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日本共産党県会議員林信敏「福祉医療が危ない」

 愛知の神田県政は、小泉政権の医療保険改悪をにらみながら、福祉医療制度の改悪と廃止を検討しています。障害者や母子家庭など生活弱者の“命綱”を断とうとするものです。

命の綱―――神田県政が改悪・廃止を検討

愛知県の福祉医療は、乳児、障害者、戦傷病者、母子・父子家庭の医療費無料制度と老人医療費支給制度、福祉給付金制度からなっています。これらは、医療保険の患者負担分の全部または一部を公費で援助するもので、市町村にたいする県単独の補助金制度です。2001年度予算で対象人数は合計61万6453人です。国の補助はありません。
 乳児医療は、入通院とも三歳未満児が対象。障害者医療は、身体障害1〜3級、IQ50以下、自閉症の障害者が対象。いずれも所得制限はありません。母子・父子家庭と戦傷病者医療には所得制限があります。
 老人医療費支給制度は、68、69歳の高齢者にたいし、老人保健法の対象である70歳以上なみの負担で医療を受けられるよう援助するもの(所得制限あり)。政府は昨年1月から老人保健法を改悪し患者1割負担を導入しました。したがって、68、69歳も1割負担に後退しました。
 福祉給付金は、老人医療の自己負担分の支払いが困難な市町村民税非課税世帯の68歳以上に支給されています。
 これらの福祉医療制度は、1970年代の医療費無料化をもとめる県民の運動を背景に創設され、生活弱者が安心して医療を受けることができる“命綱”の役割を果たしてきています。

愛知県の福祉医療

事業名

対象者数(2001年度予算)

概要

乳児医療

227,961人

3歳未満児の入・通院の自己負担を補助。所得制限なし。
障害者医療

71,322人

身体障害者1〜3級、腎臓機能障害4級、進行性筋萎縮症、知的障害者IQ50以下、自閉症が対象。自己負担分補助。所得制限なし。
戦傷病者医療

5人

戦傷病者の自己負担分を補助。所得制限あり。
母子父子家庭医療

96,090人

児童が18歳までの母子、父子、父母のいない18歳までの児童の自己負担分を補助。所得制限(児童扶養手当一部支給制限内)あり。
老人医療費支給

99,328人

68、69歳。老人保健に準ずる一部負担金で医療機関にかかれるよう補助。所得制限(老人福祉年金制限内)あり。
福祉給付金

121,747人

68歳以上のねたきり老人、独り暮らし老人、痴呆老人、70歳以上の福祉医療対象者。所得制限(市町村民税非課税世帯のみ)。68歳以上の精神障害者、結核患者。いずれも一部負担額を補助。

財政危機のなか、万博・新空港を優先

 鈴木前県政は1998年12月に「愛知県第三次行革大綱」を策定しました。これは、顕在化しつつあった財政危機のなかで、2005年の愛知万博開催と中部国際空港開港を軸とする大型開発プロジェクトの財源を確保するため、福祉など県民生活支援の予算削減をはかるものでした。
 鈴木県政を引き継いだ神田県政は、「第三次行革大綱」の「前倒し実施」をかかげ、1年目から福祉・教育の県単独補助金の軒並み削減を強行しました。敬老金の改悪、民間社会福祉施設運営費補助の削減、福祉医療の入院時食事代補助の廃止、在宅重度障害者手当の所得制限、特別重度障害者手当の県支給分カット、私学助成の削減などです。
 2年目に改悪をねらったのが、乳児、障害者、戦傷病者、母子・父子家庭の4つの医療費無料制度です。県は2000年2月県議会に、老人保健なみの一割相当の患者負担、つまり有料化を提案しました。これに自民、民主、公明など与党は賛成しました。
 日本共産党は、万博・新空港優先、県民犠牲の「第三次行革大綱」を批判し、県は住民の健康を守る地方自治体本来の役割を果たすべきだと主張。福祉・医療・教育の補助金削減に反対しました。
 無料化継続を求める県民の運動も盛り上がりました。障害者団体は県庁前で座り込みをおこないました。
 県は、2000年8月に一部負担導入=有料化を施行しましたが、名古屋市をのぞく市町村は、県の補助金削減分を肩代わりして無料制度を継続しました。
 県下の市長会長と町村会長は連名で知事にたいし「社会的弱者への影響を考慮し、福祉の後退につながらないよう、福祉医療助成制度の復活を強く要望」しました。
 乳幼児医療費無料化は、県の水準をこえて対象年齢を拡大する市町村が広がりました。住民の強い要求の反映です。
 窮地におちいった神田知事は2000年12月県議会で、「(2001年度は)一部負担導入を見合わせる」といわざるえませんでした。これは、福祉後退に反対する県民運動の成果です。有料化に賛成した自民、民主、公明など与党の責任が問われます。

小泉医療改悪に連動

 しかし、、2001年度からの福祉医療4事業の有料化がとん挫したとはいえ、神田県政は福祉医療改悪のねらいを捨てたわけではありません。こんどは、一部の市町村長をまきこんで改悪の道筋をつけようとしています。
 昨年、15名の市長村長で構成する「福祉医療のあり方に関する市町村代表者検討会議」を設け、小泉政権による医療保険改悪に連動し、愛知の福祉医療を全面的に後退させる検討をはじめました。
 乳児医療は、対象年齢拡大とだき合わせて所得制限の導入が検討されています。アメとムチです。保護者の所得制限額を特別児童扶養手当の基準とすると、およそ2割の乳幼児が無料化の対象から除外されます。
 障害者医療では、精神障害者を無料化の対象に加える一方で、所得制限を導入する構えです。在宅重度障害者手当を所得制限の基準とすると7%強の障害者が対象からはずされます。
 所得制限のある母子・父子家庭医療は、制限強化が検討されています。
 68、69歳にたいする県独自の老人医療費補助制度は、国による老人保健の対象年齢の引き上げにともなって廃止。福祉給付金も廃止し、これに代わる低所得者対策が検討されています。
 70年代以来の県民運動が実現した愛知県の老人医療無料制度は、その後、自民党政府による老人保健法の新設と改悪にともなって患者一部負担が導入されるなどつぎつぎ後退してきました。神田県政は、小泉医療改悪に連動させ、県独自の老人医療費支給制度の廃止にのりだしたのです。

県政改革へ県民の共同を

 神田県政は昨年12月、「第三次行革大綱」を改訂しました。「自主・自助」「民間活力」「地方分権」をテコに、県が生活関連の仕事から手を引き、県民と市町村に負担と犠牲をおしつけ、愛知県の行財政を2005年の万博開催と新空港建設・開港をはじめとする大規模開発の推進に集中させようとしています。
 そのなかで、「国の医療保険制度の本人負担に対する助成や、国の手当の対象とならないものを対象とする手当の支給」の「さらなる見直しを行い、総額抑制に努める」として、県独自の福祉・医療の制度改悪と予算の削減をうたっています。
 神田知事が就任後の3年間でつくった県債は5934億円(一般、特別、企業各会計の合)。これは、仲谷知事や鈴木知事の2倍以上です。神田県政と県民生活の矛盾は深まり、県民本位の県政改革へ県民の共同の条件が広がっています。
 神田県政の福祉医療改悪・廃止と小泉内閣の医療保険改悪に反対し、「万博・新空港より県民の暮らしと健康を守れ」の声と運動を急速に盛り上げることがもとめられています。


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