新型コロナウイルス感染症の影響が愛知県内の劇団を直撃しています。感染防止のために公演は相次いで中止や延期に。多くの劇団が存続の危機にあり、一刻も早い支援が必要です。
幼稚園や保育園、小学校などで公演される児童青少年演劇の創作活動が非常に活発な名古屋市。「劇団うりんこ」(1973年創立)の児玉俊介代表(57)は、「3月から5月の59公演はすべてがキャンセル。6月以降のキャンセルも多く、収入は7900万円減っています。初めての事態に戸惑いを隠せません」と話します。
■ 補助あれば…
同劇団のステージは例年、学校公演を主軸に年間500回以上、観客数は15万人を超えます。
公演の8割を占める演劇鑑賞など学校での公演は、「全国一律休校」が決まった2月末頃から軒並みキャンセルに。キャンセル料は取れず、休校が解除されても遅れた学習の解消が優先されるため、演劇鑑賞再開の見通しは立っていません。
劇団が雇用する32人の団員の給料は銀行からの借り入れで何とか維持してきましたが、公演ごとに契約する照明や音響スタッフまでは支払えません。
雇用調整助成金や持続化給付金も申請しています。同劇団の小原ひろみさん(49)は、「公演のキャンセルに対して行政の補助が半額でもあれば助かるのですが」と話します。
団員の佐々木政司さん(51)は「微力だけど芝居を通じて子どもたちや先生に考えたり感じたりしてほしいと本気になってやってきた。再開を見通せないのは辛い」。
幼稚園や保育園を中心に年間1000回の公演を行う「人形劇団むすび座」(1967年創立、団員36人)も3~5月公演の9割がキャンセルされました。
「先行き不安のなか、一人で自宅待機する団員の精神面も心配です。若手を育てるのに対面で指導できないのが歯がゆい」とスタッフ部の小辻賢典さん(56)は話します。
■ 芸術見る権利
新型コロナ拡大を受け日本児童・青少年演劇劇団協同組合(児演協、62劇団加盟)が行った調査では、回答した51団体の公演中止・延期・縮小数は1124件で被害額は3億7400万円を超えます(4月11日時点)。
児演協代表理事の吉田明子さん(58)は、「もともと利益を上げることが難しい演劇業界は先が見えないコロナ禍で存続の危機に立たされ、子どもたちは舞台芸術を鑑賞する権利を奪われています」と指摘します。
「文化芸術は子どもたちの健やかな心の発達のために欠かすことはできません。劇団への支援とともに学校の多忙化解消など子どもたちが芝居を見る権利を保障する施策を現場に浸透させてほしい」
アマチュア劇団では、公演収入の減少が固定費の支払い困難などに直結しています。6月公演が延期になった「劇団名芸」(名古屋市、1962年創立)の武藤陽子さん(55)は「団費と公演収入で年170万円の劇団の家賃を払っています。公演収入の減少は痛手です。アマチュア団体への行政支援は少なく、これ以上公演中止が重なると財政は厳しい」と話します。
日本共産党愛知県委員会は文化芸術団体への応援金の拡充など支援強化を県に求めています。
(5月25日 しんぶん赤旗)