「おなかも、心も満たされる居場所」「アットホームな楽しい食堂」―。名古屋市内で「子ども食堂」が急速に広がっています。どんな工夫をしているのか、どんな支援を求めているのか名古屋市社会福祉協議会が初めて「子ども食堂フォーラム」(16日、千種区)で開催しました。
会場には子ども食堂の運営者やボランティア、これから始めたいひとなど満場の350人以上が参加しました。
■ 市内に35カ所
愛知県内の子ども食堂は2015年から始まり、17年6月には行政と地域の連携をすすめようと「あいち子ども食堂ネットワーク」が結成されました。その後も増え続け、ネットワークの調べ(今年1月15日)では県内66カ所、名古屋市内35カ所が確認されています。
名古屋市は今年度「子ども食堂推進事業」として150万円を市社協に補助。その一部を使い開催しました。
市社協の佐藤良喜副会長があいさつし、「最近は、貧困や孤食の子どもたちに限定せず、地域全体が安心して過ごせる居場所になりつつある。実践者の総意工夫から学び、考える機会にしたい」と話しました。
報告したのは、北区の「わいわい子ども食堂」の杉崎伊津子さん、天白区の「子ども食堂にっこにこ」の黒田昭子さんです。
杉崎さんは、15年11月から月1回定期開催し、「地域まるごとの子育て支援」をめざして保育園や弁護士事務所、医療生協と協力していると述べ、「誰でも歓迎、子ども1人でも入れる食堂がコンセプト」で、毎回150食程度を用意。少額でも持ってこられない子どもがいることから、子どもは無料に。参加者は小学生が60~70人、おとな30人前後、ボランティア30人前後です。
杉崎さんは、資金や食材の提供を呼びかけるネットワークをつくっていることも紹介。悩みは「参加者が多すぎてもう限界がきている」こと。今後は「小学校や地域自治会、民生委員との連携が課題。誰でも歓迎の居場所が小学校区ごとにあったらうれしい」と話しました。
■ 食べる楽しさ
黒田さんは、16年4月から自宅の一室を解放して月1回開催していると報告。「『とにかく始めること』が大事。貧困から抜け出すためには、子どもたちが色んな人と交流し、平等な教育の機会が必要だ」と強調。「スタッフには町内会長経験者もいて、地域の支援もある。商店やコミセン、学童にチラシを配布し、毎回30人程度が参加。『鍋をつつく』ことを初めて知った子もいた。みんなでご飯を食べることはおいしい、楽しいと伝えていきたい」と語りました。
生活困窮者支援を長年続ける湯浅誠法政大学教授が「子ども食堂のすすめ」と題して講演。「子どもの貧困は目に見えない。まず、子どもたちが地域とつながれる場所が必要だ」と述べ、アンケート調査に寄せられた高校生たちの悲痛な声を紹介しました。「生まれてきたんだから、腹いっぱい食べたい」、「明日食べるものにも困っている」、「友達といるとお金がかかるから、いつも1人でいる」、「ガス、電気代が払えず、水のシャワーを浴びている」。涙を浮かべる参加者もいました。
子ども食堂のボランティアに参加する大学1年の女子学生は「子どもにも大人にも、身近に食堂があること、誰でも参加できることをもっと知ってほしい」。港区の宮澤京子さんは「保育士や指導員、弁護士などが中心になって食堂運営しています。みんなで一緒にわいわいご飯を食べるだけでいいんだなって思いました。そこから色んな問題が見えてくるんじゃないかと思います」と語りました。
(2月24日 しんぶん赤旗)