コロナ禍で休業を余儀なくされた労働者が国に直接、休業手当の支払いを求める休業支援金。正社員だけでなく派遣社員、パートやアルバイトなど非正規雇用労働者でも申請できます。会社の協力が得られず、申請を諦めかけていた労働者も日本共産党の支援を得て、粘り強く交渉し、支給を勝ち取っています。
会社は、コロナ禍でも休業した場合、従業員に平均賃金の6割以上の休業手当を支払う義務があります。
国は、会社が支払った休業手当を、後から助成する雇用調整助成金制度をつくっていますが、休業手当を支払えない会社が相次いだため、休業支援金を創設しました。
■ 会社の負担なし
勤務日数や時間が減らされたのに会社から休業手当がもらえない中小企業の労働者には賃金の8割(日額上限1万1000円)を支給します。会社の負担はありません。
申請には、(1)運転免許証など申請する労働者本人が確認できる書類(2)振込口座を確認できる書類(3)休業前の賃金が確認できる給与明細や賃金台帳(4)休業期間などを記入する「支給申請書」と「支給要件確認書」が必要です。
「確認書」には社名や住所、労働保険番号、雇用保険適用事業所番号などを記入する欄があり、原則として「労使で共同して作成」するものとされています。
遅れる制度周知
制度の周知が遅れているため、休業手当を支払っていない会社が労基法違反に問われるのではないかと協力を拒否する場合や、協力しても「他の労働者に言わないで」と口止めすることもあり、申請は広がっていません。
会社が協力した場合はスムーズに受給できます。神戸市内の飲食店でアルバイトをする大学生(20)は会社の担当者が「確認書」の記入に応じ、郵送で申請。シフトに入れなくなった5カ月分、約32万円が口座に振り込まれました。
「確認書」の会社記入欄が未記入の場合には労働局が事実確認を行います。
愛知県内のホテルでアルバイトをしていた大学生(20)は、会社に再発行してもらった給与明細を添付し、「確認書」の会社記入欄は未記入で申請。労働局から確認の電話があった後、シフトがなくなった5カ月分、約33万円を受給しました。
しかし、労働局の問い合わせに会社が協力しなければ支給の判断に時間がかかったり、労使関係が悪化したり、弱い立場の労働者にしわ寄せがきています。
弱い労働者救う制度に
■ 休業支援金 申請、高い壁
愛知県蒲郡市内の旅館で日々雇用の仲居として約20年間働く70代の女性は、感染拡大の影響で旅館が休館し、昨年4月以降働いていません。会社には「日々雇用の休業補償はできない」と言われ、休業支援金のコールセンターにも雇用が口約束のため「対象外」と言われました。
女性は日給制で毎月、数日~15日程度勤務してきました。午後2時から、宴会の配膳や片付けなどを行い、忙しい日の帰宅は午前0時を過ぎるといいます。
女性から相談を受けた日本共産党の日恵野佳代市議らが厚生労働省や労働局に女性の休業状況や申請期間などを確認。女性は同年12月、「確認書」の会社記入欄を未記入で申請しました。
■ 会社から暴言
しかし、「書類不備」で返信されてきた上、会社から「誰にそそのかされた」「うそつき」などの暴言を受けたといいます。女性は、いったん断念しかけましたが、書類の不備を訂正して申請。労働局の担当者が交代したこともあり、会社側も態度を一変させ、給与明細書を発行し、「確認書」作成にも協力。3カ月分の休業支援金が今年2月に支給されました。
女性は「他に相談できるところもなく日恵野市議らの支えがなければ申請を諦めていた」と話します。「自分は辞めても何とか暮らしていける。だけど旅館には日々雇用の人がたくさんいる。弱い立場の労働者が救われる制度にしてほしい」
日本共産党愛知県委員会と、もとむら伸子衆院議員は昨年10月、日々雇用の女性の実態を厚労省に訴え、休業支援金の改善を要請。野党や労組の運動もあり、厚労省は同月末、会社が非協力的な場合でも「月4日以上の勤務が6カ月以上」確認できる給与明細などがあれば支給を認める新基準をつくりました。
ただ、6カ月以上の給与明細があり、客観的に休業が確認できるのに不支給となったケースもあります。
愛知県内の温泉施設の食堂で調理を担当するパートの女性(62)は、昨年3月からコロナの影響で休業。月7万~14万円あった収入が途絶えています。
■ 社長が逃げた
休業支援金を申請しようと同年11月、食堂の社長に連絡しましたが、何度かけても電話がつながりません。女性は「社長が逃げた」と思い、会社記入欄は未記入で申請しました。
温泉施設側が女性の休業を認め給与明細もありましたが、労働局は「事業主の命による休業が確認できず、休業を証明した事業主に雇用されている労働者ではないため」と不支給に。女性は今年1月、夫(64)とともに党県委に相談。もとむら議員と党県委の高橋真生子政策委員会事務局長は愛知労働局に、事業主が逃げて連絡がとれない労働者を救済するよう要請しました。
女性の夫は、「どうしていいか分からず困っていた時に共産党が親身に相談に乗ってくれた。妻も少し勇気を出し、温泉施設に直接雇用された期間は申請を続けるつもりだが、申請のハードルが高すぎる」と話します。
高橋氏は「国会と連携して労働者が救済される制度になるよう引き続き求めていく。雇用契約を書面で交わしていなくても支給が認められた事例もあります。申請を諦めず、党や労働組合に相談してほしい」と話します。
(2月17日 しんぶん赤旗)