名古屋にみる
新型コロナウイルスの影響で売り上げの減少が続く飲食業者。経営と生活の維持・再生に必要な持続化給付金の支給が遅れ、苦境に立たされています。
2週間以上も受け取れない
名古屋市名東区で居酒屋を営む男性(65)は、持続化給付金を申請して2週間以上たっても受け取れないと、日本共産党愛知県委員会に訴えました。
持続化給付金はコロナの影響で売り上げが半減した中小業者などに最大で200万円を給付するもの。経済産業省は事務事業を一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」に委託。その後、電通などの関連企業に再委託・外注され、不透明な委託の経緯や給付の遅れに疑問の声が上がっています。
持続化給付金の申請はホームページにアクセスし、必要な情報を入力、必要書類をアップロードして行うオンラインが基本です。
男性は税務署で確定申告の書類などをそろえて、5月7日に携帯電話から申請手続きを行いました。「通常2週間程度」で給付通知が来るはずですが、20日と26日に来たのは書類の「不備」を知らせるメールでした。
確定申告の控え、売上台帳や通帳、保険証、住民票の写しなど必要な書類はそろっていたはずなのに。「不備」の内容を確認すると再び確定申告の写しと、新たに開業届を送るよう指示がありました。
つぶれるのを待ってるのか
「一度送った書類をなぜ再度要求されるのか。コールセンターはつながらずメールも返信できない。支給を先延ばしし、こちらがつぶれるのを待っているのかと疑いたくなる」
居酒屋を始めて6年。店の売りは北海道の旬の野菜や海鮮を現地から仕入れてつくる料理です。客足は昨年10月の消費税増税前から悪くなり、コロナが問題になりだした2月ごろからピタッと止まりました。2、3月の売り上げは例年の4分の1。自主的に休業を決めた4月は赤字でした。
「店の固定費だけで月23万円、1カ月半閉めていた店を開けるために仕入れにも最低7万円は必要。再開の見通しが立たないのはつらい。死ねといわれているようなものだ」
共産党に電話した理由を尋ねると、「私らの立場に立って早急な給付を国会で求めているのは共産党だけだから」と話しました。
男性は持続化給付金の他に日本政策金融公庫(日本公庫)の貸し付けを4月8日に、愛知県の休業協力金を5月18日にそれぞれ申請。日本公庫の貸し付けが6月1日にやっと入金されたので、店を再開する予定だと言います。「持続化給付金は、政府が孫請けに業務を委託して誰が責任者か分からないような状態で頭にくる。私らはどこに訴えたらいいのか」
持続化給付金は1日までに150万件以上の申請を受け付け、支給は100万件(2日、梶山弘志経産相)。日本共産党の笠井亮衆院議員は5月27日の経済産業委員会で、事後審査に切り替えることを求めています。
東京商工リサーチ名古屋支社によると、愛知県内の飲食業者の倒産(負債総額1000万円以上)件数は、2月度(3件)、3月度(8件)、4月度(12件)と増加。幅広い産業でコロナ関連倒産が増えると予測しています。
業者から相談民商に相次ぐ
名古屋市内の民主商工会(民商)には持続化給付金申請の相談が相次いでいます。名古屋北部民商が予約制で感染対策をとりながら5月に9回開いた申請相談会には約60人が参加。松原裕子事務局長は「家賃や運転資金など売り上げ減少を給付金で何とかつなごうとしている業者が多い」と話します。
名古屋南民商でも5月の相談会に約60人が参加。平岡充典事務局長は「ネットを使い慣れていない60~70代は申請画面にメールアドレスを入力し仮登録するところから苦労している」と話します。
書類「不備」とする受付担当者への違和感も指摘します。「白色の確定申告の写真を添付している人に青色申告の内容を求めるものもあり、一体どこを見ているのかと思う」
昭和天白瑞穂民商の中島達也事務局長は、「『通帳や免許が読み取れない』など添付書類の『不備』を指摘されるケースもある。支給が遅れ、資金繰りの見通しが立たない業者も出てきている。手続きを簡素化して迅速に支給してほしい」と話します。
中区で「沖縄居酒屋ゆいゆい」を営む大城節子さん(66)は、持続化給付金が6月初旬に入金されましたが「ほとんど消費税の支払いに消えていく」と話します。月32万円の家賃を支払い続ける当面の資金を確保するために日本公庫の貸し付けも申請中です。「店を続けていくために家賃補助などの継続した給付をしてほしい」
実態に見合う制度拡充こそ
日本共産党愛知県委員会の新型コロナウイルス対策本部は、切実な中小業者の声を受け、専門家が持続化給付金の申請相談に応じる相談日を週2回開く予定です。須山初美本部長(副委員長)は、「持続化給付金を知らなかったり、対象にならないと申請を諦めたり、申請に至らないけれど生活が困窮している人もいます。中小業者が利用できる制度を知らせるとともに、対象拡大や早急な給付など実態に見合った制度の拡充を求めていきたい」と話します。
(6月8日 しんぶん赤旗)