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【02.10.27】あえぐ中部国際空港 揺らぐ「1都市2空港」

2002年10月27日 「愛知民報」

林のぶとし議員

林のぶとし(愛知県議会議員)

 中部国際空港建設工事は「順調にすすんでいる」(神田真秋知事)といい、2005年愛知万博開幕に余裕をもって間に合わせるため同年3月19日の開港予定時期の「前倒し」もいわれています。ところが、ここにきて中部国際空港の役割や開港後の名古屋空港のあり方について不安が表面化しています。私が10月1日の県議会企画環境委員会でおこなった質問をふまえて中部国際空港と名古屋空港をめぐる現状と問題点を紹介します。

推進論者からも不安の声

 中部国際空港が名古屋空港の代替空港に終わる不安を表明しているのは、新空港実現のため調査研究をおこなっている財団法人中部空港調査会専門委員会副委員長の伊藤達雄名古屋産業大学学長です。

 同氏は同会報「CARF」46号(2002年7月)掲載の巻頭言でセントレア(中部国際空港の愛称)建設を「名古屋空港の位置を移して規模を拡大しただけの事業に終わらせないためにも、中部の本格的国際化に向けた更なる地域の総力結集が待たれる」とのべています。

 また同氏は定期路線の一元化による利便性の高さ、関西国際空港に次ぐ24時間運用、地盤が固い浅海域という立地条件による建設費の安さなど、「当初喧伝されていた機能と立地の優位性には、近年かなりの情勢変化が生じつつある」「セントレアは、首都圏と関西圏のハブ空港が一段と整備される谷間で、きわめて厳しい競争条件にさらされながら開港しようとしている」とのべ、中部地域の国際交流の「現状」に不安の声をもらしています。

 中部空港調査会は1990年に発表した「中部新国際空港基本構想」で、中部地域における将来航空需要の増大と「世界的な産業技術中枢圏域」という役割から見て、現名古屋空港の限界を強調する一方、新国際空港整備の必要性をうたいました。

 日本共産党は、将来の航空需要予測が過大であること、中部国際空港が「国際ハブ空港」になりえず、その基本的役割において名古屋空港の代替空港にならざるをえないと指摘し、中部国際空港の建設中止と名古屋空港の有効活用を求めてきました。

 いま、推進論者から中部地域の「総力結集」を図らなければ、「国際ハブ空港」を標榜する中部国際空港が看板倒れに終わる不安が表明される状況になっていることは注視されなければなりません。

地元に一元化のませたが

 96年12月に閣議決定された「第七次空港整備五箇年計画」は中部国際空港への国際線・国内線の定期航空路線の一元化をうちだしました。「一元化」とは、国際線中心の成田と国内線中心の羽田のように二元化した役割分担でなく、国際線と国内線の定期航空路線はすべて新設の中部国際空港で扱うことです。この中部地域では国際線用と国内線用の2空港を並存させるほどの航空需要が確保できないからです。

 愛知県は名古屋空港周辺の自治体にたいし、「1都市2空港」論を強調し、新空港開港後も名古屋空港に民間航空機能を残すとして一元化をのませ、60席以下の小型機を使って地方都市を結ぶコミューター航空中心のゼネラル・アビエーション空港とする「名古屋空港の活用及び周辺地域振興基本構想」をまとめました。

 ゼネラル・アビエーション空港(GA空港)とは、写真撮影や遊覧飛行などの産業航空、警察、消防などの公共航空、社用機などのビジネス航空などの小型機を扱う飛行場です。名古屋GA空港の目玉がコミューター航空で、現在3社が12路線を運航しています。

現空港の路線存続危うく

 新空港は大・中型機による国際線・国内線定期路線を扱い、現空港は小型機によるコミューター路線を扱う「2空港」を実現しようというのですが、ここにきて、コミューター航空路線の現空港存続が危うくなりました。

 中部国際空港株式会社がコミューター航空各社に新空港への就航を勧誘しはじめたというのです。名古屋空港を拠点にしている中日本エアラインサービスさえ「正直、悩んでいる」(名古屋タイムズ02年9月13日)と揺れています。

 「かつて地元説得のキーワードとなった『1都市2空港時代』は幻に終わるのか」(同)、「名古屋空港 コミューター利用など構想は多様でも『2005年以降は不確定』」(『週刊ダイヤモンド』02年10月5日)と、新空港開港後の名古屋空港のコミューター航空路線存続をあやぶむ記事が目立ちはじめました。県の2空港構想が崩れはじめたのです。

 名古屋空港の定期路線のうち、コミューター路線の取扱旅客数は5%に満たないものの、路線数では全体の4割を占めています。今年10月現在、名古屋空港の国内定期路線数は30、便数は90です。そのうち、コミューター路線は12、便数は16あります。

 名古屋空港のコミューター航空の旅客数は95年度13万人から昨年度27万人に増加しています。福島、富山、米子、高松といった既設路線の旅客数は減少しています。旅客増の主因は新路線の開設や中型機では採算がとれないため大手航空会社からコミューター航空会社に路線が移管されたことによるものです。(図)

 県は、コミューター航空旅客数を05年37万8900人、25年42万6500人と見込んでいます。

 しかし旅客増の主因が新路線開設や路線移管という現状にてらしてみると、名古屋GA空港のコミューター航空路線が増えると、新空港は「大都市圏の拠点空港」と位置づけられながら航空ネットワークはいっそう貧弱になります。

 そのうえ、常滑と小牧は数十キロ離れています。国際線・国内幹線とコミューター路線との乗り継ぎの利便は期待できません。

新空港の路線もぜい弱に

 名古屋空港のように、ジャンボが利用できる2740メートル滑走路と年間1千万人の旅客を扱う国際線・国内線ターミナルビルをもつ大空港を小型機飛行場に切り替えるような例はありません。

 名古屋空港で使用されている56人乗りコミューター機・フォッカー50の離陸距離は1120メートル。2740メートルの滑走路を必要とするのは、小牧基地への空中給油機の配置がうわさされている自衛隊でしょう。

 私は県議会で、コミューター路線を新空港に移せば名古屋空港が旅客を扱うGA空港として成り立たず、コミューター路線を名古屋空港に残せば新空港の路線展開が貧弱になることを指摘し、「そもそも2つの空港を支えるだけの航空需要はない」と追及しました。ここにきて「1都市2空港」論の破たんと中部国際空港建設の存立条件の弱さが露呈してきています。

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