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【02.10.20】中部空港3億円裏補償 疑惑にフタの神田県政
2002年10月20日 「愛知民報」
中部国際空港の漁業補償をめぐる3億円裏補償事件。神田県政は「適正な支出だった」と疑惑にフタをしようと必死です。収まらないのは、納めた税金を不正に使われたと怒る県民です。捜査の進展によっては、相乗り県政を激震が襲います。「真相を明らかにせよ」という声が高まっています。
“汚染”底知れず
事件の舞台は、沖合に中部国際空港の建設と前島の埋め立て工事がすすむ常滑市。1991年、同市土地開発公社が常滑競艇場南に公共下水道終末処理場や公園施設などの用地として約20ヘクタール(第1期工事)、公共用地として約30ヘクタール(第2期工事、のち前島計画123ヘクタールに吸収)の海を埋め立てるための事業で、漁業権消滅にたいする補償として常滑市内の4漁協に計27億円を支払う契約をしました。
その際、当時の中村克巳市長(汚職で逮捕、故人)が常滑漁協21億円、鬼崎漁協3億9310万円の正式契約とは別に裏補償としてそれぞれ2億円、1億600万円を支払うと密約しました。
空港建設にともなう漁業補償交渉が難航していた99年、支払われていなかったこの裏補償を両漁協にたいする漁業補償にもぐりこませるという手法で県が肩代わりしました。名古屋地検特捜部が県企業庁や県漁業調整推進本部、常滑市、両漁協の関係者から事情聴取をしているといいます。
もちかけたのは
「空港埋め立てに関して漁協側から3億円が解決しなければテーブルにつくことは難しいと聞き、県に解決が必要だと申し上げただけで、支払いを要請したつもりはない」
9日、常滑市議会の臨時全員協議会で日本共産党の佐々木志津江議員の質問に石橋誠晃市長はこう繰り返しました。裏補償の約束があることを県に報告し、解決をもちかけたことを認めながら、「どう解決されたかは知らない」といいます。
同市長は「漁協との間で交わした約束の経過はさだかでない」といいますが、前市長が裏補償を密約した当時の市助役です。常滑漁協とは口約束、鬼崎漁協とは前市長公印の押された確約書が存在していたことを認めています。
さらにこの確約書については、鬼崎漁協から廃棄したいと連絡があり、市は同意したが、なぜか最近まで保存してあったといいます。
佐々木議員は「廃棄したのは、裏補償がおこなわれ、必要がなくなった後というのが常識ではないか」と追及しましたが、同市長は「昔のことなのでわからない」とのべました。
7月上旬、佐々木議員が市建設部用地課に問いただした際、担当者は次のように説明しました。
名古屋地検特捜部が同課に漁業補償問題で市土地開発公社の資料の任意提出をと電話をかけてきたのは6月20日。そのため資料を整理していたら確約書が残っており、捜査には必要ないと考えて廃棄したというのです。
特捜部がやってきたときも、「確約書があるだろうと言われたが、廃棄したと答えた。何が書かれていたかは見ていない」ととぼけました。
臨時全員協議会で同市長も確約書の内容、廃棄した日時、廃棄の理由については知らないという態度に終始しました。
佐々木議員は「市民に事実を隠しながら、空港建設をすすめるために県に肩代わりを要請したとすれば背任行為だ」と市長の責任を明らかにするよう迫りました。
支払ったのは
空港埋め立てにともなう漁業補償は、三重県でも空港会社が同漁連に提示した60億円が北川正恭知事のあっせんにより136億円で決着するなどどんぶり勘定といわれます。
発覚した裏補償疑惑は、愛知県漁連もふくめると総額543億8千万円にふくれあがった空港漁業補償にまぎれこませ、一般会計とは別の企業会計を隠れみのに県民の税金を食い物にしたという事件です。
この漁業補償の陣頭指揮にあたったのは松島淳登副知事(当時)でした。99年にはその年2月に初当選した神田知事が、2005年開港に間に合わないことを心配して補償交渉の場に直接乗り出しました。
同知事は同年7月、最終的な補償額を漁連側に提示、8月に最終合意にこぎつけました。両漁協に計138億8千万円の補償費が支払われたのは翌9月のことでした。
神田知事は「(3億円の)積み残し金があったかどうかさえ判然としない」(「毎日」10月2日夕刊)としています。同知事はことし3月、松島氏ら副知事2人を任期満了前に交代させています。
県は「補償基準にもとづき適正に支出された」と疑惑を全面否定していますが、漁業補償の算定基準についてはマル秘扱いです。情報公開しているのは肝心な金額を抜いた算定式だけです。
相乗り自公民は
裏補償のうわさが出たのはことし6月。インターネット上でもとりざたされ、名古屋地検特捜部が当時の県幹部らを事象聴取するなど県庁内に動揺が広がりました。
自民、民主、公明はそうした事情を知り得ながら来年の知事選で神田知事への相乗りを決めました。
自民党の倉知俊彦県議団長は「知事がどの辺まで知っていたのか」(「毎日」10月2日夕刊)と心配。民主党の松山登県議団長は「推薦問題を協議する過程で、この問題を懸念する声も一部で出ていたが、表面化していなかったのでその方向で話を進めた」(同)という無責任さです。
“談合空港”の異名も
県民の暮らし・福祉を犠牲にして神田県政がすすめる中部国際空港は「疑惑・談合空港」と呼ばれます。
1999年、県企業庁の奥谷鉄太郎企画調整課長が都市開発調査会社「イルク」から計百数十万円のわいろをもらって逮捕(有罪)されました。
奥谷は、汚職に走った理由とされる借金千万円のうち約700万円は奥田信之元副知事(県芸術文化センター汚職で有罪)の買い物や飲み物の支払いを立て替えたためと供述しています。
空港埋め立て用の土砂取りでは、長木一県漁連会長(当時)による田原町の山林土砂売り込み疑惑が発覚。その話を空港会社にもちかけたと報道された松島前副知事にたいする脅迫事件も明らかになっています。
00年7月、運輸省天下り財団法人「港湾空港建設技術サービスセンター」が県企業庁から委託された空港関連の設計を無断で下請けに出していた事件が明らかになりました。
埋め立て、空港本体建設、アクセス事業など総額数兆円といわれる巨大事業をめぐる談合、暴力団の暗躍情報は数知れず。日本共産党の堀一議員は4日、県議会総務県民委員会で「これほど次々と短期間に事件が起こるとは、まさに汚職県政だ。万博、空港を聖域にして、県民の税金を自分の金と間違うモラルハザードを起こしているのではないか」と神田県政を追及しました。