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真の行財政改革に向けて――「改訂愛知県第三次行革大綱」への日本共産党の見解
2002年2月15日
日本共産党愛知県委員会
委員長 岩中 正巳
日本共産党愛知県議会議員団
団長 きしの 知子
愛知県は2001年12月17日に「改訂愛知県第三次行革大綱(県庁改革プログラム)〜見直します 意識と組織と仕事ぶり〜」を策定しました。これは、1999年度から2008年度まで10年間の「行革」計画である「愛知県行政改革推進計画(愛知県第三次行革大綱)」の策定(1998年12月)以来3年間の「実績」のうえに、「新世紀へ飛躍〜愛知2010計画」を推進し、新たな課題への対応をはかるとして、さらなる「行革」推進方向を数値目標も示し、3年前の「大綱」を量と質両面からいっそうの「開発会社」化・「収益事業」化の方向へ改訂したものです。そのなかでは、来年度2002年度から2004年度までの3年間に集中的にとりくむ計画118項目と、2008年度までの7年間の中長期的にとりくむ計画37項目、計155項目を数値目標や方向性として示しています。
万博・空港を推進。県民の痛みさらに
日本共産党は、神田県政の転換に全力
この「改訂愛知県第三次行革大綱」(以下、「改訂大綱」と略す)の最大の特徴は、愛知県が住民の暮らしを守る地方自治体の本来の役割を投げ捨て、県の「開発会社」化・「収益事業」化を極限にまでおしすすめ、巨大開発目白押しの「愛知2010計画」の核心である2005年の万博開催と中部国際空港建設、その関連事業を何が何でも推進するための体制づくりをおこなうものとなっていることです。「改訂大綱」では、「構造改革」の名のもとに、3年前に策定された「愛知県第三次行革大綱」を越える規模と内容で県民サービスの切り捨てをすすめ、借金に依存して万博・空港を中心とする大規模開発を推進するため、結局、県財政再建は放棄され、借金が拡大するという無責任なものとなっています。
「県庁改革プログラム」という副題の内実は、県の公共的分野をほとんど収益事業化し、県民福祉を切り下げる「県民総攻撃プログラム」にほかなりません。同時に、県職員に対しては、県民との矛盾に目をつぶり「県庁」が一丸となって行革を断行することを強制するものです。
開発至上主義を続ける神田県政のもとで、愛知県は一般会計だけでも3兆円を越える過去最高の県債残高をかかえ、新年度予算編成を通じて3会計(一般会計・特別会計・企業会計)合計では初めて4兆円を越す県債残高となり「財政非常事態」におちいっています。他方、デフレ不況が深刻化するなかで、県民生活を支援する積極的な施策が求められています。いま必要な行財政改革は、財政再建と県民生活支援を両立させる改革です。そのカギは、県財政を借金づけにして県民福祉を犠牲にする開発至上主義と決別し、県民生活優先へ転換することです。そのために、県民に奉仕する職員の自覚と創意を高め、公正で民主的な行政を効率的に執行できるように改革をすすめることです。
日本共産党は、真の行財政改革に向けた県民的討論と一大県民運動をまきおこすことを県民のみなさんに呼びかけるものです。そして、県民のみなさんの運動と共同して、開発のために県民を犠牲にしてもやむをえないという、神田自民党県政を転換するために全力をあげるものです。
何が改訂されたのか──
「改訂大綱」では、何が新たに「改訂」されたのでしょうか。
大綱の中で再構築された10の取組課題のなかには、155項目という合理化計画がもりこまれています。このなかには、当然改革すべき課題も含まれていますが、見逃すことのできない、県民サービスの切り下げと県民に負担増を押し付ける基本方針が盛り込まれています。
愛知県民のくらしと福祉があぶない
第一に、これまでの県民犠牲に何の反省もなく、県民犠牲を極限にまでおしすすめることを表明しています。
「改訂大綱」は、「緊急に実施を必要とする施策以外のものについては廃止・休止するという考え方を基本として、行政評価制度も活用し、制度・施策そのものの廃止・休止を含めた見直しを徹底的に検討するほか、優先度、緊急度による事業選択、事業効果の検証、国、市町村及び民間との役割分担の明確化を一層徹底」するとしています。
