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【02.10.06】中電隠ぺい 炉心溶融大事故の恐れ 「安全神話」からの脱却を

2002年10月6日 「愛知民報」

大野宙光(原発問題愛知県連絡センター代表委員)

 中部電力は9月20日、浜岡原子力発電所(静岡県浜岡町)の3号機で、過去に配管にひび割れの兆候がありながら国に報告していなかったと発表しました。浜岡原発は現在、配管破断事故、水漏れ事故などのあった1、2号機に加えて4号機も定期点検で停止しており、これですべての原子炉が停止するという異例の事態となっています。

 その後も、同月24日には定期点検中の4号機のシュラウド(炉心隔壁)で67カ所のひび割れが発見され、27日には建設工事中の5号機で国の安全審査を受けずに配管の溶接を行っていたことが明らかになりました。

 今回の一連の事態によって、中部電力がこれまでの原発事故の教訓から学ぶことなく、「安全神話」にどっぷり浸りきって、効率と利益を最優先にする立場で原発を運転していることがあらためて明らかになりました。

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 ひび割れが発見されていた再循環系配管とは、原子炉内の冷却水をかき回して炉内の水温を均等にする役割を果たしている配管です。

 この配管から水漏れが起これば原子炉が空だき状態になり、炉心の溶融というたいへんな事故にもなりかねません。しかも、一部のひび割れは修理をせずに運転を続けていたというのですから、原子力発電という巨大で危険なシステムを取り扱う資格を疑いたくなります。

 シュラウドは原子炉圧力容器内に取り付けられたステンレス製の円筒状のものです。燃料からの熱を効率よく冷却水に伝えるために、炉内の水の流れを整える役割があります。

 シュラウドが分離、脱落という事態になれば、炉内の冷却水の流れがおかしくなり、炉心の冷却がうまくいかなくなったり、分離したシュラウドが横にずれて、制御棒が挿入できなくなり、原子炉を止められなくなる可能性も指摘されています。

 一部の原発では不具合のあるシュラウドを交換して運転を継続していますが、大量の放射能がある炉心内での作業による作業員の被ばくがさけられないため、専門家からも批判の声があがっています。

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 中部電力は一連のトラブル隠しについて「法令上の報告義務がない」など責任を回避する発言を繰り返していますが、国民の命を重大な危険にさらしかねない重大問題を隠ぺいしたことは、きびしく指弾されなければなりません。

 経済産業省や同省の原子力安全・保安院の対応をみても、同院が毎年検査に入っても損傷隠しを発見できず、安全チェック機関としての役割をまともに果たしていない責任を棚上げにし、当座のとりつくろいだけで、まともな反省の姿勢は見られません。

 現在、53機の原発が営業運転を行っていますが、現場で運転管理監督や施設における保安規定の遵守状況の検査などを行う原子力安全保全検査官は約80名、原子力災害の発生を未然に防止したり、万が一災害が発生した際にその拡大を防止する原子力防災専門官は約20名、事務職員を含めても210名しかいません。これはアメリカの規制当局の1割以下にすぎません。

 しかも、安全・保安院は経産省という原子力の推進機関の一部門になっているのです。これでは、技術的にも未熟な原発の危険から国民の声明と安全を守ることはとうていできません。

 「原子力の安全に関する条約」では、原子力を推進する部門と、規制する部門をわけることをさだめています。国際原子力機関の勧告にもとづいて、安全確保のための独立した規制機関をただちに確立し、必要な人員の配置がどうしても必要です。

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 日本共産党の志位和夫委員長は9月23日、「ただちに国民の安全のための措置を――原発損傷隠蔽(いんぺい)事件をふまえての五つの緊急提言」を発表しました。ここで提起された方向での、原発政策の転換が求められます。

〈5つの緊急提言〉

(1)第三者機関による事故隠しの全容の徹底的な究明をおこなうこと。

(2)安全確保のために、独立した原子力規制機関を確立すること。

(3)プルトニウム循環方式という危険きわまりない政策を中止すること。

(4)核燃料サイクル施設の総点検・計画の中止をはかること。

(5)原発大増設路線に根本的なメスを入れること。

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