「入園を希望しても入れない」―。名古屋市では、障害をもつ子どもが安心して通える地域療育センター・児童発達支援センターが少ないことから、悲痛な声があがっています。
名古屋市は保育園の待機児はゼロと発表していますが、障害児が通う施設は含まれていません。地域療育センターにはゼロ歳から入園できますが、定員が少なく、年齢の高い障害児を優先するため、2歳児未満はほとんど入園できません。
名古屋市内には、就学前の障害児が通う児童発達支援センターと診療所などを併設する地域療育センターが5カ所(民間委託が2カ所)あります。西部地域療育センターが1993年に建設され、南部地域(96年)、北部地域(2003年)、中央(10年)、東部地域(14年)と続きました。
障害児通園施設の父母らが「地域療育センターの早期建設を実現する会」を結成(1990年11月)し、署名活動や名古屋市との交渉を粘り強く進めてきた成果です。
「地域療育センターの早期建設を実現する会」は今月7日、名古屋市内で第29回総会を開きました。寺島由美子会長は「当初、国が決めた就学前教育無償化に支援センターは対象外でした。私たちの運動で無償化の対象になりました。すべての子どもが豊かな発達ができるよう、補助金削減や民営化に反対し、新センター建設の運動に取り組みましょう」と述べました。
■ 補助金を削減
名古屋市は北部療育センター(西区)を民営化する方針を打ち出し、保護者から不安の声が出されています。
市は財政難を理由に、民間施設への補助金制度を15年度から見直し、削減しました。出席人数に応じて支給してきたのに、みなし出席率を設け補助金を固定化。それより少ないと施設は赤字になります。その出席率も15年度は82%、16年度85%、17・18年度88%と上げています。体調が崩れやすい子や、障害の重い子が多いため市が設定した出席率の確保は困難です。15年度の実際の出席率は77%でした。
総会で、東部地域療育センター(千種区)を運営する役員は「出席率が確保できず補助金をカットされ、昨年度は500万円の赤字になった」と話しました。父母からも「子どもの体調が悪くても補助金がカットされるので体調が悪い子どもを休ませるのを躊躇する」との声があがっています。
■ 声を届けよう
南部地域療育センター(南区)に子どもを通わせる保護者からは「人口が急増する緑区では待機児が多く、緑区に新しいセンターをつくってほしい」との要望が出されました。「スクールバスのバス停が遠く、雨の日は障害児を抱えてバス停に行くのは大変。近くにセンターがほしい」、「医師や療法士が不足して予約待ち。市は医師や療法士を増やして」などの発言もありました。
あいち障害者センター理事長の近藤直子・日本福祉大学名誉教授が「笑顔広がる子育てと療育」と題して講演。「問題の根源は国の、介護や障害施策の不十分さがあり、国の施策を変える運動が必要。同時に『2020子ども子育て支援計画』を検討している名古屋市に働きかけ、発達支援を必要とする親子が暮らせるよう、私たちの声を届けよう」と強調しました。
(7月28日 しんぶん赤旗)