今、廃止・休止を含めた見直しを徹底的に検討すべきは、借金に頼ってふくれあがった公共事業です。なかでも、マスコミの県民アンケート(「中日」02年1月1日付)で、多数が「万博で県は浮揚しない」「新空港は国際空港として成功するか疑問」と見ている万博・空港と関連開発こそ徹底的に見直すべきです。
神田県政は、この3年間、万博・空港を聖域にして、福祉や私学助成などの生活関連予算を削り、県民と市町村に負担をおしつけてきました。この福祉・教育切り下げを「実績」として評価し、さらに68歳、69歳を対象にした老人医療費支給制度と福祉給付金の対象年齢くり上げや医療費無料制度への所得制限導入など、県独自の福祉・医療を可能な限り後退させようとしているのです。県民生活を痛めつける「行革」が、生活不安を増大させ、消費不況に拍車をかけることは目に見えています。
財政危機は回避されず財政再建は放棄
第二に、深刻な危機にある県財政健全化を先送りし、事実上、財政再建の放棄を宣言しています。
神田県政の借金政策によって、県債の元利償還のための公債費が健康福祉費や産業労働費を上回り、県が自由に使える財源が減ってきています。財政の硬直化です。財政の健全化のために取り組むべきことは、一日も早く借金を減らす方向に転換することです。ところが神田県政は逆に県債を大量発行し万博・空港と関連事業に巨費を投入しようとしています。
「改訂大綱」は、借金(県債残高)の増加を抑える財政再建の根本問題を「平成20年度までに検討・実施する事項」としてしまいました。これは、平成16年度までは今後も借金(県債残高)が増え続けることを宣言したにすぎません。そして、「県債発行を元金償還の範囲内に抑制」して、借金(県債残高)を減らすという最小限のとりくみについて、期限を決めることもできず、正常な財政運営を遠いかなたに先送りしてしまったのです。これでは、「財政の健全化」とは名ばかりで、財政危機を深刻化させることにしかなりません。これが、県民の願う行財政改革の方向とかけ離れていることは明らかです。
地方自治体の役割を放棄し、上から市町村合併をおしつけ
第三に、県行政の守備範囲の見直しや行政運営の質的な見直しをすすめ、県の役割を根本的に変えてしまい、上からの市町村合併を強力に推進する内容となっています。
多くの市町村を含む広域行政を担当する県であっても、地方自治体であり、住民の健康・安全を守り、福祉を向上させることが第一の仕事です。ところが「改訂大綱」は、(a)地域の総合的なプロデューサー・コーディネーター役、(b)県民、市町村、民間に対する支援・補完役、(c)広域的課題への対応役を"果たすべき県の役割"としています。また、県民が自ら実施できることは県民自身が行い、県民自身では実施するのが不可能なことや非効率なことを家族や地域社会といった小さな単位が、さらに小さな単位では不可能なことを、市町村が、市町村が不可能なことは県が、さらに国がといった大きな単位が順に補完していくという「補完性の原則」を強調しています。これは、住民生活に対する県の責任と役割をできる限り縮小するとともに、県の役割を国策の推進と財界の要求にそった広域開発プロジェクトに集中させるものです。これは3年前の「大綱」からいっそう「改訂」された大きな特徴の一つです。
県が国の方針にそって、市町村合併を上から推進していることは住民自治をそこなうものです。市町村の規模は自治体の主人公である住民が自主的に決めることであって、上から画一的に押し付けるべきではありません。今日の市町村合併の推進には、大型開発を効率的にすすめる体制をつくること、合併を機会に住民サービスを切り下げることなどの狙いがあります。県は、合併問題はあくまでも住民の意思を尊重して決めるべきであるという立場をとるべきです。
職員リストラ・施設廃止で県民サービス低下、県立高校は統廃合へ
第四に、職員定数の大幅削減と県営施設、団体、試験研究機関の抜本的見直しによって、県民サービスをさらに縮小するものになっています。
