「津波が来たら、どこに逃げればいいんだ」―。名古屋市内の港湾部を一手に抱え、ゼロ?地帯が広がる港区。日本共産党後援会は、地域の防災意識向上と高台造成に向けて活動を強めています。(木薮健児)
名古屋市の南海トラフ巨大地震の被害想定によれば、ほぼ全域で震度6強以上の揺れ、液状化の可能性、津波は最大3・6?になります。人的被害は市全体で6700人、そのうち港区で2200人(うち津波1900人)と予測されています。
なかでも大手学区は深刻です。四方を海と運河に囲まれ、隣の学区に避難する橋も地震で崩れて地域が孤立する可能性も指摘されています。にもかかわらず、津波避難指定ビルの充足率はわずか9%(港区全体では65%)にすぎません。住民からは「おれらどこに逃げるんだ」「海より低くひとたまりもない」など不安の声があがっています。早急な高台の造成は、住民はもとより地元の保守系市議らも含めて共通の要望となっています。
党後援会は先月、大手学区の住民にもよびかけて、津波対策のモデルとして考えられる、静岡県袋井市の人工の丘「湊命山」を見学しました。30人近い住民が参加し、山口清明党市議も同行しました。
「湊命山」は、昨年12月に完成。海岸から1・3??の地点にあり、頂上は海抜10?、1300人の受け入れが可能です。総建設費は1億4000万円で、同等の建設費の避難タワーに比べ収容可能人数は約5倍、耐用年数も格段に長く、維持・管理も容易だといいます。
町内で老人会長をしている安井軍司さん(71)は、「大手学区では『どのみち逃げられん』とあきらめている年寄りも多く、彼らを励ますにもこういう丘を急いでつくる必要がある。住民の命を守るための施策を、名古屋市に求めていきたい」と語ります。
見学会では袋井市の?橋美博(よしひろ)党市議が説明しました。「命山」とは、江戸時代に台風による高潮で300人の犠牲者が出たことを教訓に当時の人たちが築いたもので、現在も史跡として二つが残っています。
?橋市議は、「湊命山」も住民の要望を出発点に、市議会でも一致し、市が住民と話し合って造成を決定したと話します。あと3基建設する予定です。
山口市議は、名古屋市が大型開発には熱心でも災害対策は乏しいと批判します。隣の蟹江町では、今年度から同様の「希望の丘」整備がすすめられています。「市民の防災意識を高めるには、市が住民の命を第一に考える姿勢がないといけない。大手学区をはじめ、港区には海抜4~5?の高台が複数必要。引き続き議会で求めていきたい」と語ります。
港区後援会事務局長の加能美恵子さんは、「高台造成は喫緊の課題です。大手学区では水道局の敷地や荒子川公園に造成してほしいとの具体的な要望もあがっています。今後も地域でつどいを重ねて顔の見える人間関係を築き、災害時に住民同士が連携できる街にしていきたい」と話しています。