10月1日からの愛知県の最賃額(時給)を決める愛知地方最低賃金審議会は22日、名古屋市内で異議審を開き、47件の異議申出書をまともに審議もせず、中央最低賃金審議会の目安通り41円の引き上げで1027円としました。労働者から怒りの声が上がっています。(愛知県・加能拓人)
愛知の審議会はいち早く答申を出しましたが、全国では時間をかけて労働者の生活実態にもとづいた審議がされ、半数を超える24県が目安を上回る答申をだしていました。
愛知では答申に対する異議申出書が、県内の労組・個人から昨年の36件を大きく上回る47件提出されました。内容は「41円では1日8時間働いても、月7千円程度の引き上げにしかならない。暮らしの改善にはつながらず、1500円以上に引き上げるべきだ」「低賃金の非正規労働者の生活実態から大幅引き上げは必要だ」など、切実な訴えが続きました。
さらに「当事者抜きで決めないでほしい」「最賃水準で働く労働者の生の声を聞く機会を設けるべきだ」などの意見も相次ぎました。
主張は闇の中
昨年、全国28の地方審議会で、労働者が委員に賃上げの必要性を訴える意見陳述の場が設けられました。しかし、愛知では、産業別の「特定最賃」を審議する場では意見陳述が行われましたが、県別の最賃を決める「地方別最賃」では意見陳述の場がありませんでした。
今年初めて公開された改正額の実質的な審議を行う専門部会は、きわめて短時間で具体的な審議がほとんど行われませんでした。2回(計3時間40分)行われた非公開の二者協議(公益委員と使用者代表、公益委員と労働者代表)に審議はゆだねられ、使用者代表、労働者代表がどのような主張をしたのか闇の中でした。
熱意伝わらない
22日の審議会では、愛知労働局の賃金課長が47件の異議申出書の概要を1件ずつ説明。非公開の問題は「不透明な審議」と言葉を置き換えて強調しました。審議会長が労使委員に意見を求めると、それぞれ1人の委員が「私たちが主張したのと同じ」(労働者代表委員)、「内容は理解している」(使用者代表委員)と述べ、1500円への引き上げにも、「不透明な審議」についても触れませんでした。「不透明」な審議であるにもかかわらず、「慎重な審議を尽くした結果、4日の答申通り決定する」と答申しました。
愛労連の竹内創事務局長は同日、抗議談話を発表。「全国では1円、2円で『労使が激論』を交わす審議会もあるなか、愛知の審議会は熱意がまったく伝わってこない」「物価高騰から生活を改善し、誰もが8時間働けば人間らしく暮らせる最低賃金1500円と全国一律最賃制度の実現、中小企業支援策の抜本的強化と公正取引の実現、民主的な審議の実現のためにいっそう奮闘することを表明する」と強調しました。
愛労連は毎回、「労働者委員に非正規労働者など低賃金で働く労働者を入れるべきだ」と求めて委員を推薦していますが、一度も選ばれず、生活が困窮する労働者の声を届ける委員が不在になっています。
愛労連と名古屋ふれあいユニオンは異議審に先立ち、官庁街で時給1500円以上を求めて宣伝行動に取り組みました。
(8月25日 しんぶん赤旗)