「教育に2カ月間もの空白はありえない」―。名古屋市内の公立小中学校で働く臨時教職員や保護者らは、名古屋市に「2カ月間の再雇用禁止制度」の廃止を求めて運動しています。
現在、名古屋市には臨時教員が約2000人(全教員数の2割)います。うち常勤の臨時教員は約1000人。その多くが正規教員と同様にクラス担任やクラブ指導をおこなっています。
■ 市の規定が適用
これまでは県職員扱いのため、再雇用禁止期間が1日で「3月30日退職、4月1日再雇用」とされ、同じ学校にも勤務できました。ところが、今年4月から名古屋市に権限が移譲されることになり、市の規定が適用されるため、2カ月間の失業状態が生まれることになります。ほかの政令市をみても異常な規定です。多くは禁止期間がないか、1日、で、1カ月だった新潟市は短縮を検討中です。
小学校の常勤臨時教員を3年間務めた男性は「教育には継続性が必要だ」と強調し、「これまで1日の空白はあったが、同じ学校に勤務できた。てんかん発作などによる不慮の事故を防ぐためにも児童の病状などを掌握している教員が必要。1年ごとに担任が変わると、こどもがかわいそうだ」と語ります。
中学校の正規教員の男性は「校長や教頭も不安を口にしている。今でも教員不足なのに、2カ月間どうするか。教頭らが授業を行えば、学校運営が混乱するだろうし…」と話します。
■ 教員不足に拍車
このままでは名古屋市の教員不足に拍車がかかります。20第の男性臨時教員は「2か月間も失業状態になれば生活が大変。名古屋市以外の近隣地自体で臨時教員をするか、教員を辞めて他の職に就くか迷っている」と語ります。
小学校に娘を通わせている母親は、「先生が足りず、始業式で担任が発表できる、担任が決まったのは2週間後。それなのに2カ月間も担任が決まらないとなれば、子どもがあまりにもかわいそう」と言います。
昨年12月23日、臨時教員や父母、教育関係者ら約100人が集まって制度廃止を求める集会を開き、「教育に『空白』はない!市民の会」を結成しました。同会の上村和範事務局長は「制度廃止を求め、河村たかし市長宛ての署名運動を始めた。3月上旬までに5万人目標で取り組む。市教育委員会などとも交渉を予定している」と言います。
同会共同代表の渥美雅康弁護士は「今の制度では名古屋市で働いている臨時教員が市外の学校で働くようになる。学校現場の負担が増し、教員が短期で変わると教育の質の低下の問題がでてくる」と指摘します。
長年にわたり臨時教員を務めた日本共産党の高橋ゆうすけ市議は語ります。「日々、こどもたちと向き合い、周りの教員とも協力して誠実に仕事を続けている臨時教員が、このままではいなくなってしまうのではないか。子どもたちの教育環境を守るためにも、臨時教員の待遇改善は急務だ。市議会内外で運動を広げ、制度廃止へ全力をあげます」