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【04.08.22】愛知のダム問題 徳山ダム
巨大ダム開発政策の破たん 前愛知県議 林のぶとし

8月22日「愛知民報」

 徳山ダムは、愛知、岐阜、三重3県と名古屋市が総事業費の増額と新たな負担割合に同意し、ダム本体の盛り立て工事が本格化しています。

 しかし、ダム建設地の生態系破壊と流域全体に及ぶ環境変化、ムダを重ねる導水路建設、国民と県・市民の負担増など矛盾は新たな広がりをみせています。住民のきびしい監視が求められています。


◆需給計画を変更
 愛知県は2月、今回の木曽川水系フルプラン改定にともなってまとめた2015年時点の水需要推計をふまえ、「徳山ダムの利水計画の見直しについて」を発表しました。

 内容は、愛知県が徳山ダムで確保している水道用水の水利権を毎秒4.0トンから2.3トンに減らしつつ、徳山ダムの建設推進をはかるものですが、従来の水需給計画を変更する内容をふくんでいます。

 現行地方計画(あいち2010計画)は2010年度時点で、徳山ダムの水の供給対象地域である尾張地方の水需要を毎秒11.02トンと見込んでいました。今回の「見直し」は、人口見通しや1人1日当りの平均水量を引き下げ、2015年度の需要を8.88トンとしました。

 この点では、過大な水需要推計の見直しを求めてきた日本共産党県議団の主張の正しさを事実上認めたと言えます。

愛知県・木曽川水系の水道用水の実績と推計(単位:立方メートル/秒)

  既設ダム水利権及び地下水等水量 ( )内は1987年度渇水時の供給可能水量

2001年
需要実績

現行愛知県地方計画:2010年度需要推計 今回「見直し」:2015年度需要推計
尾張地域

9.52
(5.48)

8.01
11.02
8.88
愛知用水地域

9.79
(5.91)

6.38
10.63
8.25

19.31
(11.39)

14.39
21.65
17.12

≪尾張地域≫ 一宮市、春日井市、津島市、犬山市など尾張北部・中部・南部の29市町村
≪愛知用水地域≫瀬戸市、半田市、春日井市の一部、刈谷市など尾張東部・知多の20市町

 

◆余り水どこへ
 今回の「見直し」は、徳山ダムの水道用水の供給対象地域を尾張地域から愛知用水地域に変えました。

 人口増と水需要の伸びを見込む愛知用水地域に徳山ダムの水を振り向け、尾張地方には長良川河口ぜきの未利用工業用水から転用した水道用水を回すということです。

 県は愛知用水地域において01年度の水需要実績毎秒6.38トンにたいし15年度8.25トンと、オイルショック以前の時期並みの高い伸びを見込んでいます。しかし、この地域の人口も2020年頃にはピークをむかえ、その後は減少傾向をたどると推計されています。徳山ダムの水はどこへ振っても無用です。

 長良川河口ぜきの水利用については、知多地域住民から木曽川への水源変更を求める声が出ているなどさまざまな問題があります。

 長良川河口ぜきと徳山ダムの“余り水”をどこに押しつけるか。巨大ダム開発政策の矛盾が噴き出しています。


◆渇水対策いうが
 徳山ダム建設の必要性として強調されているのが、「少雨化傾向等によるダムの供給可能能力の低下」です。今回のフルプラン改定で国土交通省は、渇水時の木曽川水系のダムごとの「供給可能水量」を示し開発水量の4〜7割しか見込めないとしています。

 これは重大な問題提起です。渇水時の「供給可能水量」の算出データが公表され、県民からの妥当性を検証できるようにする必要があります。しかし、愛知県はそれをせず、水需要量から「供給可能水量」を差し引き、不足量をおぎなうため、徳山ダムが必要といいます。

 渇水対策は重要です。しかし、ダム建設の結論ありきで渇水対策が論じられるならば、総合的な渇水対策はなおざりにされ、ダム開発政策の破たんを隠ぺいすることになります。

 近年の降雨量の減少傾向は地球温暖化によるとされています。ならばなおさら自然破壊の開発至上主義から脱却し、緑の保全・回復と多様で身近な水源の涵養、節水・循環型社会づくりの計画的推進など、ダムに依存しない水資源の確保と水利用のあり方へ転換すべきです。


◆ムダ重ねる導水路
 徳山ダムの水は“遠くて高い水”の典型です。導水路なしには役立ちません。国土交通省が示した徳山ダムの「渇水対策・都市用水共導水路」計画は愛知県犬山市まで延長約48キロメートル、総事業費約7百億〜9百億円の大事業です。

 将来の水需要がなく、渇水対策の有効性もはっきりしないまま、事業がぼう張しつつあります。建設推進勢力の政治責任が問われています。

 

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