「自然豊かな環境を壊すな」「子どもたちの健康を守ろう」―。愛知県新城市で、産業廃棄物(産廃)処理設建設に反対する市民運動が広がっています。住民らは、産廃の設置を許可するなと、大村秀章知事に迫っています。
産廃の建設予定地は、愛知県企業庁が造成した新城市南部企業団地です。周辺には宅地が立ち並び、小・中学校や保育園があります。
住民の不安続々
企業団地はもともと「製造業、物流企業」を原則に地元雇用の創設が目的でした。ところが団地に進出した企業が2010年に倒産。13年4年の競売で産廃処理業者「タナカ興業」(本社・豊橋市)が跡地を取得。同社が処分業許可申請を県環境部に提出し、県で審査中です。
タナカ興業は、県との事前協議で「商品残さ、下水道汚泥、木くずを原料に堆肥化する」としています。しかし、同社が製造・搬入した「肥料」は、約10年前、静岡県から「肥料でなく産廃」と認定され、撤去を命じられています。昨年10月には、田原市の農地から基準値の5倍のヒ素が検出されたとマスコミに報道されました。同社が隣の設楽町に産廃施設を建設しようとした時も、町民らの反対運動で断念しています。
同社や新城市が昨年開催した住民説明会では、住民から不安の声が続出。「運搬トラックが多く通るようになったら、子どもが安心して遊べない」「ヒ素など有害物資が排出されるのではないか」「豊橋市にある同社の産廃処理施設では、廃棄物や運搬トラックの悪臭がひどい」。同社からは納得のできる回答がありませんでした。
市議会を動かす
建設に反対する市民グループが次々に結成され、反対署名は3万人以上にもなり、1000人を超える反対集会・デモも行われています。市議会は、知事と企業庁に「適切な対応を求める」意見書を提出しています。
今月21日に県庁前で新城の環境を考える市民の会(山本拓哉会長)がよびかけたデモ行進が行われました。「産廃絶対反対」「環境守れ」と書いたボードや横断幕をもった人たち60人以上が参加し「県は市民の声を聞け」「県民の健康を守れ」と訴えました。「子どもの環境を守るママの会」は、子どもを含め市民から集めた1224枚の大村知事あての反対意見はがきを県職員に手渡しました。
日本共産党は市民グループと協力し、宣伝や署名、反対集会に取り組んでいます。浅尾洋平市議は13年11月に初当選して以降、毎回の議会で「新城市は人口減少が続いている。産廃処理施設進出は自然豊かな環境を破壊し、人口流出に拍車をかける。市は住民の立場に立って県に意見をいうべきだ」と繰り返し求めてきました。
昨年12月に市議会では、浅尾議員が賛成討論した「産業廃棄物処理事業許可に反対する」請願が17人中、9人の賛成で趣旨採択されました。
国会では今月19日、本村伸子、島津幸弘両衆院議員が、要請に訪れた市民の会の山本会長らに協力を約束しています。
(1月31日)