名古屋市内の公立学校で働く非常勤講師らが、残業代の支払いを求めて労働基準監督署に申告し、働き方の改善を訴えています。
■ 名古屋の公立学校
名古屋市の公立小中学校、特別支援学校の教員の1割以上にあたる約1400人が非常勤講師です。フルタイムで働き、担任ができる正規教員や常勤講師と異なり、非常勤講師は特定教科の授業などを時間単位で担当し、担任はできません。
非常勤講師の給与は契約時間に基づいて支払われます。授業準備やテストの採点などで残業しても、契約時間以外は勤務時間とされず、残業代は支払われません。
非常勤講師らでつくる「臨時教員制度の改善を求める会」が昨年6~9月に調べた非常勤講師(のべ12人)の残業時間は最高で月78時間、月平均20時間に上りました。
会は同年10月、市の教育委員会に残業代の支払いを求めましたが認められませんでした。市教委は、「もともと任用時の時間数の中で勤務していただくことを各学校に指導している。残業代の支払いは想定していない」。
■ 「終わらない量」
非常勤講師として中学校で社会科を教える加藤和子さん(65)は、「市教委は『契約時間内に仕事を終えて』といいますが、本当にできると思っているのでしょうか」と憤ります。
加藤さんは定年退職後、1年契約の非常勤講師として勤務しています。今年度の契約時間は週12時間で、そのうち11時間が授業です。残る1時間で2学年、1週間分の授業準備や提出された課題の評価、テストの採点などをしなければならず、契約時間内にはとても終わりません。
「仕事内容と契約時間が見合っていません。持ち帰り仕事を合わせれば残業が20時間を超える月もあります。契約時間を実態に合わせて増やしてほしい。市教委が『契約時間内に終わる程度の仕事でいい』と考えているとしたら生徒に本当に失礼です。先生も誇りをもって授業することができないと思います」
正規教員には、「時間外勤務と休日勤務の手当は支給しない」と定めた「給特法」が適用されます。残業代の代わりに月給の4%が「調整額」として上乗せされています。
一方、非常勤講師には「労働基準法」が適用されます。残業代の支払いを求めることはできますが、「残業代は請求しないもの」という雰囲気が学校全体に広がっています。
■ 時間把握されず
会は昨年11月、非常勤講師4人の残業代支払いを求めて労基署に申告しました。会の上村和範さんは「労基署の職員も『時給制なのに働いた時間が把握されていない』と驚いていました」と語ります。 会は、今年1月には市内で集いを開き、申告した経緯の報告や不安定雇用・低賃金に追いやられている非常勤講師の働き方の改善を訴えました。「非常勤講師へのタイムカード導入をはじめ、学校現場の異常な働き方にメスを入れることは急務です」と上村さん。
申告した一人、七海純子さん(64)は、「保護者や地域の人にも現場の実態を知らせ、教職員の長時間過密労働を変えるきっかけにしたい」と話します。
(3月3日 しんぶん赤旗)