名古屋市立小学校では長年にわたり直営自校式の給食を実施してきましたが、今年4月から3校で給食調理業務が民間委託され、父母や学校関係者から不安の声があがっています。
名古屋市が民間委託を決めたのは昨年末。理由は人員削減と経費削減。国の指導で今年度から3~5年かけて給食調理員など16業種で、退職した正規の職員を補充しない方針です。
父母の反対を押し切って民間委託が実施されたのは、西山(名東区)、大清水(緑区)、荒子(中川区)の3校。1000食以上の大規模校が対象となりました。
学校給食調理員や教員、父母らでつくる「なごやの学校給食をよりよくする会」は1月半ばから民間委託反対の請願署名に取り組み、2万9057人の署名を2月議会に提出。民間委託は止められませんでしたが、教育委員会に当初予定していなかった保護者への説明会、ためし調理や試食会を3校すべてで実施させ、市長との面談も実現しました。
■ 全校で異物混入
「安心で安全な給食は変わらない」と言っていたのに、委託された途端、3校とも、ビニール片や虫の異物混入などがあり、5月の衛生検査で調理器具から異常値が検出されました。栄養教諭や栄養士を増員配置したにも関わらず発生しています。
教育委員会は、市議会で異物混入事故があったことを認め、「これまでの直営校より件数が多い。衛生管理について業者に是正指導した」と答えました。
それなのに、教育委員会は「民間委託の検証結果を踏まえ、正規職員の不足数に応じて民間委託を拡大する」と表明しています。
「よりよくする会」は8月末に集会を開き、民間委託の拡大計画撤廃を求める署名を広げることを確認しました。正規職員の調理員は「定期的入札で委託業者が変われば、教員や栄養教諭との連携が困難になる」、「季節によって味の濃さを変えるなどの熟練の力が発揮できない」と強調しました。
民間委託校の母親は「食材費は今まで通り市負担。委託費の大半は人件費。市の想定より業者は1000万円も安く落札した。人件費を抑えるため非正規やパートの調理員が多くなる。食の安全が守られるか心配だ」と話します。
■ 直営式復帰こそ
「ほんものの味を子どもたちに」―。名古屋市東区で9月17、18両日、調理師による小学校給食の試食会、かつお節削り体験などが開かれました。安心・安全でおいしい給食提供の大切さを市民に知ってもらおうと、給食の食材、献立、レシピのパネルを展示。訪れた人たちに小学校給食の直営自校式の大切さを訴えました。
来春小学校入学予定の保育園児と試食した井出奈菜さん(34)は「子どもは卵アレルギー。家庭と同様なアレルギー除去食を安心できる正規の調理師さんに作ってほしい」。配布された給食レシピを熱心に見ていた女性(39)は「子どもは小学5年と3年の2人。資格を持った調理師の作った献立だと安心できます」。
日本共産党市議団は、「よりよくする会」や新日本婦人県本部の民間委託撤回を求める請願署名の紹介議員になり、9月議会でも教育委員会に直営式に戻すことなどを強く求めました。
(10月8日 しんぶん赤旗)