「改訂大綱」で知事が最も強調した職員定数の削減は、3年前に決めた1,500人の削減目標を一気に2倍の3,000人に引き上げるものですが、なぜ2倍とするのか、これまでの919人の削減によって、経費だけでなく、職員が創意を発揮して住民に奉仕し、公正で民主的な行政を遂行するうえで、どのような問題が生じたのか、検証されていません。職員定数は全体としてむだのないものであるべきですが、子どもの基礎学力を充実する30人学級実現のための教員増や医療、福祉の充実など、県民のために必要な職員数は確保すべきです。
県有施設の総合保健センター、名東ふれあい広場、渥美老人ホームの廃止、すべての県営特別養護老人ホームを民営化、勤労福祉会館の統廃合を含む見直し、宿泊施設の廃止などが計画されています。さらに、住民の身近なサービス窓口である県事務所も、足助事務所、新城事務所が統合されるなど地方機関が再編・簡素化され、稲沢保健所、安城保健所、田原保健所の支所化を計画しています。これらの見直しは県民サービスをいっそう低下させるものとなります。
県立高等学校の統廃合計画も、すでに篠島分校の生徒募集が停止されたように、地域に密着した4つの分校をすべて廃止し、尾張西部、海部津島、知多、新城設楽の地域で計7校を廃止する計画です。少子化による生徒数減少のときこそ、余裕のできた教室を活かし、現在の40人学級から30人学級に移行し、ゆきとどいた教育をすすめるチャンスです。県立高校の統廃合は、こうした流れに逆行し、効率の名のもとに教育を切り捨てるものです。
競争主義の県職員づくり
第五に、能力、成績優先の給与制度の導入により、県職員の中に競争主義を広げるものです。
職員の給与や労働時間など労働条件は、その生活と労働者としての権利を守り、県民への奉仕のため積極的に働くことを保障するものでなければなりません。職員の意欲や創意は、住民全体の奉仕者としての自覚にもとづくことが必要です。
この根本をないがしろにして、公務職場に「成果主義」「競争主義」をもちこむことは公務員としての自覚の希薄化と住民サービスの低下をもたらし、職員の統制管理を主任務とする幹部・職員に特権を与えることになりかねません。
真の行革へつながる県民参加の事業評価なし
第六に、ムダな公共事業を廃止する真の行政事業評価をすすめる保障はまったくないものになっています。
行政・事業評価の核心は、自然破壊と浪費の大型開発にメスを入れ、中止を含む抜本的な見直しをおこなうことです。ゼネコン型開発事業は談合の温床にもなっています。海上地区の万博関連の新住宅市街地開発事業や新空港造成の埋立土砂を調達するための幡豆地区開発を中止させたことは、県民運動による「事業評価」の成果であり、自然保全と財政負担軽減にも役立ちました。
行政評価は、住民参加のもとで一定規模以上の大型開発について、(a)必要性と緊急性、(b)財政とのバランス、(c)採算性、(d)環境への影響という角度から検討し、計画、事前、事後の3段階にわたって評価することが必要です。
「改訂大綱」は、「行政評価」を強調していますが、県民参加による計画段階の評価・点検はなく、既に実施された事務事業の部内点検にとどまっています。これでは、公正で民主的な行政を効率的に執行していく保障はありません。
活力ある愛知どころか、県民を切り捨ててきた3年間
借金増加5,815億円は歴代知事トップ
(1) 3年間で次々と削られた県民生活関連補助金
「愛知県第三次行革大綱」策定後の3年間で、「大綱」のかかげた「活力ある愛知」に少しでも接近したでしょうか。それどころか、県民生活の活力を弱め、県財政を悪化させてきたのが実際です。
神田知事の就任した1999年度には、私学助成80億円をはじめ、福祉・教育関係のあらゆる補助金の15〜30%カットがおこなわれました。その額は199億円にのぼり、市町村と住民の新たな負担となりました。2000年度には前年度のカット継続の上に、後に導入を断念したものの乳児、障害者などの医療費無料制度への一部負担金の導入と福祉給付金の抑制により26億円が減らされるなど、さらに計63億円の補助金削減が追加されました。
