【空港】2002.08.13-08.19の動き
●中部電力は6日、バイオ技術を活用し、大型藻類の種苗を大量生産する方法を開発したと発表した。日本列島沿岸では、海洋汚染などで藻場が衰退したり、消滅する現象が多発しているが、中電の技術開発により、必要な時に必要な量の種苗を生産して、藻場を再生することが可能となった。中部国際空港島の藻場造成事業にも採用される。
中電は、カジメやアラメといった天然の藻から採取した胞子を培養したり、藻の一部組織をフラスコの中で増殖させることに成功。陸上の水槽で計画的に大量の種苗を生産する技術を確立した。三重県紀勢町の海底などで、試行的に種苗を移植しているが、大規模プロジェクトに適用するのは空港島が初めてとなる。
空港島では西側護岸の長さ2・8キロ、幅14メートルの海底(深さ約4メートル)に、カジメとアラメの苗を植えつけた小型ブロックを、2年がかりで計576基据え付ける。藻類の群落ができれば、光合成により二酸化炭素の吸収が進んで、地球温暖化の抑制に役立つほか、魚介類の産卵場所にもなりうるという。藻場の造成工事は中電の子会社のテクノ中部(本社・名古屋市)が担当する。中電は、同社の発電所の周辺海域でも藻場が減少していることから、環境保護に貢献しようと、1993年から研究を進めてきた。
●INAX(本社・愛知県常滑市)は、内装タイル生産を手がける主力工場の一つである常滑工場(同市鯉江本町)を、1、2年のうちに閉鎖する方針を固めた。拠点である常滑での工場閉鎖は初。
同工場は1937年に稼働し、創業工場の常滑東工場(同市)に次ぐ歴史を持つ。敷地は約10万平方メートルで、同市内にある5工場の中で最大規模。内装タイルの需要は不況の影響などで伸び悩んでおり、生産拠点の集約と効率化が社内で検討課題になっていた。常滑工場の敷地の一部が、中部国際空港のアクセス道路予定地にかかっていることも、閉鎖理由の一つという。同工場の生産業務は、上野工場や、中国・江蘇省に建設した工場などへ移管する。約230人の従業員は、近隣の工場へ配転させる。
●中部国際空港の建設地を目前に望む愛知県常滑市の多屋海岸で7日未明、アカウミガメの産卵が確認された。同海岸では5年ぶりで、空港島という大きな"障害物"にもめげずに上陸、産卵を果たした。現場は空港島まで約2キロ、前島まで約500メートルしか離れていない。地元の観光協会は、9月下旬から10月上旬にかけて予想されるふ化に備え、周辺をフェンスで囲み「温かく見守って」と呼び掛けている。
伊勢湾の愛知県側では知多市緑浜町の新舞子マリンパークの人工海浜で6月25日にアカウミガメの産卵が確認され、常滑市の大野海岸では7月11日にウミガメの上陸が確認されている。今回産卵したカメも含め、いずれも同じウミガメの可能性もある。
●03年度から5年間の空港整備の全体像を示すため、国交省が策定している次期空港整備計画の中間とりまとめ案の全文が7日、明らかになった。関西空港など国際拠点空港の民営化について、空港の整備と管理運営を切り離す「上下分離方式」を「現実的で適切」と明記したが、地元自治体などに反対論が根強い点も踏まえ、最終結論を年末に持ち越している。また、空港整備の財源を確保するために、羽田、名古屋、北九州空港の跡地売却や、羽田空港再拡張事業で地方負担の導入を検討するよう指摘している。
とりまとめ案によると、国際拠点3空港の民営化については(1)上下分離(2)個別民営化(3)地域ごとの統合の3案を、早期に完全民営化できる可能性や財務状況について検討した結果、上下分離方式を選んだ。中間とりまとめ案には、上下分離方式について「責任体制の不明確化、国際競争力の低下から下物法人の統合は不適切」(千葉県)、「開港前で経営実績という共通の判断基準がない状況において、年内に上下分離の参加の可否を判断するのは非常に困難」(中部国際空港会社、愛知県など)という反対意見も添付された。関係する当事者の合意が得られていないことから「現行の運営主体、地元自治体、株主、債権者などの広範な理解が得られるよう、最終とりまとめに向け検討を進める必要がある」としている。
関空の2本目滑走路を建設する2期工事については、「予定どおり工事を着実に推進する必要がある」と07年の供用開始を確認。その一方で、今後の需要予測に加え、(1)事業の緊急性(2)関空の利用や関西国際空港会社の経営状況(3)需要促進の見込み、などを「十分見極めていく必要がある」とも述べ、一定の制約も課している。さらに関西3空港の役割にも言及。関西=国際拠点空港、大阪(伊丹)=国内線の基幹空港、神戸=地方空港と明記し、「国際線は関空に限るのが適切」とするなど、大阪、神戸の2空港の国際化にくぎを刺した。
●中部地区の自治体や経済団体などでつくる中部国際空港利用促進協議会は7日、同空港を活用した国際観光の振興戦略と、生鮮食品の輸入促進に関する調査報告書をまとめた。
観光振興策は、同協議会の旅客部会が調査・研究を行った。報告書では、国際観光の推進主体となる官民一体の組織の設立を提案。運輸会社、旅行代理店、ホテル、飲食店など民間企業を中心に、国や自治体が支援する民間主導型組織として、市場調査や誘客、イベントの誘致などに取り組むよう提言している。また同空港は日本の中央に位置するという立地条件から「外国人の国内観光の拠点となり得る」と指摘。中部圏だけではなく、関東、関西との連携や広域観光ルートの設定を提案した。
一方、生鮮食品の輸入に関する報告書は物流部会が作成。航空貨物を使った生鮮食品の輸入量は、中部九県では全国の5・1%と、人口構成の15・8%に比べて低いことから「東京で輸入した生鮮品を国内貨物で中部に運ぶケースが多い」と現状を分析。新空港開港後は、毎日運航する便の開設などにより、潜在需要を掘り起こす必要があると指摘している。同協議会は、東海3県と名古屋市、中部経済連合会、名古屋商工会議所、中部国際空港会社が参加して昨年11月に発足した。
●水谷光男伊勢市長、辻三千宣二見町長、中北隆敏御薗村長代理の西脇英一助役は8日、小俣町明野の陸上自衛隊明野駐屯地を訪れ、山根峯治同駐屯地司令に「中部国際空港の開港にかかる騒音問題等の防止について」と題した申し入れ書を手渡した。
同駐屯地の訓練飛行などの際、半径20〜30キロの進入管制区域内の飛行高度上限が4000〜5000フィートになっている。しかし、中部空港完成後は、進入管制区域が同空港と重なるため、駐屯地のヘリコプターの飛行高度が約2500フィートに制限される。このため、松阪市の東端から志摩半島の一部では、飛行高度の低下で騒音などが心配される。小俣町は、同じ内容で7月24日に提出している。
申し入れ書は「騒音問題などの防止について、防衛庁本庁および国土交通省に強く要請するよう」要望している。受け取った山根司令は「現在、国土交通省と交渉に入っている。皆さんの趣旨を反映していきたい」と答えた。