されることは許されません。

  日本共産党は、愛知万博を所管している経済産業大臣に対して、6月10日に公表した経済産業大臣意見を撤回し、愛知万博の環境影響評価の手続きのやり直しを行うこと、また、やり直しが時間的にできないというなら、万博を中止して開催を返上をすることを強く求めるものです。

以上

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