【02.05.30】環境相意見に党県委・県議団が見解
アセスやり直さないなら
愛知万博は中止返上を
2002年6月1日 「しんぶん赤旗」
5月28日に出された愛知万博の環境影響評価書(案)についての大木浩環境大臣の意見に対し、日本共産党愛知県委員会(岩中正巳委員長)・同党県議団(きしの知子団長)は30日、見解を発表しました。
環境大臣意見は、評価書を完成させる経済産業大臣意見の前提になるもの。愛知県や博覧会協会は大規模な環境改変がされるゴンドラ建設を追跡調査ですまそうとしています。
見解は、環境大臣意見が、ゴンドラ、駐車場等の施設について「計画の策定後、環境影響の予測・評価を早急に実施し、環境保全措置を検討すること」を求めたことについて、「県民の願いにこたえたものであり、評価できます」としています。ゴンドラについても「(万博)事業による著しい環境影響があきらかになった場合には、専門家等の意見を聴取し、適切な措置を講じる」としていることを評価、ゴンドラ計画は「旧通産省要領」にのっとれば実質上、環境影響評価のやり直しを行う必要があり、環境大臣が、環境影響評価のやり直しを明言すべきと見解を明らかにしています。
一方、環境大臣意見で(1)科学的根拠もなく、オオタカ、ハチクマへの影響が最小限になるよう保全が検討されていると断定した(2)グローバルループの環境影響評価に触れていない(3)東部丘陵線など関連事業と一体の環境影響評価をしていない(4)交通渋滞などの軽減に住民参加の観点を抜かしている―などの問題点を批判しています。
見解は、環境大臣意見が万博推進の大前提に立ち、「環境影響評価の手続きを厳正に実施しようとしない」と批判。環境大臣が、愛知万博の環境影響評価の手続きのやり直しと、やり直しが時間的にできないなら、万博を中止、開催返上を明言し、経済産業大臣に意見をあげることを求めています。
2005年日本国際博覧会に係る環境影響評価書(案)に対する環境大臣意見について
2002年5月30日
日本共産党愛知県委員会 委員長 岩中 正巳
日本共産党愛知県議会議員団 団長 きしの知子
環境省は、5月28日に「2005年日本国際博覧会に係る環境影響評価書(案)」に対する環境大臣意見を経済産業大臣に通知しました。この環境大臣意見は、愛知万博の環境影響評価書を完成させる上で提出される経済産業大臣意見の前提となるものです。
環境大臣意見は、愛知万博計画について「一部の施設等については、具体的な計画が策定されていない」ことを指摘し、ゴンドラ、駐車場等の施設について「具体的な計画の検討を進め、計画の策定後、環境影響の予測・評価を早急に実施し、環境保全措置を検討すること」を求めています。この指摘は、県民の願いにこたえたものであり、評価できます。また、催事等の計画及び会期終了後の計画の具体化と予測・評価・対策の実施、廃棄物等の会場整備中、開催時、会期終了後の予測と発生抑制、リユース・リサイクルの具体的推進、適宜な環境モニタリングによる予測・評価の再確認と環境保全措置の再検討、住民の理解を得ることへの努力と住民等への意見への配意と適切な対応を指摘していることも県民の意向に沿う大切な指摘です。
とくに、ゴンドラについて、追跡調査で対応しようという愛知県、博覧会協会の姿勢に対し、「ゴンドラの整備についてはII 案にはもりこまれなかったため、早急に予測・評価を行い、環境保全措置(環境モニタリングを含む。)の検討を行うとともに、ゴンドラの予測・評価の結果を踏まえ、II 案と比較し、環境負荷が低減されているかについて確認すること。これらの検討及び確認結果を修正評価書(案)の補正版(以下、「修正評価書(補正版)」)において明らかにすること。」を求めたこと、「万博の事業のあらゆる段階において、常に最新の知見等の把握も行い、採用しうる最新の環境保全技術を取り入れる」ことを求め、環境モニタリングの実施によって「(万博)事業による著しい環境影響があきらかになった場合には、専門家等の意見を聴取し、適切な措置を講じる」と指摘していることは重要です。ゴンドラの計画については、II 案でなく本来、BIE登録案と比較すべきですが、「旧通産省要領」に真摯に則れば、実施計画書、準備書、評価書という一連の環境影響評価の手続きを踏まえなければなりません。実質上、環境影響評価のやり直しを行う必要があります。環境大臣は、「適正な措置」の意味を明示するうえでも、県民の意思にもとづいて、環境影響評価のやり直しを明言すべきです。
しかし同時に、環境大臣意見は、情報公開の徹底と住民の参加という21世紀の指針となる環境影響評価の推進と自然環境保全に責任をもつ大臣の意見として見過ごすことのできない重要な問題点をもっています。
第一に、オオタカ、ハチクマについて、環境影響評価書が「営巣木及びその近傍の直接改変は回避されるとともに、採餌等その生息への影響が最小限になるよう環境保全措置の検討がされている」と断定していることは重大です。
