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【04.08.01】愛知のダム問題 長良川河口ぜき 過剰開発のツケ重く
前愛知県議 林のぶとし

8月1日「愛知民報」

■塩水そ上
 塩水のそ上を防ぐはずの長良川河口ぜきで、逆の現象がおきました。7月18日、岐阜県西濃地方で大雨が降り、増えた長良川の水を流すため、河口ぜきのゲートを全開したところ、海水がせき上流までそ上したのです。
 河口ぜき上流の伊勢大橋付近の塩分濃度は海水並みに上昇しました。水道には使えません。河口ぜきから知多地域4市5町の水道用水を取っている愛知県企業庁は取水を停止し、従来この地域に供給していた木曽川からの水に一時切り替えました。
 「塩水はせきより上流には入りません」という水資源機構の説明は裏切られました。「利水に無用、治水に危険、環境に有害」と批判されてきた同河口ぜきの欠陥がまた明るみに出ました。
 知多地域の住民から「すぐ切り替えられるじゃないか。水源を元の木曽川に戻せ」の声が高まっています。


■水あまり
 国と愛知県は、高度経済成長時代の水需要の高い伸びを前提に立てた大規模ダム建設計画を、その時代が終わっても抜本的に見直さず、利水自治体間の水量調整や治水への切り換えによって計画規模を維持し、建設工事を強行してきました。長良川河口ぜきの本体工事がはじまった1983年には、すでに木曽川水系の過剰開発=“水余り”は顕在化していました。
 名古屋臨海工業用水事業は73年に事業を休止しています。
 長良川河口ぜきの運用開始から9年。愛知県は確保した毎秒8.39トンの工業用水を一滴も使わないまま、毎年建設負担金を払い続けています。
 名古屋市も同様で、同河口ぜきで確保した毎秒2トンの水道用水は未利用です。

■ 県民負担
 愛知県の長良川河口ぜきの建設負担額は、元利合わせて859億円にのぼります。90年代後半、水需要が伸び悩むなかで、長良川河口ぜきなどのダム建設負担金の支払いは、水道用水・工業用水事業会計を悪化させました。
 一般会計から工業用水事業会計への繰入金の額は、全国47都道府県のなかで愛知県が最多。390社の工業用水利用企業のために補助金、出資金、貸付金などの名目で県民の血税を投入する状況になっています。
 愛知県は、2000年度と02年度に水道用水と工業用水の料金大幅値上げをおこないました。長良川河口ぜき建設のツケは、県財政と県民に大きな負担となっています。


■生活直撃
 愛知県は今年2月に発表した「徳山ダムの利水計画の見直し」のなかで、長良川河口ぜきの未利用工業用水毎秒8.39トンのうち2.9トンを工業用水に残し、5.46トン(うち4.52トンを尾張地域、0.94トンを知多地域に供給)を水道用水に転用するとしています。
 しかし、近い将来、人口と水需要の減少が予測され、転用してもどちらも恒常的活用のアテはありません。渇水時の緊急水源といいますが、愛知への導水路もありません。
 「利水計画の見直し」は、“水余り”の長良川河口ぜきにたいする国民の批判をかわしつつ、経営破たんにおちいっている工業用水事業の支援をはかるものです。
 県は現在、工業用水から水道用水への転用割合に応じて水道用水事業会計にさかのぼって建設費負担金を背負わせることを検討しているようです。そうなれば、県営水道事業の収支悪化は必至。県民生活を直撃する水道料金大幅値上げにつながるおそれがあります。

 

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