河村たかし名古屋市長が強引にすすめる2022年12月までの名古屋城天守閣の木造復元計画。文化庁から原天守の解体許可すらでず、深刻なゆきづまりをみせています。
6月市議会に河村市長は、天守閣復元に使用する木材の保管・加工する施設の設置予算約3億円余(2カ年計画)を提案しましたが、撤回しました。
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天守閣解体待った
文化庁が6月21日の文化審議会で、市が申請していた現天守の解体許可を審議すらしなかったからです。市担当者は「22年の完成は難しく、議案の取り下げを検討する」と答弁。河村市長も「いったん延期する趣旨で、議案を取り下げる」と撤回。それでも河村市長は7月30日に文化庁に出向き、解体許可を早期に出すよう要請しています。
一方、有識者でつくる石垣部会は「石垣や地下遺構の調査がまだ行われておらず、現況が掌握できていない中での解体工事計画で『石垣への影響が軽微』との結論は承服できない。解体を進めることは容認できない」と意見表明しています。
名古屋城の天守閣は戦時中に焼失し、1959年に鉄筋コンクリートで再建されました。50年以上が経過し、石垣の変形やコンクリートの劣化など耐震補強が必要になっています。
鉄筋コンクリート再建時に募金をした男性(78)は「今の天守閣は市民の平和の願いを込めて建設したもの。とりあえず耐震改修して、木造化は市民の声を聞いて判断すべき」と話します。
稚拙な木造化は市民の賛同を得られていません。市が16年5月に行った2万人アンケートでは、市長が提案する「2020年7月までに木造復元」は21・5%で最下位、「2020年7月にとらわれず木造復元」40・6%、「現天守閣の耐震改修工事」26・3%で、市長提案に反対の声が3倍以上です。
河村市長は2015年9月の市議会で「木造復元を東京五輪(20年7月)までにやりたい」と調査費を盛り込んだときも、市民や議員から「意見を聞くこともなく復元を強行するのは市民無視だ」「工期日程に無理がある」の批判が続出。完成時期を22年12月までとせざるを得ませんでした。
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過大な入場予測
河村市長は、17年4月の市長選で4選し「木造化の賛同を得た」として、昨年5月に天守閣の入場を禁止。木造復元のための木材を調達し、そのうえ保管庫の設置工事までしようとしていたのです。
木造復元の建設費は約500億円。市は「建設費は入場料収入でまかなう」とし、入場者数を360万~400万人(完成から50年間)と見込んでいますが、最近の入場者は毎年200万人前後で、過大な入場予測です。「入場者が予測を下まわったら税金の投入もあるのではないか」「人件費や資材が高くなり建設費の増大が予想される」などの意見が続出しました。
バリアフリー化についても、河村市長は「江戸期の姿に再現する」とエレベーター設置を拒否。障害者団体役員の女性(67)は「市長は代わりに新技術を示しているが実現するかは不明。障害者だけでなく、足腰の弱い高齢者や小さな子どもは来るなと言うに等しい」と話しています。
日本共産党市議団は、当初から「拙速な木造化は市民との矛盾を広げる」として批判。昨年秋の市政アンケートには1万2千人を超える市民から回答があり、22年木造化の見直しを求める声が6割で、22年木造化を求める声の2倍でした。
江上博之幹事長は「22年木造化計画は撤回し、事業を中止して、市民の声を聞くべきです。現天守閣の耐震化、博物館機能充実での見直しを提案しています。いまやるべきは石垣の保全です。現天守閣の解体は絶対許さない立場でがんばります」と話しています。
(8月3日 しんぶん赤旗)