これらの中には、生活弱者を直撃する重大な福祉・教育の後退が含まれています。
【カットされた主なもの】
――1999年度削られたもの1,625億円――
A,補助金カット(199億円)
・ 民間社会福祉施設への運営費補助(人件費15%カット)
・ 民間保育所への運営費補助(人件費15%カット)
・ 社会福祉総合事業費補助(予算44.2%カット)
・ 小規模保護作業所運営費補助(市町村への補助15%カット)
・ ホームヘルパー派遣事業費補助(市町村への補助15%カット)
・ デイサービス事業運営費補助(市町村への補助15%カット)
・ 入院時食事療養費にたいする助成を廃止(2000年1月より廃止)
・ 子ども会活動費補助金(市町村子ども会連絡協議会への補助とし、予算41.2%カット)
・ 社会教育活動費(PTA)補助(県PTA連絡協議会への補助3割カット)
・ 過疎地域スクールバス運営費補助(市町村への補助15%カット)
・ 公立中学校部活動指導費補助(30%カット)
・ 文化活動事業費補助(30%カット)
・ 名古屋フィルハーモニー交響楽団補助(30%カット)
・ 市町村交通安全対策推進費(30%カット)
・ 下水道事業費補助(30%カット)
・ 商業団体等事業費補助(30%カット)
・ 商店街集客力アップ支援・空き店舗対策事業費補助(30%カット)
・ 地震防災体制整備費補助(予算33.7%カット)
・ 国民健康保険事業費補助(30%カット)
・ 野菜安定供給対策事業費補助(予算50.5%カット)
・ 合併浄化槽設置費補助(30%カット)
・ 私学助成(経常費補助のうち人件費見直しと授業料軽減補助の所得制限の強化で80億円)
B,経費節減
・ 敬老金(制度変更、予算9割カット)
・ 福祉手当に所得制限導入
C,県職員などリストラ(390億円)
・ 人員削減で、58億円(職員681人カット、うち教職員395人)
・ 給与削減で、330億円(本俸3.5%カット、一時金5%カット、初任給1号引下げで1.6億円カット)
――2000年度削られたもの892億円――
A,補助金カット(63億円)
・ 県福祉医療で26億円(障害者医療、乳児医療、母子・父子家庭医療、戦傷病者医療に老人保健法準用の一部負担金導入。後に断念したものの01年度より補助率を10%カット)
・ 福祉給付金については福祉給付金受給者の福祉医療受給該当者は市長村民税非課税に限定
・ 社会福祉総合事業費補助(予算30%カット)
・ 子ども会活動費補助金(予算30.3%カット)
・ 社会教育活動費(PTA)補助(30%カット)
・ へき地教育振興費補助(30%カット)
・ 公立中学校部活動指導費補助(30%カット)
・ 文化活動事業費補助(30%カット)
・ 市町村交通安全対策推進費(30%カット)
・ 下水道事業費補助(30%カット)
・ 商業団体等事業費補助(30%カット)
・ 商店街集客力アップ支援・空き店舗対策事業費補助(30%カット)
・ 地場産業総合振興事業費補助(30%カット)
・ 国民健康保険事業費補助(30%カット)
・ 地震防災体制整備費補助(新規事業と統合・廃止し、予算63.6%カット)
・ あいち環境づくり推進費補助(廃止)
・ 野菜安定供給対策事業費補助(廃止)
・ 合併浄化槽設置費補助(10%カット)
B,在宅介護手当ての廃止(介護保険導入による)
C,県職員などのリストラ(407億円)
・ 人員削減で、70億円(職員759人カット、うち教職員435人)
・ 給与削減で、338億円(本俸3.5%カット、一時金3%カット、特殊勤務手当見直しで5.6億円カット)
――2001年度削られたもの292億円――
A, 補助金カット 前年度までの補助率カット継続
B,事務事業の廃止(73億円)
C, 経費節減合理化(12億円)
・ 施設管理運営費の節減3億円カット等
D,人件費抑制(207億円)
・ 人員削減で、30億円(職員360人カット、うち教職員51人)
・ 給与削減で、177億円(本俸2%カット、旅費制度見直し)
