名古屋市立若宮商業高校(天白区)が閉校から一転、存続に―。名古屋市教育委員会が10日、市議会教育子ども委員会で、同校の閉校案を見直し、新たに設置する高等特別支援学校と併設し、存続する方針を明らかにしました。保護者や学校関係者から喜びの声があがっています。
若宮商業高校は、1963年に開校。総合ビジネス科、情報ビジネス科、会計ビジネス科の3科があり、約700人の生徒が学んでいます。
市教委は昨年8月、保護者や生徒ら関係者に説明することなく、少子化や老朽化、ニーズの減少などを理由に、2020年度から生徒募集をやめ、22年3月末に閉校する計画を発表。跡地には、高等特別支援学校の創設など公的利用の検討を提案しました。
■ 突然の発表怒り
突然の閉校発表に、保護者や生徒、卒業生、地域の住民から不安や怒りの声が続出しました。同校は定員割れしておらず、企業から求人も多くあります。
保護者らは「若宮を守る会」を結成し、存続を求める署名を開始。多くの地元企業の激励を受けながら、街頭や同窓会などで協力を訴え、2月には4万8317人分の署名を河村たかし市長に提出しました。
10日の市議会教育子ども委員会で、市教委は、各方面から存続を求める声が多数寄せられ、閉校方針を見直したことを述べ、高等特別支援学校との併設で「障害のある人と日常的に交流できることをいかし、新しい観点の商業教育をめざしたい」と説明しました。杉崎正美教育長は、混乱をまねいたことを陳謝しました。
■ 共産党も追及し
日本共産党の青木ともこ議員は、学校OBや保護者の声を紹介し、「学校の存廃をニーズで決めるのは、市場原理を教育現場に持ち込むやり方で許せない。生徒一人ひとりにあった学びの場をめざし、教育を守る立場で考えてほしい」。さいとう愛子議員は「短期に多くの署名が集まっている。この声を受け止め、子どもたちの多様な要求や意見をしっかりと聞いてほしい」と述べました。
傍聴した猪飼力也さん(46)は、「3年生の娘は学校が楽しそうで、学習意欲も高まった。PTAに何の相談もなく、突然閉校を決めたことに疑問と怒りを感じた。この問題をきっかけに、若宮をアピールしていきたい」と話しました。
日本共産党市議団は、当初から閉校方針に反対し、市長にも存続を要請してきました。市議会でもたびたび取り上げ、「若宮商業高校は、中学生の進路第1希望者が県内の商業科でトップ。制服をリニューアルしたばかりの人気校をなぜ閉校するのか」「市の保有施設を10%削減するという『市設建築物再編の方針』に沿って閉校していいのか」と追及し、「保護者や生徒、卒業生の意見を聞くべきだ」と求めていました。
名古屋市立高校教員組合の石川哲書記長は「乱暴な進め方で当事者がかやの外だった。定員割れもなく、地元企業からの信頼もある高校。現場の教員からも生徒がショックを受けていることを聞きました。閉校に反対する私たちの声が届き、非常にうれしい」と語りました。
(5月12日 しんぶん赤旗)