【空港】2002.10.15-10.21の動き
●中部国際空港の総事業費が、当初計画の7680億円より1000億円程度圧縮される見通しとなったことが15日、関係者の話で分かった。国内の国際空港建設で、事業費が当初計画より圧縮されるのは初のケースとなる。
中部空港と同じ海上空港の関西国際空港の一期工事は、地盤沈下などから総事業費は約5000億円追加されて約1兆5400億円にまで膨らみ、多額の借入金が経営を圧迫している。これらの反省から、中部空港では、民間が資本金の半分を負担する指定法人が事業主体となり、徹底したコスト削減に取り組んだ。さらに有利子借入金(4608億円)の金利が、当初見込んだ年4%台後半と比べ、1%台で推移しており、約530億円の金利負担を大幅削減できる見通し。事業費が圧縮できれば、航空機着陸料などを安く設定でき、民間路線の誘致など国際空港間の競争が有利に展開できる。国土交通省では2004年度最終予算で圧縮分の調整をする。
●愛知県田原町で進められている中部国際空港建設の土砂搬出事業で、セメント業界最大手の「太平洋セメント」(東京都千代田区)が同県漁連渥美支部(12漁協)に支払った漁業補償金のうち、1億円以上が使途不明になっていることが20日、関係者の話でわかった。補償交渉は同社と地元漁協の組合長で行い、補償金は、組合長が指定した建設会社の口座に振り込まれていた。同社は、補償とは無関係の建設会社を迂回させたことを認めている。
関係者によると、太平洋セメントの補償金支払いは2000年10月に始まり、現在も続いている。同社は田原町の自社鉱山から土砂約180万立方メートルを採取し、田原ふ頭で積み込んで空港建設地まで運んでおり、大型の運搬船が漁場を通過することに伴う補償だという。当初は、ふ頭周辺に漁場を持つ1漁協だけに、港内を運搬船が通る際に出てもらう警戒船の日当として補償金を支払っていたが、昨年3月、隣接する渥美町にある小中山漁協の組合長(58)から、渥美支部を通すよう求められた。組合長は当時、同支部の副支部長だったため、同社は交渉に応じ、支部に1立方メートル当たり130円前後の「迷惑料」を支払うことで合意した。組合長の求めで、補償金は愛知県宝飯郡の建設会社を通して支払われることになり、太平洋セメントの下請け会社と建設会社が警戒船の派遣契約を結んだうえ、同年5月以降、建設会社の口座に振り込まれている。この建設会社の社長の親族は、補償交渉に同席していた。補償金は土砂の搬出量に応じ、数か月ごとにまとめて支払われ、今年3月までの総額は1億6000万円に上る。現在までに2億円近くになるとみられるが、一部が警戒船を出している田原町の漁協に渡った以外、1億円以上の使途がわからなくなっている。
小中山漁協の組合長は、「建設会社から警戒船料を受け取ったことはある」としているが、同漁協の複数の役員は「漁協として、太平洋セメントの土砂搬出で警戒船を出したことはないし、補償金もない」と証言。渥美支部の残りの漁協にも補償金が入った形跡はなく、当時の支部長も、補償交渉そのものを「知らない」と話す。
太平洋セメントは、三重県南島町や藤原町の土砂を中部国際空港会社へ供給している。田原町の土砂は、潮流や風向きで三重県からの土砂運搬ができない場合などに補完的に使用している。