名古屋市に手話が飛び交うインドネパール料理店があります。「ろう者が日ごろの悩みを話せる場になっています」と説明するのは「ナンカレーハウス」経営者でネパール人のスレシュ・リサル・スナルさん(35)です。ろう者ではありません。
2011年に市内1号店、昨年は3店目を開店。スレシュさんのほか、簡単な手話のできるネパール人が各店にいることから、ろう者が気楽に訪れます。手話で話したい人が集まれるように月2回「手話の日」を設けている店もあり、大阪や東京から来る人もいます。
今月最初の「手話の日」。「こういう店はそうない」というろう者の江里口哲司さん(49)が、車で1時間かけて来店しました。スレシュさんとは開店以前からの手話仲間で、初対面の時、「なんで日本に手話のできるネパール人が」とびっくりしたといいます。
スレシュさんは子どものころから指輪などを加工するジュエリー制作が得意だったといいます。05年にネパールから来日し、豊田市でジュエリーの製作教室の先生をやるようになりました。そこにろう者で後に妻となる香苗さんがいました。手話1時間、ジュエリー2時間の教え合いが始まりました。
「手話も一つの言語です」というスレシュさん。初めは手話を頭の中で日本語やネパール語に変換していましたが、今は変換なく使っているといいます。
「声で会話するより、心の中の深いことを話しやすい」とも。手話は顔の表情も含めて表現するので心の中が表れるといいます。「だから楽しい。妻との会話力アップのためにも勉強できる『手話の日』が大事」
手話を学ぶ健聴者も来店します。香苗さんも「学びたい人が交流できる場なので、細く長く続けていけたら」と期待しました。(今村一路)
(4月23日 しんぶん赤旗)