【第三次行革大綱にもとづく削減】 (単位:億円) 人件費 補助金 他経費 事業廃止 計 99年度 390 199 794 242 1,625 00年度 407 63 335 87 892 01年度 207 ―― 12 73 292 計 1,004 262 1,141 402 2,809
県は3年間で2,800億円の節減効果があったと「行革」の「実績」を強調します。しかし、これは前年度対比での節減額を合計しただけであり、実際の県民生活への影響はそれにとどまりません。99年度の削減も2000年度の削減もその後復元されていないからです。
神田知事は、「愛知県第三次行革大綱」にもとづき、次々と県民の福祉を切り捨ててきました。それまでもまったく不十分で劣悪だった福祉施策がいっそう冷たい仕打ちを受けました。失業・倒産は過去最高となり、県民生活は一段と深刻化しました。障害者やお年寄り、私学助成、さらには文化団体までが「聖域なし」とカットの対象となりました。不況で苦しむ県民に追い打ちをかける「行革」による切り捨てで、県民の間には、将来への不安が増大し、活力どころか生活不安、将来不安が増大したというのが現実です。
(2) 財政健全化どころか5,815億円もの借金増加
県民生活をささえる福祉・教育の補助金をこれだけ削減して、県財政は好転したのでしょうか。神田県政3年間で、逆に借金は増えました。
【神田知事就任後県債発行総額 8,956億円】
目的別内訳順位
1 道路 2,659億円
2 河川海岸 968億円
3 借換 952億円
4 土地改良 648億円
5 都市計画 607億円
就任後3年間で神田知事が新たに発行した県債は、3年間で8,956億円にのぼり、その大半が道路、土地改良、都市計画等の大型の公共事業に使われました。その結果、借金の総額(県債残高)は、神田知事就任時から3年間で5,815億円(一般会計4,373億円、特別会計145億円、企業会計1,297億円)にも膨れ上がり、ついに県債残高は3兆8千億円(3会計合計)となりました。2002年度予算編成で、この傾向はますます強まることになります。
神田知事が増やした借金は、これまでのどの知事よりもきわだっています。就任後3年間に増加した借金額は、仲谷義明知事(75年2月就任)で2,258億円、鈴木礼治知事(83年2月就任)は2,518億円であり、どちらも神田知事の半分以下となっています。
【神田知事就任後の県債残高増加額 5,815億円】 (単位:億円)
一般会計 | 特別会計 | 企業会計 | 計 | |
98年度末 | 26,683 | 2,968 | 2,300 | 31,955 |
01年度末 | 31,060 | 3,113 | 3,597 | 37,770 |
差引き | 4,373 | 145 | 1,297 | 5,815 |
愛知県は98年11月に「財政非常事態宣言」を行いましたが、事態は好転するどころか、2年連続の赤字決算の上に借金をかつてなく増やし、将来の県民生活に重荷を負わせただけで、新年度予算編成でも過去最高の県債を発行しなければ予算を組めなくなっているように、「非常事態」が引き続いているのが実態です。しかも、大規模プロジェクトの事業本格化による県債増発とこれまで発行した県債の元利償還のピークの時期が重なるため、ますます財政危機が進行することになるのです。
「愛知県第三次行革大綱」が策定された98年12月、わが党は「愛知県第三次行革大綱についての見解」を公表しましたが、そこでは「愛知県の財政破たんは、……大プロジェクトを聖域扱いにして、県民に犠牲を押し付けたところで解決できない」と指摘しました。事態はその通りに進行しました。
その後の県議会における論戦でも、わが党は一貫して、財政破たんの責任は、自民党を中心とする「オール与党」県政が、財界の意向に沿って巨大開発にあけくれたことによるものであり、県民生活や県職員にその責任を求めることは誤りであること、「行革」をいうのなら万博・空港推進こそあらためるよう求めています。この方向こそ、いま必要な改革の基本方向であると考えます。
