愛知県内の研究者や保育団体などでつくる「あいち保育労働実態調査プロジェクト」が9日、名古屋市内の保育士の労働実態調査の結果を発表し、時間外労働が常態化していることが明らかになりました。調査、昨年11月~今年2月まで、愛知県内の保育施設で働く労働者を対象に初めてアンケート調査を実施。一地域の民間で行う保育労働実態調査としては全国最大規模です。
蓑輪明子・名城大学助教と中村強士・日本福祉大学准教授が、名古屋品役所で会見しました。「国の保育士対策は賃金に偏り、長時間労働や業務量、保育の質の保障などに十分な対策が行われていない。保育現場の労働実態や労働・生活に関する意識を把握し、処遇改善に必要な施策を立案したい」と、調査の動機を語りました。
今回発表したのは、名古屋市内の認可保育所の正規職員約4割にあたる2660人分の速報値です。
蓑輪氏は「国の職員配置基準が低すぎるため、時間外労働が常態化していることが明らかになった。賃金引き上げとともに、人員配置増による業務軽減が効果的な保育士確保策となり、待機児童解消にもつながる」と話しました。
労働時間の調査では、準備や保育記録、お便り帳記入などで月時間外労働は平均で16・6時間。うち13時間は超勤手当が支払われず、サービス残業でした。40時間以上と答えた人が9・6%にのぼり、過労死ライン80時間を超える最長135時間と答えた人も。さらに仕事が終わらず、そのうえで、持ち帰り残業している人が78%もいました。
蓑輪氏は「勤務時間の大部分が子どもと接する時間であり、保育に必要な事務作業を時間外にしなければ、仕事が終わらない実態だ」と説明しました。
賃金に対する不満は62・4%で、若年層ほど不満を持つ傾向にありました。理由として「仕事に見合っていない」、「他産業に比べて低い」、「残業代が支払われない」が上位にのぼっていました。
一方、子どもと過ごす楽しさを「感じる」人は95・7%にのぼり、高いやりがいを感じている人が多いのも明らかになりました。しかし、「今の職場で今の仕事を続けたい」50%、「迷っている」24・2%で、やりがいが就業継続意欲に必ずしも結びついていません。
蓑輪氏は「現在の待機児童対策は保育職員の生活と健康の犠牲のもとに成り立っている。国、自治体が正確な労働実態を把握し、業務量にあった人員配置をするよう強く求める」。中村氏は「過酷な労働実態は保育の質に関わる。保育士不足の抜本的対策を求めていきたい」と話しました。
同プロジェクトは今後、名古屋市内の非正規、県内全体の認可、無認可施設の労働実態も順次発表します。
(3月11日 しんぶん赤旗)