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イラク医師平和訴え 名古屋で後援会

「03年の米の侵攻で国内が分断、これまで100万人が命を落とした」

 
 「故郷も、家も、仕事も、想い出も何もかもISに奪われた」―イラク西部のアンバル州ラマディの病院に勤務していた、アルカン・ハディ医師(41)、バッシム・ムハンマド医師(37)が名古屋市内の後援会でこう語りました。

 2人はラマディ母子病院が過激組織ISに制圧される5月末まで勤務し空爆や戦闘に巻き込まれた人らの治療を行っていました。命からがら逃げだし、NGO「セイブ・イラク・チルドレン名古屋」(SIC-N)の支援により、9月末に来日。あいち小児保健医療総合センター(愛知県大府市)などで、医療技術研修を行っています。

 2人は11月27日に開かれた後援会で、70人の参加者にイラクの医療や惨状を訴えました。SIC-Nと名古屋学院大学平和研究会の共催。

 バッシム医師は2003年のイラク戦争で、アメリカが侵攻してきたことから、国内が人種、宗派などによって分断されイラク人同士が争うようになったと語り、「これまでに100万人もの人が命を落とした。ISの支配地域からは9割の人が逃げ出した。皆さんの助けなしに、この難局は打破できない」と支援を訴えました。

 アルカン医師はアメリカ軍の劣化ウラン弾によって、結合双生児などが増えている可能性を指摘。12月に帰国し、難民キャンプなどで治療を行うとのこと。「わたしたちは平和を望んでいる。どれだけ大きな国でも、一国では平和をつくることはできない。手と手を取り合っていかなければ、平和はつくれない」と語ると会場から大きな拍手が沸き起こりました。

 SIC-Nの小野万里子代表は「テレビのニュースでは、空爆の様子が映し出されても、その爆発の下で生活していた人たちが映されることはない。空爆で問題が解決するとは思えない。」と話しました。

 名古屋学院大学の阿部太郎教授は「日本は真っ先にイラク戦争を支持した加害者の1人。今度は戦争法が強行され、自衛隊が中東に行く可能性が現実味を帯び、事態は緊迫している。『外国だから』ではなく、自分の問題として考えてほしい」と述べました。

 福井県から来た医大生の男性(33)は「イラクのような医師不足のところで、将来働きたいと思っている。今日は来てよかった」。大学1年の女性は「無関心ではいられない。ニュースではわからないことがたくさんある。途上国で教員をするために勉強中」と話しました。

(12月3日 「しんぶん赤旗」東海・北陸信越のページより)