開発至上主義にたつ「愛知2010計画」の抜本的見直しが必要
そもそも「愛知県第三次行革大綱」は、その目標を「21世紀の活力を築く愛知の実現」としてきましたが、県民生活の向上や福祉・教育の充実が中心課題ではありません。愛知万博や中部国際空港を「新時代に向けた愛知づくりの大きな引き金、推進力」(「愛知2010計画」中期推進プラン検討素材)と位置づけ、さらに高速道路、ダム、伊勢湾口道路、リニア中央新幹線、首都機能移転などの巨大公共事業をすすめるという「愛知2010計画」を推進できる行財政システムづくりにその最大のねらいがあります。
それら大型開発計画の前提となっている経済成長率、交通や水の需要予測の過大さがはっきりしてきています。20世紀型開発至上主義の「愛知2010計画」を抜本的に見直し、県民生活と環境を重視する方向に転換すべきです。
県民犠牲の「行革」すすめる自民・民主・公明「オール与党」連合
県議会の自民党、民主党、公明党など与党は、県民生活犠牲の万博・空港推進の神田「行革」の路線を支えるだけでなく、積極的にすすめる役割を果たしています。
特に自民党は、会派内に「行革」プロジェクトチームを結成し、「県有財産の有効活用及び県の施設のあり方について」を知事に提言し「民でできるものについては官から撤退する」ことを強く求めるなど、「行革断行」の圧力をかけつづけてきました。
自民党、民主党、公明党は、福祉・教育の補助金削減や制度改悪にことごとく賛成してきました。
これらの党は私学助成充実を公約に掲げながら、「聖域なく削減する」として知事が15%カットを提起した際も、日本共産党以外の全会派がこれに賛成しました。障害者作業所への補助金カットや、福祉医療制度への一部負担金導入など、福祉改悪・県民負担増これらすべての県民犠牲を「行革断行」の名ですんなりと賛成してしまうのが自民・民主・公明の「オール与党」連合なのです。
今回の「改訂大綱」も、自民・民主・公明の各団長を含む「行政合理化推進会議」(16名の委員中7名が自・民・公の団長ら与党県議)の了承のもとに策定されたものでした。(※)
与党と行政が一体となった県民切り捨て連合の体制をつくり、「行革与党」「県民切り捨て与党」として神田知事をひっぱる自民・民主・公明「オール与党」に対し、その責任を問い、厳しい審判を下すことが求められます。
「福祉・医療を守れ」「30人学級の早期実現」──
県民の要求を実現する「県民が主人公」の県政へ転換を
(1) 第三次行革と県民運動
「第三次行革大綱」策定後の3年間、県民は県民犠牲の「行革」に対して積極的なたたかいをまきおこしてきました。
障害者の皆さんが寒風吹きすさぶなか、県庁前に徹夜で座り込みました。私学助成の充実を求めて関係者が議会を包囲しました。市町村から見直しを求める意見書があいついでいます。こうしたたたかいによって、30%カットという補助金削減計画を見直しさせて、15%カットにとどめさせた分野も少なくありません。県の福祉医療制度についても、名古屋市を除くすべての市町村の反対で、いったんは導入が決まった一部負担金制度を断念させ、乳幼児医療費無料制度における対象年齢の3歳未満児から4歳未満児への引き上げや、県立子ども病院の建設や県立養護学校の増設をかちとってきました。
何よりも、万博・空港の強行を許さず、抜本的な見直しを求める県民のたたかいによって、「海上の森」における新住宅市街地開発事業の中止、名古屋瀬戸道路事業の一部中止、空港埋め立てのための幡豆地区土砂採取事業の中止など、これまでにない公共事業の見直し・中止を実現させてきています。
今回の「改訂」によって神田県政と県民・市町村との矛盾がさらに深まることになるでしょう。
(2) 真の行財政改革へ、県民的討論と一大県民運動をよびかける──日本共産党の財政再建提案
真の行革とは、県民生活を最優先するためにムダを削ることです。県行政を「県民が主人公」の方向で切りかえ、くらし・福祉の充実など、県民のふところをあたためることを中心にした消費拡大こそデフレスパイラルを打開し、税収を増やして財政再建の展望を開くことができます。
