ニュース

「患者の命綱」透析室閉鎖危機 継続求め署名5000人超 東栄医療センター

村上町長(右)に署名を手渡す(左から)長谷川会長、金田さんら=3日、愛知県東栄町役場

 「患者の命綱、透析室を閉鎖しないで」―。愛知県東栄町で3日、東栄医療センター(旧東栄病院)の透析患者らが人口透析室の継続を求める5000人余の署名を村上孝治町長に提出しました。

 奥三河3町村で唯一の人工透析施設です。最大70床あった一般病棟が減らされ続け、今年4月には19床となり、有床診療所に変更。無床化も進められようとしています。町は9月、患者や議会に知らせることなく、医療スタッフの不足を理由に来年3月末の閉鎖を決定。当時、町内外から通院していた患者は18人。町から転院先が紹介されるだけでした。

 患者らは10月から透析施設の継続とスタッフ確保を求める署名を開始。東栄町では人口の3割を超える1069人分の署名が集まり、全体で5047人が集まりました。

 署名提出には、奥三河地方の患者でつくる新城地域腎友会(長谷川喜一会長)、愛知県腎臓病協議会(奥村清高会長)、町民ら11人が参加。日本共産党の浅尾もと子町議が同席しました。

■ 地域医療が崩壊

 5年前から透析を受ける金田裕之さん(57)は、「転院すれば、片道1時間かけて透析することになる。このままでは、奥三河の医療が崩壊する」と村上町長に訴えました。

 他の透析施設には車で40分~2時間かかります。「患者の平均寿命は70を超え、一日置き4時間かかる透析後は体調も悪く、車移動は危険。負担は計り知れない」と強調しました。

■ 患者数増加予想

 厚生労働省によれば、透析患者の原因疾患は、糖尿病による「糖尿腎症」と高齢化による「腎硬化症」が半数を占め、今後患者数が増えて行くことが予想されています。患者らは、「透析施設は全患者の命綱だ。奥三河唯一の透析施設がなくなることは由々しき事態だ」と指摘。患者は住民の署名運動によって、和歌山県新宮市の透析施設の中止撤回や徳島県の徳島病院の移転統合の見直しが実現したことも紹介し、「署名にたくされた町民の思いを受け止め、透析の継続と医療スタッフの確保、病床の存続に全力をあげてほしい」と訴えました。

 愛腎協の安田明義副会長は「町民に説明もせず、一方的な話では、今後どうなるのか不安。患者の命と家族の暮らしに直結した問題」と強調。元看護師の女性は「スタッフ不足だと言うが、町はセンターで何人働いているのかも把握していない。患者だけじゃなく、一人ひとりの命の問題だと認識してほしい」と話しました。

 村上町長は、「多くの署名はしっかりと受け止めたい」と述べる一方で、「透析を将来に向けて安全に実施することが困難であり、今の中止はやむを得ない。理解してほしい」と答え、冷たい対応でした。

(12月7日 しんぶん赤旗)