名古屋城天守閣の木造復元を「東京五輪(2020年7月)まで」にと強引に進める河村たかし市長に対し、議会内外から「あまりに拙速だ」と批判が集中。河村市長も「東京五輪」までの完成」は断念しました。「リニア新幹線の開業予定(2027年)に間に合わせる案も浮上していますが、日本共産党は「まず耐震改修し、そのあと市民でじっくり議論を」と提案しています。
(愛知県・村上志郎)
名古屋城の天守閣は、71年前の戦争で焼失したことから、「もう二度と燃えないで」という市民の平和への思いをうけ、1959年に鉄筋コンクリートで再建されました。50年以上が過ぎ、石垣の変形やコンクリートの劣化など、耐震性の確保は急務となっています。
市は当初、耐震改修の方針でしたが、市長選で河村市長が「木造復元」を公約。「約500億円の建設費は入場料収入で賄う」とし、東京五輪までに完成するため、天守閣を今年11月に閉鎖し、来年6月に解体する計画でした。この計画が否定されたのです。
市民は、拙速な対応を批判しています。市が2014年に実施したネットモニターアンケートでは「天守閣を存続させて、耐震補強や改修などを行う」が71%あり、「天守閣を解体して、木造で復元する」は15%しかありませんでした。
■ 意見や疑問続出
市が昨年12月から実施したタウンミーティングでも「建設費や維持費を入場収入でまかなうというが、入場者が予測を下まわったら税金の投入もあるのではないか」、「市民生活が厳しいなか、多額の費用がかかる木造化をやるべきか」、「東海五輪や熊本地震の復古などで資材や人件費が高騰し、工事費の増大が予想される」の意見や疑問が続出しました。
■ 提案反対が多数
市は今年5月に行った市民アンケートでも、3択のうち、市長が提案する「2020年7月までの木造復元」は21・5%で最下位、「2020年にとらわれず木造復元」40・6%、「現天守閣の耐震改修工事」26・3%で、市長提案に反対の声が3倍を超えています。「現天守閣の耐震改修工事」の選択肢には、「概ね40年の寿命」という根拠のない不適切な注釈までつけていました。
6月市議会では、日本共産党市議団が「入場者予測は完成から50年間、毎年360万人から400万人を見込んでいる。昨年の入場者は147万人。非現実的で過大な入場予想だ。税金投入となった場合の責任は」、「先の見通しもないまま現天守閣を解体するな」と追及しました。
市の担当者も「入場者数や収支見込みを第三者機関に調査依頼し再検討する」と答弁しました。
一方で自民党市議団は、木造復元を認めたうえで、完成時期をアジア競技大会(2026年)やリニア新幹線開業予定(2027年)に合わせることを提案。河村市長も「リニア開業を目途に見直すことは市にとって大きな起爆剤になる」と賛同しています。
日本共産党の田口一登党市議団長は「自民党案の工期も10年足らずしかなく、市長案が後回しにする石垣工事から着手するもので、手順は変わっても工期が最大3年伸びるだけ。すぐに現天守閣を取り崩し、木造化を拙速にすすめる点では同じ」だと批判します。
(7月21日 しんぶん赤旗)