愛知青少年公園周辺に生息する、オオタカについては、現在もなお、保護策について確立がされておらず、ハチクマについては、環境省のマニュアルによる2営巣期以上の調査もされていません。しかも、大臣意見で「営巣個体の保護に関しては、国際博会場関連オオタカ調査検討会をはじめ専門家の意見を聴取し、繁殖を含め生息に支障が生じることがないよう、引き続き適切に対処すること」と述べていますが、この国際博会場関連オオタカ調査検討会の委員自身が、青少年公園の会場使用によって、採餌場が狭まり、繁殖、営巣に影響を及ぼす可能性を述べており、環境大臣意見のこの問題での評価は、科学的でもなく正確でもありません。
第二に、グローバルループについて、ループの拡幅などが博覧会協会で検討されていることが報道されていますが、グローバルループの幅が広がれば、青少年公園の動植物に与える影響も大きくなることは明らかです。追跡調査ということであとに予測・評価をまわしていては、適切な環境影響評価といえません。この点について、環境大臣意見が何も触れていないことは問題です。
第三に、工事にともなう環境影響評価やアクセスによる環境影響評価は行われているとして、工事量の増加、変更に伴う環境影響の増加について保全措置の再検討を指摘していますが、現在、東部丘陵線などアクセスにともなう工事によって、長久手町の歩道が急傾斜となり、子どもや障害者の歩道が困難になっていることや、スズカカンアオイなどの貴重な植物が切り倒され、踏みにじられていること、周辺での駐車場の確保にともなって、地権者との衝突や大切な苗田、自然が壊されるなど自然破壊や住民に対する不利益が生じています。環境大臣は、現実の工事に伴う自然改変の現状について正確に把握し、その事実から環境影響評価書の記述について意見を述べなければ、科学的な意見とも責任ある意見ともいえません。
また、海上地区に予定されている吉野八草線の設置や市道吉野3号線の拡幅は、周辺の自然環境を大きく破壊しますが、その自然環境は調査中の段階であり、科学的な環境保全策が検討されていません。これらの問題点は、本来、万博と一体となって行われる一連の関連事業について、「旧通産省要領」でも、万博の環境影響評価との連携をはかる旨を明記しておきながら、万博と一体の環境影響評価を行わず放置してきたことによるものです。この点を改めることについて、環境大臣意見が無視していることは問題です。
第四に、交通渋滞などによる周辺教育機関を含む地域住民への環境負荷の軽減にあたって、地元地方公共団体等の関係機関と十分に調整し決定することを求めていますが、地域住民にはその結果を周知することのみになっています。現在の環境影響評価の手続きの大切な点は、情報の公開とともに、住民参加と意見の反映にあり、住民参加という大切な観点を抜かした環境大臣意見となっています。
このような見過ごすことのできない問題点を環境大臣意見がもつのは、環境大臣意見の大前提として、愛知万博推進のために、環境影響評価の手続きを厳正に実施しようとせず、愛知万博推進の枠内にとどめようという姿勢があります。大臣意見では、今回の修正評価書(案)が、評価書(案)作成後、大幅な計画の変更があったもとでつくられたことを認めていますが、現在の環境影響評価の手続きで、手続きのやり直しが必要ないのは、軽微な修正となっており、環境影響評価法では、環境影響評価の対象に新たな市町村が追加される場合には、軽微な修正とはいえず、手続きの再実施が必要となっています。こうした点にたてば、大幅な計画変更である以上、手続きのやり直しが必要であるにもかかわらず、それを無視してあくまで修正で対応しようとするところに、様々な矛盾がでてきているのです。
日本共産党は、この修正評価書(案)について、3月13日に見解を明らかにして、「修正評価書案は、県民や市民団体、自然保護団体、専門家の意見を十分くみつくし、反映したものではなく、手続きの上からも内容の上からも、『環境影響評価法の趣旨を先取りする新しい環境影響評価のモデルを示す』(旧通産省要領)ものとはなっていません」と指摘し、手続き上、内容上の問題を指摘した上で、「21世紀の初頭に開催される環境万博にふさわしい環境影響評価となるように、また、日本の21世紀の環境影響評価の真のモデルとなるように、愛知万博の環境影響評価の手続きのやり直しを求めます。また、万博開催に向けて環境影響評価の手続きのやり直しが時間的にできないというなら、環境影響評価を不十分なままですますのではなく、これまでわが党が主張してきたように、きっぱりと万博を中止して開催を返上すべき」ことを求めました。
日本共産党は、先にも明記したように、21世紀の環境影響評価と日本の自然保護に責任をもつ環境大臣が、21世紀の初頭に開催される環境万博にふさわしい環境影響評価となるように、また、日本の21世紀の環境影響評価の真のモデルとなるように、愛知万博の環境影響評価の手続きのやり直しと、やり直しが時間的にできないというなら、万博を中止して開催を返上を明言し、経済産業大臣に意見をあげることを求めるものです。
以上