■ 「日本一」の誇り 経済効果500億円
「河村たかし市長は公約を守れ」―。名古屋市で「敬老パス」制度に2月から導入された利用回数制限の撤回を求める新たな市民運動が始まっています。(愛知県・加能拓人)
名古屋市の「敬老パス」は、1973年の本山革新市政の時に「高齢者の社会参加を支援し、福祉の増進を図る」ために創設されました。当時は65歳以上の市民が市営地下鉄・市バスに無料で何回も乗れることから、「福祉日本一の名古屋市政」と呼ばれました。2004年から、利用者に1000円、5000円の負担を求める制度(その後、3000円枠も)が導入されました。
有料化や廃止案が浮上するたびに市民運動が広がり「市民の宝」は守られてきました。
■ はね返した
河村市長は11年、「金持ち減税」の財源づくりのために実施した「名古屋版事業仕分け」で、敬老パスの負担金や年齢の「見直し」を狙いました。この時は、「敬老パスを守る会」(年金者組合など)などが「見直し」反対の署名運動を展開。日本共産党市議団も議会論戦で「見直すべきは金持ち減税だ」と徹底批判し、運動を後押し。世代を超えた賛同が大きく広がり、「見直し」断念に追い込みました。
13年の市長選挙では、「革新市政の会」(日本共産党も参加)の柴田民雄候補が敬老パスの存続・充実を公約に掲げると、自民推薦候補も敬老パスを守ると言い出し、再選をめざす河村市長も「敬老パス堅持」と公約せざるを得なくなりました。
共産党市議団が「市民の声を聞き、効果の検証を」と求め、市が市民アンケートを実施すると、世代を超えて支持されていることが判明。市の外部委託調査で、直接経済効果が事業費の2・5倍となる316億円、波及効果を含めると500億円を超えることも明らかになりました。
■ 理念に逆行
名古屋市は、市民の声をうけて私鉄やJRへの利用を拡大すると同時に、利用回数を年間730回に制限することを打ち出しました。乗車するごとにカウントされるため、乗り換え1回で1往復すれば4回利用となり、早い人は半年で制限に達してしまいます。
市民は「高齢者が気がねなく元気に出歩くことで、認知症や介護の予防にもつながる」「回数制限は高齢者の社会活動促進の制度理念に逆行する」と声をあげ、20年8月に「敬老パスと地域交通拡充で元気な名古屋をつくる会」を結成。利用回数制限の撤回、交通不便地域の解消などを求めて署名運動を展開し、2万3460人分の署名を市長に提出しました。
市民の声に押された河村市長は21年4月の市長選で、「乗り継ぎは1回にカウントする」と事実上の大幅緩和を公約。しかし公約を具体化しないまま、今年2月から回数制限を始めました。
■ 署名を開始
つくる会は、「市長に公約を守らせ、高齢者の健康増進と社会参加の促進へ制度をいっそう充実させよう」と新たな署名運動を始めています。今月7日に開いたスタート集会で、共同代表の小池田忠氏(大高南学区区政協力委員長)は、「早い人は半年くらいで制限回数に達し、その後は多額の自己負担を強いられる。市長の公約破りを許さず、市内全域で署名を広げよう」と呼びかけました。
第1回いっせい署名行動を28日に中区・大須観音前で実施。7月末に1次集約して河村市長に届けます。
(5月26日 しんぶん赤旗)