日本共産党は以下のように、一貫して行革の具体的方向を提案してきました。「改訂大綱」はただちに撤回するとともに、こうした柱に沿って、県民参加で財政再建プランを練り上げ、真の行財政改革を実現する県民的討論と一大県民運動をまきおこすことをよびかけます。
第一に、2005年の万博開催と中部国際空港建設は中止し、開発優先の「愛知2010計画」は抜本的に見直して方向転換をはかることです。
万博・空港の事業費に国民・県民の税金が本格的に使われるのはこれからです。国費を除いた県費だけでも万博関係に1000億円以上、空港関係には3600億円以上が投入されます(※)。さらにその後の赤字・失敗のつけが県民に襲いかかります。万博・空港が優先されるため、県民生活に密着した公共事業は先送りされています。
万博・空港を中止するとともに政府の経済対策として肥大化した公共事業(普通建設事業費)は計画的に半減させ、生活福祉優先へと切りかえることです。公共事業(普通建設事業費)を半減させれば、毎年の歳出は1,800億円節約でき、一般財源が300億円程度うまれます。巨大開発事業でなく、生活や福祉に密着した公共事業をすすめれば、景気に役立ち、中小企業の受注機会も拡大します。
第二に、ムダと不合理を一掃し、簡素で効率的な県政へ転換することです。
ムダと不合理の一掃という、県民にとって役立つ行革はおおいにすすめるべきです。特に、売れ残りの「塩漬け土地」が急増している内陸および臨海企業用地造成事業は、事業撤退を含めて県民参加で抜本的に見直す必要があります。中部国際空港関連の前島など開発用地造成は企業進出の見通しが立たず、破たんした関西国際空港の「りんくうタウン」の二の舞になる危険があります。
県財政再建までは開発型第三セクターに参加せず、現在の支援も見直すべきです。
第三に、ただちに借金を減らす第一歩をふみだすことです。
年々増加する一方の公債費(借金の元利返済)によって、県財政の硬直化がすすんでいます。金利負担を軽減するため、より低利のものに借り換えるとともに、県債発行の抑制と縮減にとりくむ必要があります。そのため、県債発行はバブル前水準に戻し、その範囲で県政を運営すべきです。
金利3%以上の県債を繰り上げ償還した場合、利率2%として175億円程度は節約できます。
第四に、自治体の課税自主権を最大限活用し、国の特権的な税の減免を受けている大企業に対し、適正な課税をすることや、県民負担でなく製造者責任にたった環境新税の検討など新たな財源をつくることです。
東京都が銀行への外形標準課税をおこなったように、その地方の特色に応じて自主的に歳入確保の努力を行うのは当然です。
大企業への法人二税への超過課税による税収は、河川などの防災対策の重要な財源となっています。その超過税率を東京、大阪なみに引き上げただけでも法人県民税で2億円、法人事業税で46億円が毎年の税収増加になります。さらに最大限の引き上げをおこなえば160億円程度の財源を生み出すことができます。
第五に、国に地方財政たてなおしの責任を果たさせることです。
このように県民生活を最優先にする立場でムダをはぶき、歳入、歳出両面から県財政の立て直しを図れば、歳入で200億円程度の増加と歳出で2000億円程度を節約することは十分可能であり、県債を抑制して借金財政から抜け出せるとともに、あらたに生み出される一般財源を福祉・教育にまわし、県民生活を守ることができます。
(3) 神田県政とオール与党に厳しい審判を
万博や空港を「引き金」としたこれ以上の開発優先・県民生活犠牲を絶対に許すわけにはいきません。そのためにも、万博・空港をはじめとした巨大開発と県民犠牲の「行革」をすすめる神田県政を転換しなければなりません。
日本共産党は、県民の皆さんや市町村との対話と共同を強め、「福祉医療制度を守れ」「就学前までの乳幼児医療無料化」「30人学級の早期実現、県立高校の統廃合やめよ」「介護保険の減免」「中小企業の振興を」「雇用の拡大を」など県民の切実な要求実現へ奮闘します。そして、来る県知事選挙、いっせい地方選挙で躍進をかちとり、県政を大きく転換するために全力をあげる決意です。
以上