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三菱勤労挺身隊・徴用工訴訟 被害者に寄り添う

挺身隊・徴用工問題についての講演を聞いて討論を深めました=10月19日、愛知県蒲郡市

 日韓対立問題を考える講演・討論会「三菱勤労挺身(ていしん)隊訴訟から徴用工訴訟へ」と題する講演・討論会(自由法曹団主催)が10月19日に愛知県蒲郡市で開かれました。被害者に寄り添ってきた3氏の講演を紹介します。

■ 「個人の請求権はある」和解解決は可能

 名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟の弁護団事務局長、岩月浩二弁護士は、徴用工・勤労挺身隊の国内訴訟について報告。「事態を紛糾させ、日韓関係を『戦後最悪』にしたのは日本政府だ」と強調しました。

 戦時中、朝鮮から名古屋市内の三菱軍需工場に連行され、強制労働させられた韓国人女性が日本政府と三菱重工業を訴えた訴訟は、2008年11月の最高裁判決で敗訴が確定しています。しかし、名古屋高裁は、強制連行、強制労働の不法行為を認め、「個人の尊厳を否定し、正義・公平に著しく反する不法行為」と断じました。

 岩月氏は、各地の裁判で大半は敗訴したものの一部で勝訴する中、「日本政府が日韓請求権協定などの国家間合意で解決ずみだと主張し始めた」と指摘。しかし、「日韓請求権協定」で韓国に支払われた5億㌦は、経済協力資金であり、被害賠償には支払われていないと述べ、「個人の請求権は消滅していない」との認識が重要だと強調しました。中国人被害者については、加害企業との和解解決が行われており、韓国でも解決をはかることは可能だと話しました。

岩月浩二さん

■ 運動を続け三菱と協議「細いが強いパイプ」

 名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟を支援する会の共同代表、高橋信氏(県平和委員会理事長)は、朝鮮人強制動員問題と関わってきた33年半の取り組みを紹介しました。

 高橋氏は、1985年に県立熱田高校に転勤し、86年2月に「愛知県朝鮮人歴史調査班」の立ち上げに参加。三菱重工から手書きの殉職者名簿を借りることができ、「これがのちに裁判で有力な証拠となった」と語りました。

 2007年7月の名古屋高裁判決後に始めた金曜行動(10月18日で489回)を続けてきたことが、三菱との協議、韓国の「勤労挺身隊ハルモニとともにする市民の会」の結成につながったと強調。「三菱との協議は物別れに終わったが、今も要請には真摯な対応を取るなど、『細いが強いパイプ』がある」と述べました。

高橋信さん

■ 日本でまいた種 韓国で花開いた大法院判決

 韓国の崔鳳泰(チェ・ポンテ)弁護士(三菱重工業・日本製鉄強制徴用被害者損害賠償請求訴訟代理人)は、日本企業に賠償を命じた原告勝訴の韓国大法院判決(18年)の意味と今後の課題について報告しました。

 崔氏は、「韓国大法院判決は、日本でまいた種が韓国の法廷で花開いたものだ」と述べ、「日本の弁護士の依頼で始まった訴訟で、法的論理も大部分が日本の弁護士たちの書類に依拠したものだった」と強調。「東アジアの被害者たちに希望を抱かせたものだ」と語りました。

 判決後、日本では、当時の河野太郎外相まで韓国人被害者の個人請求権の存在を求めているのに、安倍首相らが「国際法違反」「約束違反」というフレームで韓国政府を攻撃し、さらに日本のマスコミの付和雷同的な態度により、健全な世論形成が妨げられていると指摘。一方、韓国でも、一部保守メディアが韓国側責任論を掲げ、大法院判決を攻撃するなど、深刻な世論の分裂が起きていると述べました。

 その上で、解決には「両国の法治主義、民主主義の拡張」が重要になると述べ、人道主義・現実主義・未来志向の原則を忘れてならないと主張しました。

 討論では、「被害者を蚊帳の外においたまま、国家間の政治的対立に明け暮れる姿勢は改めるべきだ」「日韓関係改善には、徴用工・勤労挺身隊問題の解決は避けて通れない。日本企業は問題解決にむけ協議を開始すべきだ」との意見がだされました。

崔鳳泰さん

(11月3日 しんぶん赤旗)