愛知県美浜町で、民家の近くに住民への説明もなしに突然、小型風力発電の建設工事が行われたことから、住民に困惑と怒りが広がっています。
奥田地区に住む谷口義則さん(名城大学准教授)は「4月中ごろ、家から100㍍ほどの距離で突然工事が始まり、それが風力発電だと知ったのは数日たってから。住民には何の説明もなかった」と怒ります。
■ 民家25メートル
事業者は、東京に本社を置く小型風力発電会社です。最大高25㍍、定格電力19・8㌔㍗の風力発電機を奥田地区で2カ所設置する予定。すでに基礎工事が終わり、支柱の建設が始まっています。最も近い民家は25㍍しか離れていません。
住民が再三求めてきた説明会が5月30日夜、ようやく行われました。会場には入りきれないほどの住民260人以上が詰めかけました。住民らは事業者に「寝耳に水の工事だ」、「説明会が遅すぎる。工事を始める前にやるべきじゃないか」と口ぐちに抗議しました。
事業者側が「大きなお金も動いているので、事業は止められない」と話したことから、住民らは「既成事実をつくっておいて、勝手すぎる」。いっそう怒りが広がりました。
谷口さんらは、この日までに集めた建設中止を求める署名2323人分を事業者に手渡しました。
小型風力発電とは、設置の高さ30㍍未満、風車の直径16㍍以下、出力規模20㌔㍗未満で、大型風力発電のような環境アセスメントも必要なく、工事計画の届け出や安全管理検査などの法的規制もほとんどありません。売電価格も高く、優遇されていたため、投資目的の業者が急増しました。そのため、全国各地で規制が始まっています。
経済産業省によれば、美浜町内だけで、すでに46件(2017年9月)が認定されています。しかし、美浜町には規制する条例はありません。
■ 地域一丸
谷口さんら近隣住民は5月2日に「美浜町の風力。太陽光発電を考える会」を結成し、建設工事の中止を訴えてきました。18日夜には町民らに緊急学習会を呼びかけたところ、役場職員も含め、150人以上が参加し、立ち見が出るほど、強い関心が寄せられました。
各地で騒音や低周波などの健康被害が起きているからです。学習会では、同規模の風車がある西尾市一色町に行った、近隣住民の聞き取り調査の報告がされました。「家の中で耳栓を使っている」「重低音、低周波は壁では防げず、振動を常に感じる」など深刻な実態でした。
火災やプロペラ落下、東海などの事故も各地で多発しています。北海道や青森県では、住宅から300㍍以上離すなどの規制をする自治体もあります。
考える会は、町議会に「発電所の設置を認めない」「住宅から300㍍離すなど実効性のある条例制定」を求める請願書を提出。全会派の議員が紹介議員になり、国に対し法整備を求める意見書も提案される予定です。
会事務局の羽根克明さんは「行政、住民が一丸となって反対の声をあげることが重要。社会問題化して、止めなければ、知多半島全体に広がる可能性がある。まず事実を周りの人に知らせてほしい」と呼びかけています。
(6月1日 しんぶん赤旗)