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【04.05.23】名古屋の「都市再生」を考える
日本共産党名古屋市会議員 わしの恵子
5月16・23日「愛知民報」
いま名古屋市では、「ポスト万博・新空港」のかけ声で、「都市再生」が取り組まれ、市内中心部は超高層ビルの建設ラッシュがおきています。私の住む西区でも、古くからの商店街の住民から「ますます地域がさびれてしまう」と心配の声が上がっています。
■国や財界が危機感
中部運輸局は、「ポスト万博・空港」の2005年以降の中部地方のプロジェクトについて、愛知県など関係自治体や経済界の取り組みが遅れていることに危機感を抱き、私的懇談会を設置しました。今後、万博と中部国際空港を生かした具体的プロジェクトを提言するとしています。
名古屋市では、05年以降の大型プロジェクトとして、「都市再生」の事業を着々と進めています。
02年7月に都市再生特別措置法による「都市再生緊急整備区域」の第1弾として東京臨海部、大阪都心地域、名古屋駅周辺の3大都市圏の16カ所を指定。名古屋市では第1次、第2次で名古屋駅周辺・伏見・栄地域、千種・鶴舞地域、名古屋臨海高速鉄道駅周辺地域が指定されています。
しかし、「都市再生」といっても、これまでの民間再開発などをいっそう推進するものとなっています。
■超高層ビル建設ラッシュ
名古屋駅周辺は、いま超高層ビルの建設ラッシュとなっています。JRセントラルタワーズ(地上245メートル・51階)のすぐ東には、豊田・毎日共同ビル(地上247メートル・46階、06年完成予定)、さらに名古屋駅北側には、牛島南ビル(中電・トヨタ・名鉄などの大企業再開発ビル、地上40階、07年完成予定)と、完成時には超高層ビルが林立し、これまでの名古屋駅周辺の街とは大きく様相が変わってしまいます。これらのビル建設に合わせ地下街も作り変えられます。
都市再生緊急整備地域は、既存の用途地域等にもとづく規制を適用除外したうえで、自由度の高い計画を定める都市再生特別区を設定できます。建築・都市計画上の規制緩和(容積率や建ぺい率などの規制を緩和)をはじめ、地権者の3分の2の同意で都市計画案を作成、行政手続きの短縮ができ、金融面や税制上様々な優遇措置もあり、大企業にとっては大きなメリットがあります。
豊田・毎日ビルは、「名駅四丁目七番地共同ビル」として建設計画が進んでいましたが、03年2月、全国で初めて特別区に指定。これによって建築物の容積率の上限1千%が1千420%に、高さの最高限度がJRセントラルタワーズより2メートル高い247メートルに大幅な規制緩和がされました。
今年1月、新築工事が始まった建設中の同ビルは、JRセントラルタワーズから眺めることができます。総事業費は837億円で、国、県、市は04年度までに合計7億5千万円を補助し、さらに増える見込みです。
このビルは、財界の総本山のトヨタ自動車の国際関係部門を東京から移転集中させるといわれています。
「都市再生」は、大企業のために規制緩和と優遇措置をおこない、大型開発をさらに推進させるといってよいでしょう。
■栄に巨大な観覧車建設
栄地区では、栄交流コアの整備検討調査が市有地の栄小公園とジェトロ展示場(地主は松坂屋)の一角、錦3丁目25番街区を中心に行われ、オアシス21を含む回遊性の強化や人の流れを誘導する周辺街区の開発がすすめられています。
また先日、新聞で報道されましたが、この栄中心部では地上52メートルの観覧車が来年春、完成するそうです。
中部地方初の、ビルの中からゴンドラに乗り込む建物一体型の観覧車で、名古屋城の天守閣(48メートル)より高く、都心のビル群や名古屋城などが一望できるとしています。
開業は来年3月に開会する愛知万博に間に合わせる予定で、建設するパチンコ機メーカーの京楽産業は「栄の名物にしたい」としています。
繊維問屋街「長者町」として親しまれてきた中区錦2丁目では、地権者によって38階建ての再開発ビル建設が検討されているなど、「都市再生」の波に乗ろうという動きが出てきています。
■オフィス「2007年問題」
名古屋中心部のオフィスビルの2002年1月から03年にかけての平均空室率は、過去最高の8%台に上昇しています。
名古屋駅周辺では、1999年に開業した51階建てのJRセントラルタワーズに続き、豊田・毎日ビル、牛島南ビルが相次いで完成します。中部国際空港などで新規需要を見込んでいますが、長引く景気低迷で事務所の新設も少なく、供給過剰に輪をかける「2007年問題」が指摘されています。
名古屋駅北の牛島南ビルは、オフィス棟の延べ床面積が11万3千平方メートルで、豊田・毎日ビルの延べ床面積9万5千平方メートルを追いぬき中部では最大級となります。
オフィスビル仲介会社によると、03年の名古屋市内全域の平均オフィス空室率は、8.7%で、前年に比べ0.5ポイント高く「オフィス市況は厳しさを増す」としています。
なかでも名駅地区が6.2%にたいし、伏見地区は10%台、栄地区は8%台と名駅地区に比べ高くなっています。
一方で、ビル建設にともない新規供給割合が上昇していますが、全体の需要は増えないまま、最新の高層ビルに移転するケースが出てくるのではないかと供給過剰が懸念されています。
■住民が主人公のまちへ
名古屋市内では、万博・空港に続く大型公共事業として、都市再生事業がどんどんすすめられています。また相次ぐ大型店の進出で、地域の既存商店街は寂れるばかりです。
新しい浪費型巨大事業は、万博後の開発をねらう中部財界には大サービスする一方、市民の福祉・くらしを切り捨て、そこに住んでいた住民を追い出してしまうのではないかと危ぐします。
大企業優先のまちづくりではなく、住民が主人公の「名古屋らしい」まちづくりのために頑張りたいと思います。