ドキュメンタリー映画「不思議なクニの憲法」の松井久子監督と憲法学者の愛敬浩二・名古屋大学大学院教授が1日、名古屋市内で対談し、憲法を縦横に語り合いました。名古屋法律事務所友の会の第35回総会の記念企画で150人が参加しました。
松井氏はドイツの大学でおこなった「不思議なクニの憲法」上映会について報告しました。映画を観た学生50人に「戦争放棄をうたった日本国憲法を守るべきか、変えるべきか」を聞いたら、「守ってほしい」が30人。「変えるべき」が3人だったと述べ、中国人留学生が話した『日本の憲法改正に、中国の若者が関心を寄せている。改正されると中日関係の悪化が懸念される。僕は二度と日本と戦争したくない』の意見が印象に残りました」と語りました。
愛敬氏は憲法9条が制定された当時の国際的、政治的背景、現在の日本と米中韓との関係のなかで憲法9条の役割、安倍首相をはじめとする改憲の動きを詳細に説明。「憲法9条はまだ変えられていない。戦争法に大きな反対運動も起こった。運動してきたからこそまだ憲法9条がることに自信を持ち運動すていく」と強調しました。
司会の樽井直樹弁護士が、松井氏に「劇場映画をつくってきた監督がドキュメンタリー映画を撮った理由は」と尋ねました。松井氏は「安倍政権が憲法を変えようすることに危機感を覚え、自分の得意な分野でやろうと思ったから。映画を観て、『改憲はちょっとおかしい』と思っていただければいい」と語りました。
安倍首相の9条3項加憲発言について、愛敬氏は「安倍首相は集団的自衛権など解釈改憲で9条を崩してきた。あと残るのは自衛隊を9条に明記すること。改憲勢力が国会で3分の2以上あるから、改憲発議をする機会と思っている」と語りました。
若者の政治離れなどについては、松井氏は「私たちの自由と権利は主権者である国民の不断の努力で守られている。映画を見てすばらしい憲法だと思ったら、自分の周りの人に伝えてほしい」。愛敬氏は「東日本大震災・福島原発事故以降、若者は環境や原発問題を通じて政治を考えるようになっている。憲法9条改憲も自分の生活がどう変わるか考えてほしいです」と語りました。
(7月5日 しんぶん赤旗)