愛知県の私立同朋高校(名古屋市中村区)で9月29日、福島県の高校生を招いたシンポジウム「Remind(リマインド)~3・11を思い出す」が開かれました。文化祭の来場者や生徒ら120人ほどが聞き入り、「なぜ原発が安全だと思わされてきたのか」、自分たちの問題として考え合いました。
招かれたのは福島県立富岡高校(富岡町)3年生の根本千亜紀さん、吉田真悠子さん。同校は原発事故で警戒区域に指定され、いわき市のサテライト校で学んでいます。
この夏休みに同朋高校の先生・生徒らが福島県へ支援に行ったとき、富岡高校の先生に「9月の文化祭で、原発事故の体験を話してくれる高校生を派遣してほしい」と依頼していたものです。
根本さんは、今年春から、広野町の避難指示が解除され、自宅に戻った生活を報告しました。放射能汚染水の問題もあり、料理には水道水を使わず、魚も食べないといいます。「原発すべてを今すぐ廃炉にしたら、電力は大丈夫だろうかとも思うけど、日本は波力や地熱を利用しやすい国。原発に変わる発電を早く確立してほしい」と話しました。
浪江町出身の吉田さんは「放射能汚染とともに、事故後に一度も会えない友達がいたり、不登校になる子がいたり、私たち高校生にはこれが大きな問題です。『放射能で死んだ人はいない』と報道されたりするけれど、同じ思いをする人は二度と出てほしくない」と訴えました。
シンポジウムの後、2人は同朋高校の生徒たちと交流しました。実行委員長の二村優伽さん(2年)が「福島は遠くて、どうしても関心が薄れるところがある。だから直接話を聞きたかった。みんなにも実感を持ってもらえたと思う」と話し、2人に文化祭のファッションショーでつくったリボンを記念に手渡しました。
根本さんは「友達の多くは自宅に戻れないまま。国の復興の進み方はあまりに遅いけど、支援してくれた人たちに感謝したい」と応じ、吉田さんは「家族はバラバラになり、曾祖母は地元に帰れずに亡くなった。放射能は怖いし憎い。でも今日話したことが、みんなが今後を考えるのに役立ったらうれしい」と語りました。(10月2日)