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名古屋の繁華街 無料PCR検査一部実現 市民と共産党が市を動かす

 新型コロナウイルスの感染者が急増し、PCR検査の抜本的強化が求められるなか、名古屋市では繁華街での無料PCR検査が部分的ですが実施されています。感染拡大防止を求める市民の声と、感染震源地での面的PCR検査を求める日本共産党の要請が一部実ったものです。

 名古屋市がPCR検査を実施しているのは、中区の錦・栄地区。愛知県内で最もにぎわう繁華街です。今夏、複数の飲食店でクラスター(感染者集団)が発生し、県が8月5~24日、錦や栄の一部の飲食店に営業時間短縮や休業を要請しました。市によると、「酒類の提供を行う飲食店」など営業許可のある飲食店は約5000店、また営業許可のある「接待を伴う飲食店」は約1500店にのぼります。

 市は、10月28~30日に接待を伴う飲食店など約930店がある栄4、5丁目の従業員と住民に無料でPCR検査を実施。検査を希望し、受けた人は332人に上りました。

 現在は、錦3丁目や栄3、4丁目の接待を伴う飲食店の従業員を対象に無料でPCR検査をしています。従業員全員の陰性が確認できれば「新型コロナ感染防止対策協力店」に認定する制度です。4日から20日まで申請を受け付け、協力店を市のホームページに掲載します。市は250店ほどの申請を見込んでいますが、11日までに申請があったのは22件です。検査を知らない店も少なくありません。

 PCR検査について同地区の飲食店に話を聞くと、スナック経営の女性は「従業員の希望があれば申請する。定期的に検査してほしい」。ラウンジ経営者は「お客さんも検査して陰性だと分かった方がいい」。スナック経営の男性は「信頼関係で成り立つ商売。申請のために従業員やお客さまの情報を出すことは難しい」と答えます。

 レストランの経営者は、「ようやくお客さんが7割くらい戻ってきた。今回の検査は対象にならない店の方が多い。もっと積極的なPCR検査や感染防止策の徹底でクリーンなイメージを出して、お客さんが来てくれるような支援をしてほしい」と話します。

 この地区は、4月にも県内全域の休業要請をうけて2回も休業要請があったため、客足が激減しています。

 党名古屋市議団が実施した錦・栄地区の飲食店への実態調査(8月26日~10月1日、1791事業者のうち165事業者が回答)では「店をやめるも地獄、営業するも地獄」などの苦しい状況がつづられています。

 訴えは「風評被害がひどくお客さんが来ない」「7月に入ってようやくお客さまが戻りつつあった矢先の休業は本当につらい」「2回の休業要請で売り上げダウン。持ち出し金額は1千万円」「月に50万円以上の赤字」「休業補償の20万円は家賃の3分の1にもならない」などです。廃業の検討は3割に上りました。

 PCR検査については、「無料」と「自己負担」を合わせると8割が望んでいました。「20万円の補償よりもPCR検査をすれば多少でも信用が戻るのでは」などの声が寄せられました。

 党市議団は、感染震源地での大規模なPCR検査を市と県に要請し、9月議会でも実態調査に基づき、「無症状も含めた感染者の保護が感染拡大を防止し、安心してお店を利用していただくことにつながる」として予算確保を求めました。

 河村たかし市長は、共産党の調査に150超の回答があったことに驚いていました。

 党愛知県委員会も、無症状感染者を特定するためにPCR検査の対象拡大や、保護した人の医療体制の確保を県に申し入れ。感染震源地での大規模なPCR検査を求める2160人分の署名を県と市に提出しました。

 党市議団の田口一登団長は、今回の名古屋市のPCR検査について「市民の声と連携した党の要請が部分的でも実現したのは重要な前進です。さらに拡充させていきたい」と話します。

 コロナ禍を経験した市民が命や暮らしを守る政治の実現を切実に求めている今、「小さな政府」を標榜(ひょうぼう)し行政サービスを削減してきた河村市政が転換点を迎えています。

 市は1990年代から保健所職員を削減し、2018年には全16行政区にあった保健所を支所(保健センター)に切り替え、1保健所16支所体制に再編しました。

 それでも、保健所の存続を求める市民の運動があって、感染症対策部門は地域ごとの保健センターに残されました。

 6月議会では、共産党の江上博之議員が保健センターの感染症対策部門の果たしている役割を指摘すると、河村市長は「職員が国の基準を上回って健康観察したことが感染封じ込めの力になった」と回答。職員に対して「市民の皆さんに成り代わりありがとうといいたい」と述べました。

 田口団長は、「自己責任の押し付けや行政サービスの民営化を進める新自由主義では社会が立ち行かなくなっていることは明らかです。市民の暮らしを守り、よくする公の責任を果たす政治を、国政でも市政でも前進させていきたい」と話します。

(11月16日 しんぶん赤旗)