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【04.08.29】愛知のダム問題 設楽ダム
希少生物の生態系を破壊 前愛知県議 林のぶとし
8月29日「愛知民報」
木曽川水系は尾張地方、矢作川水系は西三河地方、豊川水系は東三河地方の水源となっています。
豊川水系では、東三河一帯の農業用水、水道用水、工業用水を確保するため、1967年度に宇連ダムが完成。水不足を補うため、天竜川水系からの導水路が建設されました。1980年には将来の水需要に対応するため「豊川総合用水事業」がはじまり、その水源施設として2001年、大島ダムが完成しました。
●県内最大1億トン
さらに新規水源として豊川上流に建設が計画されているのが設楽ダム(国土交通省の直轄事業)です。重力式コンクリートダムで総貯水容量は1億トン。矢作ダムの8千トンをしのぐ県内最大規模です。建設費は約2千億円(1997年度単価)。洪水調節と利水が目的とされています。水没予定戸数は120戸です。
建設見直しを求める市民運動が展開されています。
●三河湾を汚濁
ダム建設予定地は、県内でもっとも自然豊かな地域。絶滅危惧種のクマタカやオオタカ、天然記念物のネコギギなど希少生物の生息域です。すぐ下流にはオシドリがいます。ダム建設は、生態系に破壊的影響をもたらします。
海洋環境の専門家は、設楽ダムによる大量取水のため三河湾に流入する真水の量が減ると、湾内と湾外の水を入れ替える海水交換機能が大幅に低下し、同湾の水質汚濁に拍車がかかると警告しています。
●需要予測を見直せ
設楽ダムで、水道用水毎秒0.8トン、農業用水同0.3トンを確保し、将来の水需要に対応するとされています。
しかし、人口減少や節水効果で水道用水は今後横ばいが予想されます。運用中の豊川用水の7割をしめる農業用水の需要は下降傾向にあります。既設水源の有効利用により農家の経済負担と生産コストの低減をはかることが必要でしょう。
01年には同水系に総貯水量1230万トンの大島ダムが完成したところです。市民団体は、設楽ダムを造らなくても、これまでの豊川総合用水事業で利水問題は基本的に解決できると主張しています。
国と県は、将来人口の推計や1人1日平均給水量など積算データを公表し東三河地域の水需要予測を抜本的に見直すべきです。
●総合治水対策を
国土交通省は150年に1度の洪水に備えるため、ダムで毎秒3千立方メートルを調節することが必要といっています。
しかし、設楽ダムで調節できるのは約1千立方メートルにすぎません。洪水防止の有効性に疑問が出されています。
下流の霞堤の遊水池の有効活用、豊川放水路の浚せつ、支川流域全体の洪水対策など、ダムに頼らない総合治水対策を住民参加で検討することが求められています。
●“利権ダム”
問題だらけのダム建設がなぜ進むのか。
日本共産党国会議員団の追及で、徳山ダム建設工事受注企業が自民党、民主党に献金していたことが明らかになりました。利権が無駄なダム建設の“原動力”になっています。
企業献金禁止は公共事業改革のカナメです。企業・団体献金禁止を主張し実行している日本共産党を前進させることです。
●政策転換のとき
いま、高度経済成長期が過去のこととなっても惰性のように続いているダム依存の水資源開発政策からの脱却が求められています。「渇水」は単なる自然現象でなく、公権力と大企業による水資源の収奪と乱用が生み出した社会現象でもあります。徳山ダムや設楽ダムの建設を中止させることは政策の転換点となるでしょう。
国と自治体に、渇水時の緊急対策として各水資源施設の水利権の利用状況を公表し、迅速、適切に調整するルールをつくらせ、水資源の過剰開発・乱用型から節水・循環型への本格的転換を推進する総合的で合理的な水利用計画を立てさせることが必要です。