ニュース

奨学金返還に不安 利用減少 バイトで収入確保

奨学金問題でトークセッションする(正面左から)大内、鴨田両氏=2日、名古屋市港区

 「学生の声をカタチに」―。「愛知県学費と奨学金を考える会」が2日、名古屋市港区で開いた集会で、「奨学金アンケートから考える私たちの未来」について報告しました。学生の奨学金返還への不安が浮き彫りになりました。

アンケート報告 名古屋で集会

 「考える会」は、2012年に「だれもが学べる社会」の実現をめざして設立され、「有利子奨学金の無利子化」「給付型奨学金の導入」などを掲げて活動してきました。14年には、延滞金賦課率が年10%から5%に、返還期限猶予上限年数が5年から10年に改善され、17年には給付型奨学金が導入されました。

 報告した女子学生は、「この間、奨学金制度は驚くほど変化してきました。では、いまの学生の現状はどうか、奨学金アンケートを通して見えてきたことを報告します」と述べました。

 アンケートは、愛知県を中心に全国の大学生(19~20歳)が対象です。18年10月から始め、この日までに寄せられた回答は610人分。今後も継続します。13年に実施したアンケート回答は3034人分です。

 質問項目は、奨学金の利用有無(種類、返還月額・年数、保証制度など)や居住地、家族構成、アルバイトなど24項目。報告では、5年前との比較も行われました。

 回答者の奨学金利用率(24・8%)が13年(35・5%)より減少し、バイトを「している」学生は87%で、年々上昇していると報告。「奨学金制度を必要とする学生が減ったのではなく、返済の不安から、利用せずにバイトの時間を増やしているのでは」と話し、奨学金を借りたら「返還できるか自信がない」「安定した仕事につけるか保証がない」と考える学生の声を紹介しました。

 世帯年収が減少するなかで、家族全体で働かなければ、生活できない経済状況も指摘。「お金がないから進学をあきらめる、返済額を下げるためにバイトを過度にする、奨学金制度に問題があり、学生を取り巻く現状に大きな問題がある。経済格差が教育格差になってはいけないと思います。日本の学費や奨学金の現状を広く理解してもらうために、声を発信しつづけていきたい」と話しました。

 この日は、奨学金問題対策全国会議事務局次長の鴨田譲弁護士の講演、会相談役の大内裕和中京大学教授とのトークセッションも行われました。

 鴨田氏は、「世界と比べ日本の学費は高すぎる。国が高等教育の予算を増やさなければ、格差は広がり、貧困の連鎖につながる。柔軟な返済制度が必要。悩みは一人で抱え込まず、すぐ相談してほしい」と話しました。

 大内氏は「奨学金問題は親が子どもを経済的に支えられない貧困の問題でもあり、日本の政治問題。給付型奨学金を消費税増税分で賄うのでなく、税を応能負担に切り替えれば財源はうまれる」と語りました。

(2月8日 しんぶん赤旗)