中京大の大内裕和教授と前文科省事務次官の前川喜平氏が名古屋市内で5日に対談しました。会場には760人が訪れ、学費負担の軽減や子どもの貧困など、2人の話に耳を傾けました。
主催は奨学金問題に取り組む大内教授が代表を務める「若者の未来と人権を考える会」。
対談に先立って公園した前川氏は、ブラック企業で過酷な労働を強いられる若者が多い現状について、労働権など憲法で保障された基本的人権への十分な知識がないまま社会に出ていることが原因だと述べ、基本的人権などを「中学、高校でもっと学ばせないといけない」と語りました。
対談では、名古屋市立中学校で前川氏が行った授業に対し文科省が圧力をかけた問題について、大内氏は自民党所属国会議員の介入をあげ、「不当な支配に屈することなくとある教育基本法に明確に違反する」と批判。前川氏は「日本の学校に起こったこととして非常に重大な問題。文部科学省の教育行政をやる立場として、やってはいけない一線だったと思うがそれを踏み越えた。残念で情けない」と述べました。
大内氏は、子どもの7人に1人が貧困状態であると指摘し、子どもの貧困と教育の機会均等について語りました。事実上のローンである日本の奨学金を改善する動きに取り組んできたことを紹介。大学のこう学費の背景に、日本の教育予算が少ないことをあげ、「これでは生まれた家によって受けられる教育の格差がますます拡大してしまう」と述べました。
前川氏は、高等教育への進学率が全体で8割を超えているのに、児童養護施設出身者では2割、生活保護世帯では3割にとどまることを指摘し、「20歳くらいまでの教育は無償化の方向を目指すべきだ」と述べました。
さらに前川氏は「日本の社会全体が格差拡大に向かっている。格差拡大を是正するためにも、子どもの教育の機会均等を実質的に保障しなければならない」と強調。「人間関係の豊かさ」と子どもたちに用意することも大事だと語りました。
大内氏は、不祥事が相次ぎながらも若い世代が安倍政権を支持している背景に急速な経済情勢の悪化があるとし、「若い人の絶望を救うような政策を提起しないといけない」と述べました。
(5月11日 しんぶん赤旗)