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ユニチカ跡地住民訴訟 市民の財産勝手に売却 市長があっさり〝OK〟

宅地化工事が進むユニチカ豊橋工場跡地=愛知県豊橋市

 愛知県豊橋市から無償提供された土地をユニチカが返還せず売却したのは不当だと訴えるユニチカ跡地住民訴訟。一審で住民側が全面勝訴し、二審で一部後退したものの非を認めさせました。舞台は最高裁に移っています。

 原告団の宮入興一団長は、「市民の財産を勝手に売却した暴挙に住民が立ち上がったものです。住民訴訟では住民側が全面勝訴するのは極めてまれな中、一審は画期的な判決でした」と話します。

■ 返すはずが…

 豊橋市が1951年に旧軍用地(27万㎡)の利用を考え、ユニチカの前身会社(大日本紡績=当時)を誘致し、土地を無償提供したことが発端です。市とユニチカが取り交わした契約書には「将来、使用する計画を放棄した部分は、市に返還する」(12条)とありました。

 06年9月には、当時の早川勝市長が「まったく違う企業が来たときに」「市としてはどうぞお返しくださいという話になる」と答弁するなど、返還義務があることを認識していました。

 ユニチカも返還義務を認識していたのか、工場を閉鎖する前、佐原光一市長に「4項目文書」を送りつけ、そのあと市長と面談しました。それをうけ、ユニチカが2015年、土地を返還せず、積水ハウスに63億円で売却しました。

 ユニチカの工場撤退、土地売却が、市民も市議会も知らないところで進められ、市長がそれを容認したことに、市民は「民主主義を踏みにじる暴挙だ」と怒りの声をあげました。住民らは、市長がユニチカに売却代金を請求すべきだと、住民監査請求をしましたが、翌月に棄却されました。

■ 主張コロコロ

 16年8月、住民130人が「市民の財産を勝手に売却した」として、佐原市長に対し、売却代金63億円をユニチカに請求するよう、名古屋地裁に提訴しました。地裁判決(18年2月)は、原告団の主張を全面的に認め、市に63億円の損害賠償請求を命じました。

 ところが佐原市長は、記者会見で「ユニチカに差し上げたもの。返してくれとは言えない」と発言。市とユニチカが控訴しました。

 名古屋高裁は今年7月、あれこれと言い分を変える市とユニチカの主張をほぼ全面的に否定。その一方、地裁判決の一部を変更し、ユニチカが返還義務を負っていたのは一部の土地だとして、21億円の損害賠償を請求するよう命じました。賠償額減額の理由は「ユニチカへの影響が極めて大きい」としています。

 日本共産党豊橋市議団は、当時の契約書をもとに一方的な売却の問題点を明らかにしてきました。売却額が坪7・7万円という破格の安さであることも指摘し、63億円以上の価値があった「市民の財産」を手放したことも追及。市の上告は「市民の代表としての市長の役割に背くもの」と批判しています。

 土地は、すでに住宅地として工事が始まっています。再開発による周辺環境の悪化も懸念されています。原告の一人は力を込めて言います。「市民無視、議会軽視は、主権者として、地方自治のあり方から考えても許しがたい。市民の意思を最後まで示したい」

(8月22日 しんぶん赤旗)